プロジェクト概要

プロジェクト名

効果的な結核対策のためのヒトと病原菌のゲノム情報の統合的活用プロジェクト

プロジェクト概要資料

対象国名

タイ

署名日(実施合意)

2015年2月9日

プロジェクトサイト

保健省医科学局医学生命科学研究所、マヒドン大学、チェンライ県

協力期間

2015年4月1日から2019年3月31日

相手国機関名

保健省医科学局医学生命科学研究所
(Medical Life Science Center,Department of Medical Science,Ministry of Public Health)

背景

(1)当該国における保健医療セクター、特に結核の現状と課題
近年、タイ王国は目覚ましい経済的・社会的発展を遂げており、保健セクターにおいては保健省により基本的な保健医療サービスが全国で提供されている。しかしながら、疾病対策の一部には十分な取り組みに至っておらず、結核についてはHIV/エイズとの重複感染や多剤耐性の増加等により、毎年6万人以上の新規患者が報告されるとともに、2013年の結核有病率は人口10万人当たり149を記録し、WHOの高蔓延国22ヶ国の1つに指定されている。サービスの課題は診断及び治療技術能力にあり、治療成功率は目標の85%には届いておらず、特に多剤耐性結核に対する成功率は低い。また、地域的には同国北部のミャンマー・ラオスとの国境周辺地域等において有病率が高い傾向が認められるなど、都市と地方のサービスの格差も懸念される状況にある。

(2)当該国における保健セクターの開発政策と本事業の位置づけ
タイ王国の「第11次国家経済社会開発計画2012-2016」では、すべての国民がより良い健康を享受できる環境づくりを掲げており、質の高い保健システムへのアクセスの確保や疾病のリスクファクター軽減が目標となっている。しかし、現状では保健医療資源や医療サービスの分配に地域格差があることも指摘されており、結核対策も例外ではない。特に結核対策では地方病院における診断技術の強化や症例管理の確立が望まれており、係る状況から、保健省とマヒドン大学は診断技術の精度を向上させるべく、従来の微生物検査を補うものとしてゲノム解析を活用した検査技術について共同研究を実施しており、今般我が国の研究機関との技術協力を要請してきた。

目標

上位目標

ヒトと病原菌のゲノム情報の統合的活用により開発された結核診断法及びリスク予測システムによってタイ国の結核対策に貢献する。

プロジェクト目標

ヒト及び病原菌ゲノム情報の統合的活用により、結核ハイリスクグループが同定され、抗結核薬開発の基礎情報が収集されるとともに、日タイの研究機関における研究開発能力が相互に向上する。

成果

1.ヒトゲノム解析によって結核症発症リスク遺伝子が同定される。
2.ヒト型結核菌全ゲノム解析によってヒト型結核菌型分類法が確立される。
3.ヒトと病原菌ゲノム情報の統合的活用によってヒトと病原菌のゲノム変異の相互作用が研究される。
4.ヒトとヒト型結核菌群のゲノム解析に基づいて抗結核薬による有効性・副作用予測システムが開発される。

活動

1.ヒトゲノム解析によって結核症発症リスク遺伝子が同定される。

1-1.タイ保健省医科学局との共同により収集されている検体数を増加させる。
1-2.国際結核ゲノムコンソーシアムとの共同メタ解析、結核症家系及び症例対照サンプルの解析、統計的手法の活用により、ヒト結核症発症リスク遺伝子を同定する。
1-3.結核症家系サンプルに対して、次世代シークエンスを行い、遺伝疫学的方法によりヒト結核症発症リスク遺伝子を同定する。
1-4.結核症発症リスク遺伝子の機能を解析し、ヒト結核症リスクの機構を検討する。
1-5.活動性結核症患者血液サンプルに対し、結核症発症患者特異的な遺伝子発現を検出する。
1-6.得られた科学的知見の報告を行う(学会発表、論文、知財等)。

2.ヒト型結核菌全ゲノム解析によってヒト型結核菌型分類法が確立される。

2-1.ヒト型結核菌の型特異的な多型を同定するため、次世代シークエンス(NGS)とヒト型結核菌群の系統樹解析を行う。
2-2.結核菌のゲノム情報と結核治療の予後不良との相関解析により病原性関連多型を同定する。
2-3.薬剤耐性関連の多型を同定するために、ヒト型結核菌群の抗結核症の薬剤耐性に関するゲノム配列を解析する。
2-4.ヒト型結核菌群の表現型に影響する遺伝子多型を同定する。
2-5.全ゲノム配列に基づき結核菌型と薬剤抵抗性を型別するシステムを構築する。
2-6.開発できた技術の報告を行う(学会発表、論文、知財等)。

3.ヒトと病原菌ゲノム情報の統合的活用によってヒトと病原菌のゲノム変異の相互作用が研究される。

3-1.結核菌型別のヒトゲノム多型の関連解析を行い、ヒトの発症リスク遺伝子を同定する。
3-2.ヒトと病原菌のゲノム変異の統合的効果を解析する。
3-3.開発できた技術の報告を行う(学会発表、論文、知財等)。

4.ヒトとヒト型結核菌群のゲノム解析に基づいて抗結核薬による有効性・副作用予測システムが開発される。

4-1.抗結核薬の血中薬物濃度モニタリング(TDM) 技術を医科学局に技術移転する。
4-2.TDMとゲノムワイド関連解析(GWAS)により、抗結核薬に関連する遺伝子バイオマーカーを同定する。
4-3.TDMとGWASにより、薬物性肝障害等の抗結核薬副作用に関連する遺伝子バイオマーカーを同定する。
4-4.同定したヒトゲノム情報に基づく抗結核薬の有効性と副作用の予測により、抗結核薬の選定と投与量調節についての個別化のアプローチを確立する。
4-5.開発できた技術の報告を行う(学会発表、論文、知財等)。

投入

日本側投入

1.チーフアドバイザー(短期専門家)
2.業務調整(長期専門家)
3.ゲノム解析とゲノム薬理学の専門家(短期/長期専門家)
4.本邦研修(ゲノム解析、ゲノム薬理学及び結核)
5.機材供与(次世代シークエンサー、デジタルポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction: PCR)装置、核酸自動抽出用機器他)

タイ側投入

1.研究者及びスタッフ
2.対象フィールドでのスタッフ
3.DMSc内でのプロジェクトオフィスとラボスペース
4.DMSc及びマヒドン大学での既存基礎分子生物学ラボ機材
5.プロジェクトに関連するデータ、情報及び標本
6.研究活動のための運営費用

業務実施体制

<日本側>
代表:東京大学大学院医学系研究科
協力研究機関:理化学研究所、結核予防会/結核研究所・複十字病院

<タイ側>
代表:保健省医科学局(DMSc)
協力研究機関:マヒドン大学、保健省チェンライ病院、国家結核対策プログラム(NTP)、胸部疾患研究所(CDI)