今年度の成果1活動と連邦農業灌漑省内での活動の継続性

2014年2月20日

今年度の成果1の活動(連邦農業灌漑省内の人材育成・組織強化活動)は、2013年7月9日の記事の通り、「実践から内在化へ(Utilization to Internalization)」をテーマとして掲げて実施しました。具体的には、プロジェクトと同省内のCB(キャパシティ・ビルディング)ワーキンググループが各部局において計15のタスクチームを形成して、それぞれのチームはそれぞれの職場での課題や改善したいことをアクションプランとして計画立案し、それに約半年間かけて取り組みました。各部局におけるタスクチームとCBワーキンググループの毎週のミーティング、そしてCBワーキンググループとプロジェクトの毎月のミーティングを通して、タスクチームの活動をモニタリングしました。必要に応じてプロジェクトが直接タスクチームにアドバイスも行いました。また途中の9月〜10月にかけては、「品質管理」「農業政策策定」「戦略的経営」の専門を有する3名のファシリテーターを雇用し、それぞれのタスクチームへの技術的な側面からのサポートも実施しました。

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品質管理のファシリテーター(右から2人目)が企画したフィールドトリップにて、マンゴーの保存状態を確認するタスクチームメンバーたち。

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戦略的経営のファシリテーター(左側)とアクションプランについて協議するタスクチームのメンバーたち。

12月〜1月にかけて、各タスクチームは活動成果と活動によって得られた教訓・提言を発表しました。アクションプランを計画立案し、日々実践しながら進捗をモニタリングし、最後に評価して次の活動につなげていく、この一連のサイクルをプロジェクト2年目の2011年度から繰り返し実施しました。この実地研修を通して、ただ研修を受講して知識を増やすのみならず、それを現実に活用する実践力を養うことができ、またタスクチームをサポートして共にモニタリングしてきたCBワーキンググループもこの一連のサイクルの実践経験を積むことができました。

こうして4年間の活動を終えたわけですが、最後の課題として、「この活動を、プロジェクト終了後に同省側にどのように引き継いでいくのか」があります。この課題については、昨年度から同省側と継続協議を続けてきました。そしてその結果、プロジェクトとCBワーキンググループの4年間の活動の経験を共有し、各局の局長や主要なシニアスタッフなどと話し合う場が必要であるとの認識に至り、2月10日に成果1総括ワークショップ(Wrap-up Workshop)を開催しました。

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成果1総括ワークショップ開会の様子。右から中垣総括、同省副大臣、国際協力投資局局長。

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成果1ワークショップの様子。

当日は、副大臣、次官、各局の局長や課長などのシニアスタッフ、CBワーキンググループメンバー、各局のタスクチームメンバーやこれまでの研修活動参加者、JICAスーダン事務所など、計108名が参加しました。
セッションを1〜3まで設け、セッション1では、各局のタスクチームの代表が、アクションプラン活動を通じて得た教訓と今後に向けての提言を発表しました。主な教訓・提言は以下の通りです。

  タスクチームからの主たるポイント
教訓
  • 最も重要なことは、学んだ知識や技術を活用することで、本当の意味でそれらを理解すること。
  • アクションプランの活動を通じ、他の部局、外部の組織、民間セクターへ人的ネットワークを広げることができたこと。
  • 私たちの賦与の資源を使えば活動ができるとわかったこと。
  • 少ない予算でも大きな成果を出すことができること。私たちは、さまざまな障害を、自身への信頼、活動へのコミットメント、透明性、チームワークスピリットによって乗り越えたこと。
  • 社会・文化的な活動は、世代間のギャップを埋め、職場での円滑なコミュニケーションを可能にしたこと。
  • 知識や技術を持ったスタッフは、他のスタッフをリードしつつ、業務効率を上げることができること。そして周囲に良いインパクトを与えることができること。
  • タスクチームのメンバーひとりひとりが業務に対するコミットメントを持つこと。
  • DGやシニアスタッフの支援が必要であるということ。
提言
  • さまざまな経験や解決案をもつ立場の違う人々(例えば、農業セクターの研究者、コミュニティ開発ワーカー、大学の教員等)が、それらを共有できる場を整えるべきだ。
  • 連邦農業灌漑省は、州農業省と協力して、もっと現場の活動を行う機会を増やし、現場の状況を理解し、現場からの政策ニーズを理解できるようにしていくべきだ。
  • タスクチーム活動を行ってきた部局は、引き続き同活動を継続するように支援していくべきだ。

タスクチームの発表を受け、参加者全員がキャパシティ・ディベロップメントの有効性と、活動継続の必要性について共通の認識をもちました。その上で、セッション2では、園芸局長が議長となり、現在課題となっている以下の4つの点について、農業省としての対応を協議しました。

  1. 組織体制の改善
  2. 年間計画に沿ったキャパシティ・ディベロップメント活動
  3. 同計画に沿った予算分配
  4. 各局(局長およびシニア)の強いコミットメント

今後の運営組織体制については、局長より研修課の機能強化(局化含め)の検討、CBワーキンググループが引き続き中心的役割を担う等の提案が出されました。
セッション3は、国際協力投資局長が議長となり、それまでの発表内容・議論を総括しました。同局長は、キャパシティ・ディベロップメントという概念は、単に研修の実施のみならず、組織や制度の改善も含んだ大きなものであることを強調し、そのためには、戦略的かつ計画的に活動を積み上げて行くことが重要としました。
最後に次官が全体を総括し、同省としてキャパシティ・ディベロップメント活動にコミットしていくと宣言しました。

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セッション1でプロジェクト4年間の活動を総括するナショナルコンサルタントのDr. Hassan。

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2011年、2013年の技術移転普及局のタスクチームリーダーであったMs. Igbal。セッション1では、同局の他に、園芸局、経済計画局、品質管理課のタスクチームがそれぞれの教訓・提言を発表した。

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セッション2では合計16名が挙手してそれぞれの意見を述べ、今後の課題について議論した。写真右はCBワーキンググループメンバーで技術移転普及局局長のMr. Ibrahim。

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会場全体の様子。前方は閉会の辞を述べる連邦農業灌漑省次官とJICAスーダン事務所塩見企画調査員。

このワークショップと並行して、プロジェクトではCBワーキンググループと協力して、「Capacity Development Guideline/Manual(JICA Model)」を作成し、同省に提出しました。このマニュアルには、これまでプロジェクトがCBワーキンググループと共に実践してきた人材育成・組織強化活動についてまとめたものです。研修実施前のキャパシティ・アセスメントから研修計画の立て方、研修の実施とモニタリング、そしてタスクチームを形成してのアクションプラン活動まで、それぞれの具体的な実施方法を順番に詳しく記載しました。
(同マニュアルは当ウェブサイトの英語版ページにアップロードしてあります。)

最後に、2月10日の総括ワークショップでの議論、そして同省に提出した上記マニュアルを踏まえて、2月17日には、同省次官の指示を受け、研修課の課長から省内の全ての局長宛に、今後のキャパシティ・ディベロップメント活動について、以下の点を骨子としたレターが発出されました。

  • 来年度以降のキャパシティ・ディベロップメントに係る活動は、JICA Capacity Development Guideline/Manualに沿って実施すること。
  • 来年度以降の計画立案に際し、同Guideline/Manualに沿った計画とすることが承認の前提条件であること。
  • 研修課は必要に応じてその計画立案の技術的支援をする準備ができていること。

このように同省では同マニュアルにまとめられている一連の手続き方法の妥当性を認め、今後は同マニュアルに沿って、キャパシティ・ディベロップメント活動の計画・実施を行うこととなりました。研修課の局化など、制度的な課題はまだ残っているものの、プロジェクトの活動成果が同省に正式に認められ、同マニュアルに沿って継続していくこととなり、来年度の研修に向けてのキャパシティ・アセスメントや計画立案が一部の部局ではすでに開始されています。