第2回アセットマネジメント(AM)セミナー・ワークショップの開催

2019年1月22日

2018年10月に引き続き、神戸市水道局派遣のアセットマネジメント(AM)の専門家として前回活動の課題を踏まえ、アセットマネジメントに関する神戸市の具体的な取り組みを直接伝えるために、国家上下水道公社(NWSDB)の実務者を対象とした第2回のセミナー・ワークショップを2019年1月18日と22日に開催しました。

第2回アセットマネジメントに関するセミナーの開催

2019年1月18日、NWSDBの水道事業運営能力向上を目的とし、管路に係るアセットマネジメントの導入に関する第2回のセミナーを開催しました。

第1回のセミナーでは、「アセットマネジメントとは?」「アセットマネジメント導入の目的は?」「どんな効果があるのか?」といった共通認識の醸成をはかりましたが、具体的な取り組みを進めていくと、「アセットマネジメントのための業務」が通常の業務に加わり、負担感を感じてしまう場合も出てきます。アセットマネジメントは、導入時に一時的に業務が増えると感じる場合もあるものの、業務の効率的な仕組みを作っていくものです。そのため、できるだけ既存の業務フローを活かし、改善しながら、効率的な仕組みづくりをすることが望まれます。

そこで、第1回セミナーで出された意見や疑問、ミーティング時の要望を踏まえ、第2回セミナーの内容を検討してきました。第2回セミナーでは、NWSDBのマネジメント層から実務者を会し日本人専門家チームから、1)神戸市で実施している管路アセットマネジメントに関するPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルや既存の組織にできるだけ手を加えず、業務の流れや情報の流れを円滑にする取り組みと、2)アセットマネジメントに必要な管路情報(マッピングシステム)の構築やデータ項目についての、プレゼンを行いました。
また、NWSDB西部州南部地域サポートセンター(RSC-Western South)からは、2018年10月のワークショップでの「管路の維持管理に関する仕事」=「管路のアセットマネジメントの要素」について、「見える化」された既存の仕事の流れをベースとして、この3ヶ月間に検討してきた、マネジメントサイクルを確立するための課題や改善の方策案が共有されました。

NWSDBと日本人専門家チーム総勢28名で約3時間にわたり活発な議論を行い、1)RSCのトップマネジメント層である部・課長(DGM/AGM)と情報を共有し、年次評価を行うことにより、Western Southでの管路アセットマネジメントの実際の業務を「PDCAサイクル」に反映させていくこと、2)過去の維持管理データ等を用い、管路更新需要の推定や収入に応じた予算配分、更新のための投資計画の提案を行っていくことが重要であるという結論に至りました。
現在、本プロジェクトで作成中のAMガイドライン(案)に、本セミナーの成果を落とし込み、実際の業務と直結するガイドラインとなるよう協働していくことが、本プロジェクトの成功のカギになります。

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セミナー開催状況

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「神戸市アセットマネジメントの実際」についてのプレゼンテーション

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NWSDB RSC-Western Southのマネジメントサイクルを確立するための課題・改善の方策案の共有

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「神戸市管路マッピングシステム」についてのプレゼンテーション

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活発な質疑応答の様子

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活発な質疑応答の様子

第2回アセットマネジメントに関するワークショップの開催

第2回セミナーを開催した翌週の1月22日、NWSDBのカウンターパートをはじめ、管路のアセットマネジメントに関係する部署の実務者を対象としたワークショップを開催しました。

第1回のワークショップにおいて、「管路の基本的なデータである布設年度が不明(”unknown”)な管が多いのが問題だ、どうしていけばいいのか」、「”Attitude”(人や物事に対する考え方・姿勢・態度)に問題がある、意識改革が必要」といった意見・課題が出されていました。今回のワークショップでは、アセットマネジメントをさらに推進していくため、これらの課題に対応するテーマを取り上げ、2つのグループに分かれて、ブレインストーミングにより様々なアイデア出しを行い、参加者全員で共有しました。

一つ目のテーマとして、布設年度が不明のデータをどのように推定していけばいいのかについての議論を行いました。「布設年度不明」とは、管の老朽度が判らない状態であり、どのタイミングで管路を更新することが効率的なのか判断ができません。これは、管路の更新需要が将来的にどのように変化するのかを考える、すなわち将来的にどのくらいの予算を確保していけばいいのかを把握するための基本情報が不足している状態といえます。そのため、何年くらいに布設された管なのかをそれぞれ推定していくことが、将来にわたり管路を適切にマネジメントしていくためには重要となります。

本プロジェクトでは、アセットマネジメントに必要となる運転及び維持管理(O&M)のデータを、パイロット活動等を通じて収集していきますが、収集し拡充するデータベースを活用することにより、O&Mに有用な情報も蓄積できます。現場が収集したデータを計画部門がアセットマネジメントの分析に使用するだけではなく、収集を担う現場スタッフが日常の維持管理にデータベースを活用でき、それが彼らにとっても有用であると実感できれば、データ収集活動を効果的に進めることができます。”Attitude”を変革していくためのステップとして、二つ目のテーマ「O&Mの活動にAMデータベースをどのように活用できるか」についての議論を行いました。

本ワークショップもNWSDBと日本人専門家チーム総勢27名で3時間超となりました。今後、本ワークショップで整理された「布設年度を推定する方法」をもとに、カウンターパート(C/P)が実際のデータベースの空欄を埋めていく作業に取り組んでいく必要があります。これにあわせて、データベースの空欄を埋めていくことで何が実現できるのかをC/Pと日本人専門家で共有することで、地道な作業の先にある、効率的なマネジメントの将来像を共通認識とし、プロジェクト活動を推進していくことがこれからの課題です。

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グループでの議論の様子

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グループでの議論の様子

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グループでの議論の様子

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グループワークの結果発表と共有

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グループワークの結果発表と共有

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グループワークの結果発表と共有

【画像】ワークショップの成果を背景に参加者と記念撮影

次期専門家育成を目指した神戸市職員の随行派遣

本活動では、神戸市水道局職員の次期専門家候補の育成を目指し、アセットマネジメントの実務を担っている20代と30代の2名の若手~中堅職員が随行し、日本人専門家とともに活動を行いました。これまで、海外からの研修生を迎え講義を何度も担当するなど、国内での国際貢献活動には参加していましたが、海外で水道事業にかかわることは初めての体験でした。彼ら2名のコメントもご紹介します。

神戸で実施しているアセットマネジメントやマッピングシステムを紹介するプレゼンテーション資料は、前回の活動内容を確認しながら、渡航前に何度も議論をし、手を加え、英語での発表練習を重ね、本番に臨みました。
質疑のシミュレーションも行っていましたが、やはりその場で質問を聞き、英語で答えるというやりとりには苦戦。どんな質問がでるか、どんなことに興味を持つだろうかと想像し、事前に準備をしたつもりでしたが、想像と違った方向からの質問が出て、とっさに対応できず、専門家チームに助けてもらう場面も。
スリランカと日本、スリランカ人と日本人では、興味を持つ観点や視点が違うことを実感するとともに、こういった実践的なやりとりでしか習得できないものもあり、貴重な経験となりました。
(神戸市水道局 随行派遣者)

今回の随行派遣は約1週間と短く、何かを習得し、自身の変化につなげるには十分な時間ではなかったものの、第一ステップの経験として、次につながる活動ができたのではないかと考えています。
自治体が継続的に国際貢献事業に関っていくためには、技術だけではなく国際感覚を持った職員の育成を図っていく必要があります。ベテラン職員に同行させることで、水道の知識や技術、異文化間のコミュニケーションのコツを学び、実践する場とするなど、次の世代の専門家育成も見据えた活動を行っていきたいと思います。
(神戸市水道局 短期専門家)