顔の見える関係構築を目指して-日本とASEANの災害医療チームが実災害を想定した合同演習(第1回地域連携ドリル)を実施-

2017年7月19日

2017年7月17日~19日

2017年7月17日から19日にかけて、タイのプーケットにおいて、ASEANおよび日本の災害医療チームの合同演習(ドリル)を実施しました。日本とASEANの災害医療チームの他、WHO、ASEAN事務局、ASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)等、約160名が参加しました。
このドリルは、「タイ国南部で大規模な津波が発生し、ASEAN各国と日本が災害医療チームを派遣した。」という想定のロールプレイ形式の演習です。実災害を模した演習を通じ、参加各国が、国外派遣および被災地での多国間調整・連携の課題を抽出することと、現在ARCHプロジェクトが開発を進めている地域連携のための共通言語である「地域連携ツール」を試すことが目的です。加えて、今回は、自チームの能力を超える重症患者を他の医療チームや現地の医療機関に転送するときの紹介状や、毎日の医療活動を被災国保健省に報告する報告書等、医療チームの活動で必要となる文書フォーマットを使い、様式に慣れることや、使い勝手などを検証し、改善につながる提案を抽出することを目的としていました。現在、こうしたフォーマットは、すでに世界保健機関(WHO)が作成したものがあり、被災国による救援チームの調整や医療リソースの配分を適切に行うためにも、各チームは統一されたフォーマットを使用することが推奨されています。

ドリルは3日間のスケジュールで、初日は2日目の野外演習で用いる各文書フォーマットに慣れるための机上演習、2日目は野外演習、最終日には振り返りを行いました。
野外演習では、各国の医療チームが、模擬傷病者の診療を行いました。ASEAN各国チームは、WHOが定める国際災害医療チームのレベル分けのうち、外来患者の診察のみを行う、いわゆるクリニックレベルの「タイプ1」のチームという設定で、自チームで対応ができないような重症患者は、より高度な医療を提供できるチームや現地の医療機関に転送しなければなりません。各チームは、今回の参加チームの中で唯一、外来診療に加えて手術や入院機能を有する「タイプ2」チームである日本の国際緊急援助隊医療チームに連絡し、患者搬送の調整等を行いました。また、自チームの医療活動を報告書にまとめ、被災地の災害対策本部に提出しました。加えて、各国チームは、近隣の村にモバイルチームを送り、村内の巡回や村人へのインタビューを通じて被災地域の状況や健康問題等を調べました。
3日目の課題抽出ワークショップでは、各国ごとに、初日の机上演習と2日目の実地演習から得られた課題について話し合いました。

今回の地域連携ドリルを通して、参加者からはツールや報告様式、今後の能力強化に対する多くのフィードバックが得られました。これらの課題に対する対応は、プロジェクト・ワーキング・グループ1(PWG1)とプロジェクト・ワーキング・グループ2(PWG2)の中で議論、整理され、実施に向けたアプローチがとられることになります。

また、ARCHプロジェクトでは、こうした演習や研修の機会を通じて、各国の災害医療従事者たちの「顔の見える関係」が構築され、いざ災害が起きた際にスムーズな調整や協力ができるような関係性を作っていくことを目指しています。

【画像】

机上演習の様子

【画像】

実地演習の集合写真

【画像】

模擬患者を診療する様子

【画像】

近隣の想定村での活動の様子

【画像】

被災地から模擬患者を搬送する様子

【画像】

重症患者をタイプ2に搬送する様子