スタートアップドリルの開催

2017年1月19日

2017年1月17日〜19日

2017年1月17日から20日、タイ・バンコクおよびノンタブリにおいて、ASEAN加盟各国政府及び日本の災害医療関係者、医療チーム、ASEAN事務局、ASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)、タイ政府関係機関、世界保健機関(WHO)タイ事務所、JICA、日本の災害医療分野の経験・知見を持つメンバーで構成される国内支援委員会、プロジェクトチームの約120名が一堂に会し、本プロジェクトで初となる災害医療における連携ドリル(スタートアップドリル)が行われました。

スタートアップドリルの目的は以下の4つです。
(1)国外派遣を経験したことがないチームを含めたASEAN各国の医療チームが、ロールプレイ形式のドリルを通じて、国外派遣および被災地での多国間調整(連携)に係る共通の経験・理解を得ると共にそこから課題となった点を抽出する。
(2)各国が既存の国際及び地域の国際調整枠組み・ツールについて理解する。
(3)上記(1)で抽出した課題を、プロジェクト・ワーキング・グループ1(PWG1)および2(PWG2)にフィードバックする。
(4)各国の人的ネットワークの構築を図る。

スタートアップドリルは、初日:机上演習、2日目:野外演習、3日目:課題抽出ワークショップ、という3日間のプログラムで、初日と2日目の演習は、タイ国で大規模な洪水が発生し、タイ政府がAHAセンターを通じてASEAN加盟各国と日本に医療チームの派遣を要請した、という仮想シナリオに基づいて行われました。

初日の机上演習では、各国は各テーブルに分かれ、ASEANの防災セクターで用いられている、域内の災害時の支援要請及び派遣に関する既存の手順書である「地域待機制度及び共同災害救援・緊急対応活動のための標準手順書(Standard Operating Procedure for Regional Standby Arrangements and Coordination of Joint Disaster Relief and Emergency Response Operations:SASOP)」に基づき、タイ国の災害管理局やAHAセンターと連絡・調整を行い、派遣要請を受けてからタイ国に入国するところまでのロールプレイが行われました。

2日目の野外演習では、各国医療チームがタイに入国しタイ政府から指示された活動現場に到着したところからスタートしました。参加チームは2カ国1組のチームになり、4つの「ステーション」と呼ばれる演習現場を回りながら、各ステーションで課せられたシナリオを体験しました。

ここで、各ステーションがどのようなものだったのか、ご説明したいと思います。

ステーション1では、被災国で立ち上げられた緊急医療チームの調整センター(仮訳、The Emergency Medical Team Coordination Cell:EMTCC)の活動の一部(情報分析や方針に関する協議・決定)を体験しました。

ステーション2では、被災した村に被害状況や被災者の健康状態を調査しに行くという設定で、医療チームメンバーたちは、村の様子を観察したり、村人へのインタビューを行って、情報収集を行いました。

ステーション3とステーション4は、いずれも、野外病院での模擬診療です。この2つの野外病院、何が異なるかというと、WHOが定めている国際医療チームの基準に基づき、外来診療のみを行う「タイプ1」医療チームと、外来診療に加え手術・入院も行う能力を有する「タイプ2」医療チーム、に分かれています。そして、これら2種類に分類された医療チームは当然その診療活動のレベルや内容がそれぞれ異なりますので、各国チームは、2つのステーションでの模擬診療を通じ、WHOが定める医療チームの国際基準と、その基準に準じた国際医療チームの標準的な診療活動を体験しました。なお、「タイプ2」医療チームの模擬診療活動では、各国チームは、2016年6月に実際にWHOより「タイプ2」として国際認証を受けた我が国の国際緊急援助隊(JDR)医療チームと協力して活動を行い、より重症度の高い患者の診療に当たるなどしました。

3日目の課題抽出ワークショップでは、各国が国毎に分かれて、初日の机上演習と2日目の野外演習から経験した課題を話しあい、結果をまとめ、発表しました。これらの意見は、今後PWG1とPWG2の中で議論され、対応に向けたアプローチがとられることになります。また、各国からは、効果的な地域連携の実現に向けて、こうした合同演習の実施が重要であるとの意見が多く聞かれました。

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スタートアップドリル初日の全体写真

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机上演習の様子

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2日目実地演習の全体写真

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EMTCCで説明を受ける参加者

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被災した村でのアセスメント活動

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「タイプ1」チームとして、模擬診療を行う参加者

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「タイプ2」チームとして、模擬診療を行う参加者

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課題抽出ワークショップでの話し合いの様子