ASEAN災害医療関係者が日本で研修

2018年10月19日

2018年10月16日~19日

2018年10月16日から10月19日にかけて、ASEAN10か国から、災害医療にかかる体制整備や能力強化において中心的役割を担う政府・病院関係者29名を日本に招き、日本の災害医療システムを理解することを目的とした研修を行いました。

研修初日は講義を通じて阪神淡路大震災後の神戸市の復興の経験、災害急性期における住民・自治体間連携の重要性やボランティアの重要性、被災経験を生かした復興政策・まちづくりについて理解を深めました。参加者は、住民・自治体間連携の重要性やボランティアの重要性について特に関心が高かったようで「市や県など行政のレベルごとの災害に対する役割やコミュニティを中心とした復興・防災対策(例:「防災福祉コミュニティ」通称BOKOMI)とは具体的にどのようなものか?」などの質問がありました。
翌17日は、第14回アジア太平洋災害医学会(APCDM)に参加しました。ARCHプロジェクトをけん引する各国の代表が、プロジェクトの活動・進捗について発表したり、WHOスタッフ、国内外の専門家とのパネルディスカッションに参加し、災害対応にかかる優先課題、アジア地域と世界との連携について議論を交わしたりなど、国内外で活躍する災害医療の専門家と直に交流できた貴重な機会となりました。
18日午前、「災害と心的外傷」について講義があり、参加者の国々では、災害時の精神保健の取り組みは十分とはいえないなか、日本がどのような活動を行っているのか大いに興味を示していました。
その日の午後は、人と防災未来センターと兵庫県災害医療センターを見学しました。
人と防災未来センターでは、センター設立の歴史や役割について講義を聞いたのち、被災当時の写真や遺品の展示、地震のメカニズムを説明した展示物の見学、さらには体験コーナーで津波避難を体験しました。参加者は、悲惨な経験を後世に伝え、経験から何を学んだか、市民一人ひとりがどう備えるべきかを伝えるという、センターが担う重要な役割を実感していました。
兵庫県災害医療センターでは、センター設立の背景や役割について聞いたのち、ヘリポート、情報指令センター、および救急処置室とドクターカーを見学しました。情報指令センターでは、広域災害救急医療情報システム(EMIS)を用いた管轄地域における発災時(災害時のみならず、平時の交通事故等も含む)の緊急対応のメカニズムについて説明を受け、参加者からは、自治体との連携方法やEMISの仕組みについて質問がありました。また救急処置室は、この一室で血管造影、CT、手術ができる仕組みになっており、高度救命救急センターとして高度な医療を提供し、緊急医療対応の司令塔としての役割を学ぶことができました。
研修最終日には、午前中、ARCHプロジェクト活動の振り返りとして、事前に参加者が提出したARCHプロジェクト活動の評価についてのアンケート結果の説明と今後に向けてのディスカッションが行われました。午後は、淡路島にある北淡震災記念公園を訪れ、阪神・淡路大震災の被災現場を再現した模型や、震災を引き起こした野島断層、そしてゆがみが生じた状態で保存展示されている家屋などを見学しました。参加者は説明を聞きながら、被災規模の大きさを改めて目の当たりにし、また展示方法や震災体験などの工夫を凝らした内容に関心を寄せていました。
今回の参加者は、今後も引き続きプロジェクトに参画する予定です。彼らが、今回の研修を通じて得た知見、ネットワークを自国の災害医療システムの強化とASEAN域内の連携の推進につなげていくことが期待されます。

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集合写真

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講義冒頭、アイスブレーキングの様子

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人と防災未来センターで津波体験を受ける参加者の様子

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災害医療センターのドクターカーに試乗する参加者

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野島断層の説明を聞く参加者

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地震体験を受ける参加者