漫画を使った公平な給水に関する啓発活動

2017年9月6日

ダルフールには40以上の部族がいるとされます。
2003年の紛争ではアラブ系部族とアフリカ系部族が主に対立していました。
しかし、2008年以降はアラブ系部族間の対立が増え、現在でも部族間対立はダルフールにおける主たる紛争の原因となっており、コミュニティにおける部族関係には細心の注意が必要です。

ダルフールは年間9カ月程の乾季が続きます。そのため、井戸の水は住民にとって必要不可欠です。
しかし、部族関係が良好ではないコミュニティでは、弱い立場にある部族やコミュニティに逃れてきた難民・国内避難民が十分に水を確保できなかったり、コミュニティを訪れた遊牧民が井戸ルールを守らないためトラブルが発生したりすることがあります。

プロジェクトではカウンターパートである州水公社や対象コミュニティの代表者に対し、平和な井戸利用に関する研修を実施し、公平な水供給への意識改革を進めています。
加えて、公平な水供給にはコミュニティ住民の理解も必要なため、プロジェクトではコミュニティ住民を対象とした啓発活動を行うこととしました。

でも、どうすればコミュニティ住民の公平な給水に対する理解が広まるでしょう。
どんな手段で伝えれば住民の意識が変化するのでしょうか。
みなさんならどのような方法を考えますか。

プロジェクトでは漫画を使って啓発活動を行うこととしました。
でも、漫画って…スーダンでも人気なの?と思う方もいるかと思います。

実はスーダンでも日本の漫画やアニメがとても人気です。
日本でも人気のあるサッカーアニメや少年探偵のアニメは多くの人が知っています。そのため、日本の漫画が好きで、自分たちの作品を同人誌として発行しているグループもいるほどです。

漫画は少ない文字情報でも、多くのことを伝達できる媒体です。
スーダンの公用語はアラビア語のため、新聞やテレビ、SNSはアラビア文字表記です。
しかし、ダルフールのいくつかの部族は独自の言語を話すため、アラビア語の読み書きが得意ではない人もいます。
そのような人たちに対する啓発活動には、漫画は効果的な伝達手段となります。

漫画のテーマとしては、コミュニティ住民に理解してほしい「公平な水供給」、「適切な井戸の維持管理」、「衛生的な水利用」、「公平な料金徴収」の4つのテーマを設定しました。
このテーマに対して、ストーリーと絵コンテを作成し、これを基に日本の漫画が大好きなスーダン人漫画家に絵を描いてもらいました。
この時プロジェクトが重視したのは主人公の少年の顔です。
主人公とその家族の顔がアラブ系ともアフリカ系ともとれるようにデザインを依頼し、どの部族が漫画を読んでも感情移入しやすくなるように配慮しました。

完成した漫画は州水公社からも好評で、コミュニティの学校や病院などに配布されています。
またこの漫画の完成に合わせ、あるコミュニティでは他コミュニティとの共同スポーツイベントが開催され、公平な水供給についてコミュニティリーダーからも説明があるなど、プロジェクトが作成した漫画は現地でも大好評です!

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公平な給水に関するページ(漫画より)

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公平な水供給への啓発活動にて漫画を手にするコミュニティリーダー(中心人物が持つ冊子が漫画)

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啓発活動で実施したサッカー大会の様子