No.6:キリマンジャロ州でコミュニティ計画策定プロセスを実施しました

2015年9月8日

2015年8月24日から28日にかけて、キリマンジャロ州ハイ県、シーハ県およびサメ県のパイロット村6村にてコミュニティ計画策定プロセスを実施しました。

1.背景

ハイ県、シーハ県、サメ県の3県は、プロジェクトの協力のもと、本年3月から6月にかけて自治体職員を対象としたファシリテータ研修(導入編)を実施し、「改訂O&OD」の取り組みを開始させました。研修後、参加者は、郡ファシリテータとして村のリーダーたちと共同でベースライン調査と、その結果の村集会での発表を行い、また、村のリーダーたちに対する研修を行うなど、パイロット村の住民の意識化に取り組んできました。
8月18日から20日にかけての3日間、自治体職員に対する研修の第2弾として、コミュニティ計画策定プロセスに特化した研修を実施しました。この研修の成果を踏まえ、その翌週、3県の郡ファシリテータと自治体タスクフォースメンバーは、それぞれのパイロット村においてコミュニティ計画策定プロセスを5日間実施しました。
プロジェクトが前フェーズに作成した計画策定のガイドラインに基づいて、郡ファシリテータたちのファシリテーションのもと、村のリーダーたちが5日間かけてコミュニティ開発計画を策定します。このプロセスを経験することによって、村の中の問題発見・問題解決に向けた調整メカニズムを強化することを目指しています。

2.5日間のコミュニティ計画策定

1日目

初日は、郡ファシリテータたちが中心となって、コミュニティ開発策定の目的や意義について、コミュニティ開発策定の主役である村のリーダーたちに説明しました。
セブンスデーアドベンティスト派(注1)が多いルグル村では、コミュニティ計画策定プロセスの日取りがちょうどお祈り週間と重なってしまいました。計画策定1日目に村のリーダーたちと自治体職員が話し合った結果、計画策定のセッションの開始時間を、当初の9時の予定から7時に早めることに決めました。参加者たちは、毎朝7時に集まり、約2時間計画策定を実施した後、10時から教会に集まり、夕方までみんなでお祈りをするというスケジュールを5日間こなしたのです。このようなハードスケジュールがきちんとこなせるのかと当初は自治体職員も心配していましたが、ルグル村の参加者の集中力と積極性は素晴らしく、心配は杞憂に終わりました。

(注1)スワヒリ語で「Sabato」と呼ばれるキリスト教の教派。

【画像】

自治体職員の説明に聞き入る参加者たち(サメ県ルグル郡ルグル村)

2日目

2日目も、村のリーダーたちに対するオリエンテーションが続きます。
コミュニティ開発策定プロセスの6つのステップと実際の手順の説明のあと、村から開発計画が県に提出されたあとのコミュニティに対する県の支援のあり方についての説明が行われました。

【画像】

県庁職員である自治体タスクフォースメンバーによる説明(シーハ県ガララグア郡ウィリ村)

3日目

この日は、ベースライン調査の結果を改めてみんなで議論をしながら振り返り、村の現状についての共通認識を構築しました。具体的には、ベースライン調査にて抽出された村の問題やニーズ、そしてこれらに対して村として講じてきた対処方法がどの程度効果的であったのかなどについて話し合いました。また、村の中に存在する住民組織やグループの実績や現状についての情報をアップデートすることで、自分たちの村の問題解決の経験と能力を把握しました。

【画像】

郡ファシリテータたちのファシリテーションのもと、表を使って村議会と村の中に存在する組織の最新情報を整理(シーハ県キルワ郡フカ村)

4日目

4日目は、村が抱える開発に関する諸問題について、グループディスカッションを中心に分析しました。参加者たちは、「生産活動」、「社会的サービス」、「ガバナンス」の分野ごとに3つのグループに分かれ、それぞれの分野においてどのような問題が村に存在するか、そして問題解決を促進するような要因(「機会」)、問題解決を阻害するような要因(「障壁」)にはどのようなものがあるか議論しました。
ルグル村の「生産活動」グループは、灌漑施設がぜい弱であることを問題として取り上げました。「機会」としては、川や土地があること、労働力になりうる人の存在などが挙げられ、「障壁」としては、村の中に専門知識を持っている人がいないことなどが挙げられました。

【画像】

グループディスカッション(サメ県ルグル郡ルグル村)

5日目

最終日は、5日間の議論の集大成をひとつの表に整理し、コミュニティ開発計画のドラフトを仕上げます。具体的には、4日目に特定した開発問題それぞれについて、短期的目標、目標達成のための方策、そのために必要な資源、実施の主体となるべき組織、実施スケジュール、実施にあたっての留意事項を議論し、これまでに村で行われてきたコミュニティ・イニシアチブ(注2)の実績を振り返りました。すべての開発問題についての議論を終えた後、問題の優先順位について合意形成を行いました。
最後に、コミュニティ開発計画の最終化に向けた今後のスケジュールをたてて、5日間の計画策定セッションは幕を閉じました。

(注2)地域住民による開発への主体的な取り組み

【画像】

村のリーダーが、各開発問題についてグループで話し合った結果を発表(サメ県ルヴ郡ムフェレジニ村)

ムフェレジニ村の「社会的サービス」グループは、「教育」(教室の増設)と「保健」(診療所の建設)を開発問題として取り上げました。議論の結果、多数決にて優先順位第一位が診療所の建設、第二位が村役場の建設、第三位が灌漑の整備、第四位が教室の増設となりました。

3.コミュニティ計画策定プロセスの今後

5日間のセッションを通じて村のリーダーたちが策定したのは、あくまでもコミュニティ開発計画のドラフトです。今後、リーダーたちはこのドラフトを各集落に持ち帰り、住民のコメントを集めたうえで、郡の開発委員会にも技術的アドバイスを求めます。これらのインプットを反映した改訂版のドラフトを、村の集会で承認した時点でコミュニティ開発計画はようやく最終化されるのです。
コミュニティ開発計画が最終化されたあと、どのように県の予算に反映し、県としてどのようにサポートしていくのかは、自治体タスクフォースメンバーの努力と創意工夫にかかっています。また、コミュニティ開発計画を村として自分たちで進めていけるかどうかは、郡ファシリテータたちのコミュニティ・ファシリテーションの腕、そして村のリーダーたちのリーダーシップにかかっています。これらのキーアクターたちが一丸となって取り組んだ今回のコミュニティ計画策定プロセス。この5日間の共同作業の経験が、キリマンジャロのパイロット6村でどのようなシナジーを生み出すのか、今後の動きが楽しみです。