No.4:コンドア県でコミュニティ・ファシリテータ研修を実施しました

2015年9月4日

研修の背景

2015年6月29日から7月9日にかけて、ドドマ州コンドア県において、コミュニティ・ファシリテータ研修を行いました。
コンドア県における当プロジェクトのパイロット村は、ムネニア郡ムネニア村とキコレ郡ムクルムジ村の2村です。コンドア県が「改訂O&OD(注1)」を導入したのは2014年1月。これまでは、プロジェクトを通じて研修を受けた郡ファシリテータ(注2)たちが、村のリーダーたちや住民たちの意識や組織の変化を促すためのコミュニティ・ファシリテーションを行ってきました。これからは、郡ファシリテータの力を借りながらも、住民たち自身が自ら意識変化や組織強化のためにコミュニティに働きかけられるようになることを目指します。その第一歩として、各集落あたり4名(男女2名ずつ)、コミュニティの開発に関心のある住民たちが、コミュニティ・ファシリテータ候補として選ばれました。彼らがコミュニティ・ファシリテーションを初めて経験するきっかけとして、「ドラマ・ファシリテーション」を利用したコミュニティ・ファシリテータ研修を実施しました。

ドラマ・ファシリテーションの活用

「ドラマ・ファシリテーション」の「ドラマ」は、日本語で言う寸劇あるいは演劇を指します。タンザニアでは独立当初から、国の政策をコミュニティの末端まで浸透させるために演劇が用いられていたそうです。今日でも、タンザニア政府や国内外の開発機関、NGOなどが、例えば「HIV/AIDS」などの特定のテーマに関わる知識を普及したり、意識の変化を促すための啓蒙活動などで寸劇が活用されています。
今回の研修の「ドラマ・ファシリテーション」の目的は、単なる啓蒙ではありません。寸劇の演者となるコミュニティ・ファシリテータたちは、住民たちとの対話のなかで見つけたコミュニティが抱える問題を、寸劇の題材として選びます。住民たちとの対話を参考に、コミュニティ・ファシリテータと村のリーダーたちが一緒に、住民たちとその問題との関係性をどのように表現していくか議論をし、寸劇のシナリオを組み立てていきます。また、その際には、自分たちの寸劇を住民たちが見たあとに、問題について考えを巡らせ、その解決に向けた住民間の議論が促進されるように、シナリオの展開やセリフ、演技に工夫をこらしました。このシナリオづくりのプロセスを通じて、コミュニティ・ファシリテータたちは、村の住民たちと日常の会話のなかで自分たちの開発について話してみること、「問題発見」を意識しながらコミュニケーションをとること、コミュニティが抱える問題について、村のリーダーたちと議論をし、問題解決について考えることなど、今後、コミュニティ・ファシリテータとして求められる活動を経験したのです。

(注1)プロジェクト概要をご覧ください。
(注2)郡ファシリテータ研修の内容については、プロジェクトニュース No.2をご覧ください。

研修の流れ

研修1日目

【写真】「ドラマ・ファシリテーション」とは何か、「コミュニティ・ファシリテータ」とはどのような役割なのか、ディスカッションを中心に学びます。
写真の中央は、今回、ムクルムジ村でコミュニティ・ファシリテータとして選ばれた女性。

研修2日目

【写真】今、自分たちの村で真に改善が求められている問題とは何かを探るため、集落のなかに入って実際に村人たちと話をしてみます。村人たちの本音を聞き出すため、家々を訪ねて、作業のお手伝いをしたりしながらなるべく雑談に近いかたちで話をしました。
写真は、ムクルムジ村での様子。ここでは村人のほとんどがイスラム教のため、ラマダン(注3)真っ最中。この家のママたちは、タンザニアのソウルフード、マハラゲの処理をしていました。「フタリ」というラマダン時の日没後の食事の準備です。一日中飲み食いしなかった体をいたわるために、砂糖でやさしい味付けをするそうです。コミュニティ・ファシリテータは、主婦のみなさんと一緒に作業をしながら話をしました。

(注3)ラマダンの月、イスラム教徒は29日から30日間、日が出ている間飲み食いを自粛します。タンザニアのラマダンは今年、6月18日に始まり、7月18日に明けました。

研修3日目

【写真】2日目の集落での情報をもとに、ドラマのシナリオをみんなで考えていきます。ムネニア村では、「保健」(コミュニティ保健基金)、「水不足」、「食料不足」がテーマとして選ばれました。シナリオとそれぞれのシーンの演者が決まったら、練習と発表・コメントを繰り返し、みんなでセリフ回しや演技を良くしていきました。

【写真】毎日、研修の最後に、写真のような表をつかって参加者全員がその日の自己評価を行いました。そして次の日、どうして参加者が絵のような気持ちになったのか、みんなで振り返りをしながら話し合いました。

研修4日目

【画像】

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朝、最後の練習をしていると、知らせを聞いた村人たちが村役場の外に続々と集まってきます。いよいよ練習の成果を発揮する瞬間です。もともとドラマや寸劇が大好きなタンザニアの人々。コミュニティ・ファシリテータたちの演技に対し、爆笑の渦が巻き起こる場面が多々見られました。見ていた村人たちにとっても、ドラマで表現された問題は強く共感できるものだったようです。

今後、コミュニティ・ファシリテータたちが今回の経験をどのように活かしていくかは、郡ファシリテータたち、村のリーダーたち、そして彼ら自身の工夫次第です。どのようなコミュニティ・ファシリテーションが展開されていくのか、村の今後が楽しみです。