5S-KAIZEN強化-オンドルマン産科病院のショーケース化-

2018年2月2日

対象病院における5S活動の導入・支援は本プロジェクトの活動の柱の一つです。今回は、10ヶ所の対象病院のうち、すでに5S活動が進展している「オンドルマン産科病院」での取り組みについてご紹介します。

オンドルマン産科病院は、産科ではスーダンでトップクラスの公立病院です。5S活動に関しては、JICAの支援によって2009年に試験的な導入が開始された後、ラボ、中央薬局、倉庫などの部門で活動が進められてきました。中でも、特にラボでは5S活動に対する職員関心が高く、整理整頓が徹底されています。(写真参照)

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オンドルマン病院のラボの一部。ラベリングや小箱を活用した分類が徹底されています。

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ラボの棚の中も機能的に整頓された状態です。

一方、オンドルマン病院の5S関係者たちは、5S活動が一部の部門の取り組みにとどまり、病院全体の活動として広がるまでに至っていないことを懸念しており、活動の活性化を必要としていました。このニーズを受けて、本プロジェクトは、オンドルマン病院の5S活動の推進を支援するとともに、他の病院のモデルとなるよう、「スーダンにおける5Sのショーケース」として育成するための活動に取り組んでいます。

支援活動の第一歩として、2017年5月、オンドルマン産科病院において2日間の「5S-KAIZENオリエンテーションワークショップ」を開催しました。ワークショップの目的は病院内での5S活動に対して意識を高め、他の部門への展開を図るきっかけを作ることです。ワークショップには病院の関係者のほか、保健省の5S担当者など約30名が参加し、院内の5Sの進捗状況を確認した上で、今後必要となる取り組みについて話し合いを行いました。

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オンドルマン病院の5S担当者によるこれまでの活動の紹介。

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2日間のワークショップが終了し、修了証を手にした参加者の皆さん。

ワークショップ開催の翌週から、プロジェクトは院内で5Sの推進を担っている「質管理チーム」の能力強化に着手しました。日本人専門家が質管理チームのメンバーと病院内を巡回し、5Sの定着状況をチェックするとともに、今後5Sの導入が必要な部門を確認し、5Sの普及に向けた取り組みについて話し合いを行いました。

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日本人専門家および質管理チームによる院内の巡回の様子。棚の中まで細かくチェックしています。

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まだ5Sを導入していない統計部門の書庫の一角。問題のある箇所が多く見つかりました。

引き続いて、オンドルマン産科病院の質管理チームは、他部門への5S指導の際の身分証明書となる名札を作成し、他部門を個別に訪問した上で5Sの導入を呼びかけました。まず、新生児室、統計室、救急部ラボ、救急部内薬局がこの呼びかけに応じ、質管理チームによる支援のもとで5S活動に着手しました。これらの部門での5Sの導入にあたって、質管理チームは清掃やゾーニング(床に家具配置の目安としてテープを貼り、区画を明確にする)作業にも率先して取り組み、各部門のスタッフを励ましながら活動を進めていきました。

さらに、質管理チームの活動は、病院内にとどまらず、他の病院への5S経験の共有という段階にも広がっています。2017年8月、質管理チームは、プロジェクトが開催した近隣病院(ウンバダ病院、州立の総合病院)への5S導入ワークショップにおいて自分たちの経験を紹介し、5S活動の先輩としてさまざまな助言を行いました。

質管理チームにとって、他の病院への指導を行ったことは良い経験となり、スーダンでの5S活動のモデルとしての役割を改めて認識することにもつながりました。この結果、質管理チームの活動はさらに活発になり、オンドルマン産科病院では新たに会計部門、歯科、HIV相談室、病棟(産褥室)が5S活動に着手しています。

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質管理チームのメンバーは率先して院内の清掃活動も行いました。

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産科病棟のベッド位置を揃えるためのテーピング作業。

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倉庫の整頓を指導する質管理チームのメンバー(下)。彼女は病院の看護師さんです。

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質管理チームのメンバーは楽しみながら5S活動に取り組んでいます。

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統計室オフィスの棚、5S導入前。

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5S導入後。

質管理チームが楽しみながら作業に取り組んでいる様子は、WhatsApp(スマートフォンのアプリ)を通じて定期的にプロジェクトの専門家に共有され、オンドルマン産科病院での5S活動のモニタリングに役立っています。質管理チームのリーダーであるShahnaさんは、プロジェクトによる支援が始まって以来、病院内での5S活動に対する意識が変わり、チームの「やる気」が高まっていると話しています。彼女は毎週1回、質管理チーム会議を開催し、院内での5S活動の進捗を確認し、活動を推進するためのアイディアを募っています。

プロジェクトでは、今後、5S活動をさらに他の部門へ広げ、病院全体の取り組みとしての機運を盛り上げていくために、質管理チームの活動を引き続き支援していく方針です。