プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)リプロダクティブヘルス強化プロジェクト フェーズ2
(英)Project for Strengthening Reproductive Health Phase II

対象国名

シリア

プロジェクトサイト

アレッポ県マンベジ郡、アル・バーブ郡、イドリブ県ハンシフーン準郡

署名日(実施合意)

2009年10月18日

協力期間

2010年1月23日から2013年1月22日

相手国機関名

(和)保健省ヘルス・ケア局リプロダクティブ・ヘルス課
(英)Ministry of Health, Health Care Directorate, Reproductive Health Department

背景

世界銀行基準における低中所得国に属すシリア国は、この10年間で母子保健を含めた保健医療を取り巻く環境は改善を見せている。その一方で合計特殊出生率は3.04、人口増加率は2005〜2010年で2.5%(UNFPA世界人口白書2008年)と高止まりになっていることに懸念が表明されている。また国内の地域間格差が顕著になってきており、その解消も政府の重要課題となっている。シリア国北部は保健指標が悪く、人口当たりの保健医療施設数や医療従事者数が少ない上、自宅から保健医療施設への距離の長さや交通手段の不足等によって、保健サービスへのアクセスが物理的に難しい状況にある。例えば、妊産婦死亡率はダマスカス県では出生10万対34のところ、北部のアレッポ県およびイドリブ県では62、近代的避妊実行率は首都ダマスカス58.0%に対してアレッポ県49.6%、イドリブ県39.1%となっている。

上記の状況を受けて、リプロダクティブヘルス・ケアに関する国内格差を縮小し、保健センター(HC)において母子保健・リプロダクティブヘルスサービスの利用を増加させることを目的として、「シリア国リプロダクティブヘルス強化プロジェクト」(以下、「フェーズ1」)がアレッポ県マンベジ郡を対象に2007年6月から2009年3月の期間で実施された。フェーズ1では、「HCにおける母子保健/リプロダクティブヘルスサービスの質の向上」と「住民の行動変容促進」を同時に行う手法が用いられ、2008年11月に行われた終了時評価では、対象郡のHCのマネジメントが改善され、リプロダクティブヘルスサービスの利用者も増大しつつあることが確認された。他方、同手法の定着にはなお時間を要するものとの指摘も残された。そこで、フェーズ1の終了を受け、保健省より、同手法の定着と他地域への拡大を目指し、マンベジ郡に加えて北部及び北東部の他県を対象とした本プロジェクトの要請がなされた。

本プロジェクトは、フェーズ1の成果を拡大し、実施の過程から得られた教訓を反映して、マンベジ郡に加え、対象地域をアレッポ県アルバーブ郡およびイドリブ県ハンシフーン準郡にも拡大し、フェーズ1の経験と提言を基に、(1)プライマリヘルスケア(PHC)施設(HC、正常分娩センター、総合クリニック)で提供されるリプロダクティブヘルスサービスの質の向上を図り、PHC施設の利用を促進すること、(2)女性本人や周囲の人々の行動変容を促すアプローチを通じてリプロダクティブヘルスサービスへのアクセスを阻害する要因を減らすこと、(3)対象県・郡のエビデンスに基づく計画策定・実施能力の向上を図ることを目的とする。

具体的には、フェーズ1で使用された手法やツールを応用しつつ、(1)ではPHC施設のマネジメントおよびリプロダクティブヘルスサービスの技術面を強化する一方で、(2)では地域の女性およびその行動に大きな影響力をもつ男性や親戚などを対象に、既存のコミュニティ組織や保健人材を活用して行動変容を促すための啓発活動の実施体制の強化を行なう。また(3)では、保健行政の地方分権化に鑑み、県および郡レベルの計画管理能力の強化を支援することで自立発展性の強化を図る。

上位目標

対象県(アレッポ県・イドリブ県)のリプロダクティブヘルス状況が改善する。

プロジェクト目標

対象郡(アレッポ県マンベジ郡・アルバーブ郡、イドリブ県ハンシフーン郡)のPHC施設における質の高いリプロダクティブヘルスサービスの利用が増加する。

成果

(1)PHC施設で提供されるリプロダクティブヘルスサービスの質が改善する

(2)女性のリプロダクティブヘルスサービスへのアクセスを阻害する要因がBCC(注1)によって減少する

(3)対象県および郡の計画立案やモニタリング・評価に関する管理運営能力が向上する

(注1)BCC:Behavior Change Communication,行動変容のためのコミュニケーション。健康教育や広報コミュニケーション等、人々の行動変容を促すための活動を指す

活動

1-1.
対象県および郡の保健行政官は、リプロダクティブヘルスサービスの提供に関し、マネジメント(含「HCと正常分娩センターの連携」)および医療技術面から見たサービスや施設の機能、スタッフの研修ニーズに対するアセスメントを実施し、現状を把握する
1-2.
対象県および郡の保健行政官は、医療従事者の研修を、ニーズに応じて計画・実施する
1-3.
対象県および郡の保健行政官は、HC長のマネジメント研修を、マンベジ郡のリソースを活用して行う
1-4.
対象県および郡の保健行政官は、PHC施設に対するサポーティブ・スーパービジョンのシステムを確立し、スーパービジョンを実施する
1-5.
対象県および郡の保健行政官は、シリア国の「産前産後健診ガイドライン」(改訂版が2010年初頭より導入される予定)をPHC施設の現状に照らして確認し、PHC施設での導入に向けた計画を策定する。
1-6.
イドリブ県保健局およびハンシフーン準郡の保健行政官は、HCと正常分娩センターの連携強化をアセスメントの結果に照らして計画・実施する (イドリブ県)
2-1.
アレッポ県保健局およびマンベジ郡保健事務所の保健行政官は、フェーズ1で導入した地域保健ボランティアを使ったコミュニティ保健教育活動の現状を分析する(マンベジ郡)
2-2.
対象県および郡の保健行政官は、コミュニティ保健教育活動のためのリソースを確認し、各地域の現状にあった手法・アプローチを選択して保健教育システムを設計する
2-3.
対象県および郡の保健行政官は、現状分析・その他の調査結果に基づいてターゲット別(男性、女性、夫の母親、若者など)にIEC/BCC計画を策定する
2-4.
IEC/BCC計画に沿った教材を(追加)作成する
2-5.
IEC/BCC計画を実施する
3-1.
アレッポ県保健局およびマンベジ郡の保健行政官、郡内のPHC施設スタッフは、対象県・郡の参加を得てマンベジでオリエンテーション・ワークショップを開催する(ラッカ県マダーン準郡の保健行政官も参加対象に含む)
3-2.
対象県および郡の保健行政官は、必要なデータを収集・分析する(ベースライン、エンドライン、PHC施設現状調査、女性のリプロダクティブヘルスサービスへのアクセスを阻害する要因分析調査 等)
3-3.
対象県および郡の保健行政官を対象に、既存のMIS(マネージメント・インフォメーション・システム)で収集されたデータの分析・活用に係る研修(含OJT)を実施する(ラッカ県マダーン準郡の保健行政官も参加対象に含む)
3-4.
対象県および郡の保健行政官は、収集・分析した情報を基に郡レベルの行動計画を策定する
3-5.
対象県および郡の保健行政官、郡内のPHC施設スタッフは、対象県・郡で情報交換を目的としたプロジェクトレビュー会議を開催する
3-6.
対象県および郡の保健行政官は、シリア全14県対象の終了時セミナーを開催する

投入

日本側投入

(1)人材の投入

  • 専門家チーム(保健行政、IEC/BCC、助産ケア、医療機材、社会調査など)

(2)資機材

  • PHC施設が機能するために必要な機材(詳細は施設アセスメントを経て決定)
  • プロジェクトオフィスに必要な機材
  • IEC/BCC用機材
  • モニタリングのための車両

(3)必要経費

  • 研修・ワークショップ経費
  • 教材作成費
  • 現地スタッフ傭上費

相手国側投入

(1)人材の投入

カウンターパート
  • 保健省ヘルスケア局長およびリプロダクティブヘルス課長
  • 対象県保健局ヘルスケア部長およびリプロダクティブヘルス課長
  • 対象郡保健事務所長
その他の人材
  • 対象郡PHC施設における医療従事者
  • 対象郡保健教育従事者

(2)資機材

  • PHC施設の通常運営のための医薬品・消耗品

(3)施設

  • 対象県プロジェクト事務所および基本設備

(4)必要経費

  • プロジェクトオフィス維持管理費(電気、水道、電話など)
  • PHC施設と機材の維持管理費
  • 必要に応じたPHC施設の改修
  • スーパービジョンに関する直接経費
  • 車両配置に関する経費(燃料、保守メンテナンス等)