プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)メコン地域人身取引被害者支援能力向上プロジェクト
(英)Project on Capacity Development on Assisting Victims of Trafficking in the Greater Mekong Sub-regional Countries

対象国名

タイ

署名日(実施合意)

2015年1月9日

プロジェクトサイト

タイ及びメコン地域諸国(GMS)

協力期間

2015年4月2日〜2019年4月1日

相手国機関名

(和)社会開発人間安全保障省次官室人身取引対策部
(英)Department of Anti-Trafficking in Persons, Office of the Permanent Secretary, Ministry of Social Development and Human Security

背景

(1)メコン地域における人身取引対策分野の現状と課題

経済や情報の急速なグローバル化に伴い人々の移動が活発化する中で、人身取引は国境を越えた各国共通の深刻な問題となっている。

メコン地域(タイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムおよび中国南部)における人身取引の流れには、域外へのもの、中国南部へのもの等があるが、特にタイは、経済発展に伴い、建設業、水産業、水産加工業、性産業を含め安価な労働力への膨大な需要があり、これらを背景として、地域内の人身取引被害者(Victims of Trafficking:VOT)の到達国となっている。また、カンボジア、ミャンマー等の被害者送出国においては、貧困や民族問題、政治やガバナンスの問題、さらに災害等が、プッシュ要因となっている。さらにタイはタイおよびメコン地域の各国から中東や日本等への被害者の送出国・経由国ともなっている。

今後2015年のアセアン経済共同体の発足により、当該地域における経済的な連携が進展し、人の移動が活発化するなかで、人身取引被害者が増加すると考えられ、人身取引対策を強化していくことが課題である。

(2)メコン地域における人身取引対策分野の政策と本事業の位置づけ

メコン地域6か国は、人身取引対策について、国境を超える課題に協力して取組むことを目的として、2004年、地域内の協力枠組としてCoordinated Mekong Ministerial Initiative Against Trafficking(COMMIT)を形成し、覚書において、パレルモ議定書1の人身取引の定義の促進、そのための適切な法律の制定と執行、国境間協力の強化等を規定している。

このような中、タイは、2008年に人身取引対策法を制定し、首相を委員長として、人身取引対策に関わる省庁の大臣で構成される委員会を設置し、人身取引対策に注力している。JICAは、タイにおける被害者保護の組織、能力強化とメコン地域ワークショップを通じた被害者保護に関する知識・経験の周辺国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム(Cambodia, Laos, Myanmar, Vietnam:CLMV))との共有を目的として、2009年から2014年まで「タイ国人身取引被害者保護・自立支援プロジェクト」(以下、先行プロジェクト)を実施している。

本プロジェクトは、上記先行プロジェクトの成果(被害者保護にかかる関係者の能力強化とメコン地域ワークショップを通じたその周辺国との共有)と課題(タイ人被害者の社会復帰支援(保護のうち、対応が不十分な課題)、周辺国関係者の能力強化)を受け、以下を目的として実施する。

・タイ国内で被害者の社会復帰支援に取り組む関係諸機関の能力強化
・タイ国内で被害者の帰国/帰還支援に取り組む関係諸機関の連携強化
・周辺国における被害者の帰国/帰還と社会復帰に関わる支援体制の強化

このうち、周辺国における関係者の能力強化については、先行プロジェクトに引き続き、メコン地域ワークショップ、国境地域での活動、周辺国関係者の視察の受け入れ等を通じて実施することになる。一方、現在、ミャンマー「人身取引被害者自立支援のための能力向上プロジェクト」、ベトナム「人身取引対策ホットラインにかかる体制整備プロジェクト」(いずれも2012〜2015)を実施中であり、これらの各国におけるプロジェクトと本プロジェクトによる広域的な取組を組み合わせ、効率的な事業展開を目指す(7.過去の類似案件の教訓と本事業への活用 参照)。また、ラオス、カンボジアについては、今後、バイの協力あるいは他ドナーとの連携等により、本プロジェクトによる広域的な協力の受け皿となる機能をおくことを含め、協力の成果が各国に根付くための支援の在り方を検討する。

本プロジェクトは人身取引対策のうち、被害者の「保護」の分野を扱うものであるが、被害者の保護は、政策、訴追、予防とともに、人身取引対策の一環であるとともに、VOT支援としての訴追やVOTが再度被害者になることの予防の側面も含むものである。また、VOTの保護は、VOTを社会から追いやることなく、人身取引問題に対する社会の理解を改善し、この問題への社会の対処能力を固めるという点でも重要である。

(3)人身取引対策分野に対する我が国及びJICAの援助方針と実績

日本政府は2000年にパレルモ議定書に署名2し、2004年に「人身取引に関する関係省庁会議」を設置、「人身取引対策行動計画」を策定3し、人身取引に対する取り組みを行っている。日本とメコン諸国との関連では、2006年に日本とタイの間で、人身取引の防止・法執行・被害者保護の3分野で協力を行うため、人身取引対策に関する日タイ共同タスクフォースを立ち上げている。

外務省は対タイ王国・国別援助方針で、「戦略的パートナーシップに基づく日本とタイ双方の利益増進と地域発展への貢献の推進」を大目標に掲げ、中目標として「ASEAN地域共通課題への対応」を挙げている。人身取引は、ASEAN共同体実現に起因する労働移動の活発化に伴い今後増加する可能性が高い。JICAは、人身取引被害者の保護にかかる取り組みを強化することを通じて、このようなASEAN連結性の負の側面に対応し、経済発展に伴う社会構造の変化の中で、人間が尊厳を保ちつつ安全に生活できる社会を構築するための支援を行う。

(4)他の援助機関の対応

メコン地域における人身取引対策分野では、アメリカ、オーストラリア、北欧、国連機関が政府への支援、NGOを通じた支援を行っている。中でもオーストラリアは、タイを含むASEAN諸国7か国において、警察、検察、裁判官などを対象に人身取引加害者の取締強化を図るプロジェクトを実施している。JICAの協力は、VOT保護を中心としているが、政策、訴追、予防分野との連携は必須であり、これらドナーとの情報・知見の共有や補完的な支援を行っていく。また、NGOとは、パヤオ県及び国境での活動の際にAlliance Anti Trafic, YMCA, World Visionと協働する予定である。