2014年1月15日
2014年1月8日、第2回稲作開発フォーラムを開催しました。参加者はメディア関係者を除いて238名で、第1回の155名から80名近く増加しました。招待者数と招待方法に変化はなかったことから、稲作への関心度の高まりが推察されます。
参加者の内訳は、在スーダン日本大使館折笠次席、大竹JICAスーダン事務所次長はじめ、イエメン大使、パキスタン大使等の大使館関係者、FAOスーダン事務所長、国会農業委員長と州議会農業委員長等関係者、ゲジラ州知事、各州農業大臣(ゲジラ州、センナール州、ゲダレフ州、北部州、連邦農業灌漑省や財務省など連邦省庁関係者、農業研究所長、農業再活性化計画事務局、農薬や農業機械・種子生産・販売に携わる民間企業関係者、米輸入業者、ゲジラ大学やセンナール大学等の大学関係者、銀行、ゲジラ州農家、プロジェクト対象6州農業省職員、IFAD、WFP等の国連組織、アラブ連盟関係組織、などでした。
第2回稲作開発フォーラムの様子。
第2回稲作開発フォーラムの様子。
稲作開発フォーラムは、2013年2月17日に第1回を開催しました(第1回「稲作開発フォーラム」(2013年2月17日))。第1回のフォーラムでは、ボトルネックイシュー(Bottleneck Issues)と呼ばれる、今後スーダンで陸稲栽培を進めていくために解決しなければならない課題を官民の関係者間で特定し、共有しました。ボトルネックイシューは大きく分けて8つのカテゴリーがあり、1)研究、2)トレーニング、3)普及、4)栽培(種子、農業機械。灌漑管理、雑草防除)、5)農薬・肥料等農業インプット、6)機械と精米を含む収穫後処理、7)マーケット、8)農業組織、があります。そしてこのボトルネックイシューの解決に向けてワーキンググループを設置することが第1回のフォーラムで提案されました。ワーキンググループは、ゲジラ州のアブダラ農業大臣が全体を管轄し、センナール州のロドワン農業大臣をコーディネーター役として以下のメンバーが委員として選出されています。中山副総括がメンバー間の調整を行いながら、第2回フォーラムまでの間に計6回の会合を開催して、各課題について協議を進めてきました。
氏名 | 所属組織 | 役職 | 担当課題 |
---|---|---|---|
Dr. Rodwan Mohammad Ahmed | センナール州農業省 | 大臣 | コーディネーター |
Eng. Ali Gadoom El Ghali | CTC(Central Trading Company、農業機械と農薬等販売会社) | Agricultural Technologies Transfer Manager | 農業機械 |
Mr. Ahmed Gaafar Ahmed | Medani Branch Manager | 農業インプット | |
Dr. Sara Ahmed Ali | ゲジラ州農業省 | Head of Agrieconomic research and informatics Department | マーケティング |
Dr. Malik Nasr Malik | AAAID(Arab Authority for Agricultural Investment and Development:アラブ農業投資開発財団、アラブ連盟加盟団体) | Soil Expert-Consultant, Projects Department | 種子生産と土壌分析 |
Prof. Ahmed A. Elsiddig | ARC(Agricultural Research corporation:農業研究機構)、連邦農業省 | 国家コメ研究調整官 | 研究 |
Dr. Mohammed Badawi Hussen | Sudan University of Science and Technology | Professor, Department of Agricultural Extension and Rural Development | 普及と農業組織 |
Mr. Mohieldin Ali Mohammed | NRP(National Rice Project:国家コメプロジェクト)、連邦農業省 | 国家コメ調整官 | 栽培と収穫後処理、トレーニング |
また、会合と並行して、陸稲栽培と収穫後処理のさらなる理解促進を目的として、中山副総括が企画したゲジラ州の現場視察を通した勉強会も2回行いました。ゲジラ州のアブダラ農業大臣による後押しの中、後藤稲作栽培専門家、ゲジラ州稲作課長と2名のC/Pがガイド役となり、Umbarona試験圃場、Wad Al Naimデモンストレーション圃場、Goz Aliheadデモンストレーション圃場、Hasahisa精米所などを視察し、意見交換を行いました。
12月29日の第6回ワーキンググループ会合風景。右から、Dr. Rodwan センナール州農業大臣(議長)、中垣総括、Dr. Malik氏、Abdullahゲジラ州農業大臣、後藤専門家、中山副総括、安藤専門家、Ahmed Gaafar氏、Ali Gadoom氏、Prof. Ahmed A. Elsiddig氏、Dr. Mohammed氏。
9月9日の勉強会の様子。Umbarona試験圃場にて、ゲジラ州農業省普及員(右の2人)の説明を聞く、Ali Gadoom氏、Prof. Ahmed氏、Ahmed Gaafar氏とDr. Malik氏。
さて、第2回稲作開発フォーラムでは、これら協議してきた8つのボトルネックイシューの解決に向けて、それぞれのメンバーがプレゼンテーションを行い、考えうる解決策や取り組んでいくべき具体的な方策を提示しました。プレゼンテーションのテーマは以下の通りです。
プレゼンテーションのテーマ | 発表者 |
---|---|
“Purpose of the Forum and working group” | 中垣長睦(プロジェクト総括) |
“Plan of seed multiplication with private sector as a countermeasure against seed multiplication’s issues” | Dr. Malik Nasr Malik |
“Problem Analysis and Countermeasures against machinery’s bottleneck issues” | Eng. Ali Gadoom El Ghali |
“Agrochemicals for high yield and better quality” | Mr. Ahmed Gaafar Ahmed |
“Rice Research plan to tackle bottleneck issues by ARC” | Prof. Ahmed A. Elsiddig |
“Perspective of extension and agricultural organization for future rice production” | Dr. Mohammed Badawi Hussen |
“World rice trade, production and consumption and Sudan’s trend” | Dr. Sara Ahmed Ali |
“General comment on review of current rice production in Sudan and governmental intervention for rice development” | Mr. Mohieldin Ali Mohammed |
8名の発表者たち。左上から上記表の通り。
プレゼンテーションの様子。
プレゼンテーションの後は、参加者からのコメントや質問を時間の許す限り発言してもらい、20名以上の参加者が意見を述べました。また、それらに対して発表者が応答し、議論は白熱しました。
結果として、8つのボトルネックイシューに対して、数多くの具体的な提案や方策が示されました。中でも、研究を担当するARC(連邦農業省下の農業研究機構)がプロジェクトの使用しているNERICA-4を研究対象品種として今年の研究に正式に取り入れることを発表したことや、ボード(board)と呼ばれる稲作専門の組合を組織して稲作の普及やマーケティングを専門的に行うことの提案、普及員・農家への研修の量を増やすのみならず機械操作など新たな項目も取り入れること、種子生産や農薬・肥料のインプットに対しては民間企業をさらに取り込んで行っていくこと、農業機械・収穫後処理に関しては稲作専門のプロトタイプとなるものを導入することなど、重要な決定事項や提案がなされました。また全体的な政策としても、ARCへの予算の割当を増やすことや、農家・研究(ARC)・普及のさらなる連携、アラブリーグとの連携なども方策として示されました。
またその他の特記事項として、プロジェクトと共に陸稲を実際に栽培した農民の3名(ゲジラ州、センナール州、リバーナイル州)が檀上で発表を行い、実際に栽培してみても経験を話すと共に、稲作をさらに発展させていくために、さらなるトレーニングと稲作専門の農業機械の導入を国に訴えました。
このフォーラムの様子はニュースとしてテレビ4局・ラジオ2局に当日に報道し、翌日には新聞5紙がその様子を報じました。
コメントしようと手を挙げる熱心な参加者たち。
コメントする参加者。
返答する発表者たち。
フォーラムの総括をするセンナール州農業大臣(右)とゲジラ州農業大臣。
檀上で発表する農民。
食事として提供されるゲジラ州で収穫されたお米(手前から2番目の白米)。