2014年6月18日
昨年12月の治安悪化以降、日本人専門家が南スーダンに入れない状況が続いている。このため6月9日から隣国ケニアのナイロビで、今年2月に引き続き2回目となる「第三国研修」を実施した。同研修には、情報・放送省の幹部と南スーダンテレビ・ラジオ局(SSTVR)の職員あわせて23名が参加。ケニアの公共放送局(KBC)の全面的な協力を得てスタジオなどの放送施設を見学した他、日本人専門家が同行してケニアでのムエア灌漑開発事業や汎アフリカ大学院構想の取り組みをOJTで取材、出来上がった番組はSSTVで放送された。
このうち6月9日から13日まで開催された幹部研修では、元BBCのプロデューサーで途上国の公共放送局のコンサルタントをしているElizabeth氏が講師となり、シエラレオネ、ナミビアなど他のアフリカ諸国で活動してきた経験をもとに、公共放送局化のために何を為すべきかを議論した。南スーダンでは昨年12月に公共放送局法案が国会で可決され、現在大統領の署名待ちとなっているが、今回の研修では公共放送局化に備えるための短期のロードマップをまとめる作業を行った。この中では公共放送局化されたその日から組織を適切に運営できる体制を確立しておく必要があるという認識のもと、そのための作業工程案が作成された。SSTVRでは、今後、総局長直属の作業グループが中心になってこの案を精査し、9月に開かれる日・南スーダン合同調整委員会(注:プロジェクトの最高意思決定機関)までに方針をまとめ、情報・放送大臣に提出される予定だ。
引き続き、6月16日から27日まで行われた現場職員研修では、番組制作、報道それぞれに灌漑開発事業、汎アフリカ大学院構想と違ったテーマでレポートを制作するという実践的なトレーニングが行われた。研修参加者の間からは、政府の情報に依存している現状への不満と、公共放送局化される機会に自主的な取材が出来ない現状を変えたいとの声も出た。公共放送や報道倫理の講義では、研修員の多くが問題意識を持ち、改善への強い意欲と期待を抱いていることが感じられた。現状では、自主取材をする機会が極めて限られているものの、研修員には、自主自律や民主主義を守るという精神など取材者としてあるべき姿への認識は高く、研修意欲は高かった。今回の研修は、公共放送局化を前に幹部や職員の中に生まれている目的意識と改革意識を共有する良い機会となった。今後、研修に参加した一人一人がSSTVR改革の原動力となることを期待したい。
幹部研修参加者 集合写真
職員研修(報道)