第2回ASEAN加盟国向け研修の実施

2017年11月8日

2017年11月5日~8日

ASEANでは、「One ASEAN, One Response」のビジョンを掲げ、地域で起きた災害に地域の力で対応する体制整備と能力強化に取り組んでいます。「ASEAN災害医療連携強化プロジェクト(ARCHプロジェクト)」は、その実現にも貢献する形で、ASEANの災害医療分野における地域連携メカニズムの構築に向けた調整力強化を目指しています。しかしASEAN10か国それぞれの災害リスクや準備状況、対応能力には大きな差があります。こうしたレベルの違う国々が協力し合い、補完し合っていくためには、各国が最低限同じラインに立つ必要があることから、ARCHプロジェクトでは、プロジェクト期間中、計4回の研修を行い、各国の能力強化を支援することとしています。

今回、タイのバンコクにおいてASEAN加盟国の災害医療関係者の約30名を対象にした研修の第2回を実施しました。研修のテーマは、国内災害に対応する医療チームが現場で円滑に活動を実施するためのチーム能力強化です。
研修初日には、参加各国が自国の国内災害に対応する医療チームの体制、認証制度、人材育成の現状と課題等について発表しました。2日目以降は、医療チームが現場で必要とされる具体的な取り組みについて、講義や演習を行いました。その内容を少しご紹介したいと思います。

今回の研修では、ASEANの中で災害対応の経験のある国から講師を招き、経験を共有することでお互い学びあうことができました。
まず、日本からは、日本の災害時派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team:DMAT)の概要、医療チームのロジスティックスと安全対策についての講義を行いました。フィリピンは、医療チームの役割やリーダーシップと、災害時における被災者への心理的なケアについて、インドネシアは、医療チームの派遣前準備と現場での活動について、タイは、災害現場における被災状況やどのような支援のニーズがあるかを確認する現地調査について、講義を行いました。その他の国やASEAN防災人道支援調整センターも、無線の使い方の実習や、災害現場において傷病者の診療優先度を迅速に決めるためのトリアージの机上演習、災害の事後評価や、被災地の医療チームの活動の模擬演習などにおいて、それぞれの国や機関の持つ経験や知見を活かして、域内各国の学び合いに貢献しました。
今回の研修プログラムは、全てプロジェクトワーキンググループ2(注)により企画されており、ASEAN各国のニーズが反映されていたため、参加者の満足度も高い、充実した研修となりました。

一方で、各国の災害対応能力には差があり、ニーズも異なることがより鮮明となり、地域の能力の底上げを図るうえで、それぞれのベースが違う中でどのような形で共通性を見出していくか、課題も浮き彫りとなりました。研修生からは、フィールド・トリアージ演習を行う中でASEANとして共通のトリアージ方法を持った方が良いのではないかという新しいアイデアも生まれ、引き続きASEANとしてどのような災害対応が必要なのか、話し合いを続けていくことになりました。

また、今回、日本とタイの講師が共同で演習を企画、実施したことは、研修生の能力向上だけでなく、タイカウンターパートの研修実施能力の向上にも貢献することができました。

第3回研修は、2018年5月に行う予定です。

(注)主に、ASEAN加盟国の災害医療人材の能力強化について、討議する作業部会。

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集合写真

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ASEAN各国によるプレゼンテーション

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各国の話し合いの様子

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無線機を使ったコミュニケーションツール演習の様子

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フィールド・トリアージ演習の様子

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医療チームの活動の模擬演習の様子

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医療チームの活動の模擬演習の様子

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研修修了証を受け取る研修生