タイの災害医療専門家が日本で研修

2017年3月7日

2017年2月22日~3月7日

「ASEAN災害医療連携強化プロジェクト(ARCHプロジェクト)」のタイ側のプロジェクトメンバーでもある災害医療関係者11名が日本で研修を行いました。この研修の目的は、タイ人研修員達が、日本の制度や経験の学びを通じて、自国の災害医療分野の人材育成や能力強化に必要な知見を得ることです。また、受け入れ側の日本の災害医療関係者にも、研修受け入れを通じてARCHプロジェクトに関する理解を深めるとともに、タイの災害医療関係者との良好な関係を構築してもらうことが、重要な目的でした。

研修員は、まず東京都内のJICAの研修センターにて、日本の災害医療制度に関する講義を受けました。

その後、我が国で大規模災害や多傷病者が発生した事故などの現場に、急性期(おおむね48時間以内)に派遣され活動する、専門的な訓練を受けた医療チームである、DMAT(災害時派遣医療チーム,Disaster Medical Assistance Team)の事務局のある災害医療センター(注1)(東京都立川市)を訪問し、DMATの概要やこれまでの活動、我が国の災害医療体制について講義を受けました。なお、この際に、日本が開発を支援し国際基準として世界保健機関(WHO)に採用された災害医療情報の標準化手法(Minimum Data Set:MDS)についても、説明を受ける機会がありました。

その後、一行は新潟県に移動し、新潟大学災害医療教育センターより災害医療教育プログラムの概要に関する講義を受けるとともに、地元の病院職員を対象にした病院災害研修を見学しました。また、「多数傷病者への対応標準化トレーニングコース(Mass Casualty Life Support:MCLS)」を見学し、一部演習にも参加しました。新潟ではこのほかにも、地元の病院や消防署を訪問し、同県三条市で起きた水害時の救援活動の教訓や日本の救急体制について学びました。

その後、再び東京にて、JICAに事務局を置く我が国の国際緊急援助隊(Japan Disaster Relief Team:JDR)(注2)の概要に関する講義を受けたほか、東日本大震災での対応を経験した国内の災害医療専門家から、東日本大震災の教訓、災害時の心のケア、被災地医療機関の受援体制についての講義を受けました。

また、座学のみでなく、避難所運営ゲーム(Hinanzyo Unei Game:HUG)などの体験型の学びもありました。避難所運営ゲームとは、一般市民がわかりやすく避難所で起き得る状況の理解と適切な対応を学ぶことを目的としたシミュレーション型訓練で、静岡県が開発し、他の都道府県でも研修会等が行われています。タイの研修員達は制限時間内に全ての課題への対応を完了し、日本人講師が「さすがはタイ!」と感嘆する一場面もありました。

最終日には、今回の研修で学んだことを踏まえて、自国の災害医療分野の教育や人材育成をどのように向上させていけるかというアクションプランを発表しました。振り返りでは、日本式の研修形式や運営方法から多くの学びが得られたこと、また、多職種合同で研修を受講することはタイではほとんどないので、今回日本で医療従事者と消防など、異業種が合同で研修を受ける経験をしたことで、職種間連携の重要性、有効性を実感することが出来た、などの肯定的な感想が多く聞かれました。

今回の研修で得た知識や経験を各研修員が職場に持ち帰り、上司や同僚と共有して、自国の災害医療人材育成に生かしてもらうと共に、今後のARCHプロジェクトの活動でもますます貢献してもらいたいと願っています。

(注1)正式名称は、独立行政法人国立病院機構災害医療センター

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講義風景

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演習の様子

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アクションプラン作成のグループワーク

【画像】研修修了後の集合写真