プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)ASEAN災害医療連携強化プロジェクト(ARCHプロジェクト)
(英)Project for Strengthening the ASEAN Regional Capacity on Disaster Health Management(ARCH Project)

対象国名

タイ

署名日(実施合意)

2016年2月19日

プロジェクトサイト

タイ/ASEAN地域

協力期間

2016年7月10日〜2019年7月9日

相手国機関名

タイ国家救急医療機関(National Institute for Emergency Medicine:NIEM)

背景

(1)ASEAN地域における災害医療分野の現状と課題

近年、世界各地において自然災害発生の頻度が増加し甚大な被害をもたらしている。特に、ASEANでは1975年から2015年までに自然災害による死者数42.5万人、経済的損失1220億ドルと大きな被害を受けており、災害の種類も洪水、暴風雨、地震、土砂災害、火山、干ばつと多様である(EM-DAT)。
このような中、ASEANは防災及び災害対応にかかるASEAN域内の協力を重視しており、2005年には、ASEAN域内の防災及び災害対応協力推進のための包括的枠組であるASEAN防災・緊急対応協定(AADMER:ASEAN Agreement on Disaster Management and Emergency Response)が策定された。また、防災協力強化にかかるASEAN宣言(ASEAN Declaration on Enhancing Cooperation in Disaster Management、2013年)においても、効果的な災害対応のための域内協力の重要性が強調されている。さらに、ASEAN保健セクターにおいては、2015年以降の優先課題の一つとして「災害医療(Disaster Health Management)」が挙げられている。しかし、ASEAN地域の災害医療連携に向けて、国レベルにおける同分野の実施能力や地域レベルでの連携体制の構築は十分に進んでおらず、課題となっている。
我が国は、2013年の日・ASEAN特別首脳会議において、ASEAN各国の災害対応能力の向上、日本またはASEANが被災した場合に迅速な救援活動及び災害医療活動を行うための連携体制構築に対する協力を実施することを表明している。我が国も、ASEAN地域と同様に自然災害多発国である。被災及び対応経験、国際緊急援助隊医療チーム(Japan Disaster Relief:JDR、Medical Team)や災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team:DMAT)の制度や体制など、災害医療分野の経験や知見を多く有している。これらを土台とした協力の実施により、ASEAN地域における災害医療の対応能力の強化及び我が国とASEANの人と人の絆を通じた関係強化が期待される。
一方、JICAは1988年から20年間にわたり課題別研修「救急・大災害医療コース」を実施し、合計53か国207名の研修員を受け入れ、災害医療の専門家を育成するとともに専門家同士の人的ネットワークの形成に貢献した。この研修に参加したタイの災害医療の専門家が中心となり、タイでは2008年に日本のDMATを参考としたタイ版DMATが設立され、2011年のタイ洪水発生時にも活躍した。さらにタイ政府は、タイ国内の災害医療の体制を強化するとともに、タイがリードをとりながらASEAN地域の災害医療の連携を強化し、域内の災害対応力強化を目指すとしている。
こうした背景から、タイ政府、JICA及び我が国の災害医療の専門家が中心となり、災害医療にかかる域内の連携強化の必要性と方策にかかる議論が行われ、その議論を踏まえて、タイ政府から我が国に対して、タイの国家救急医療機関(National Institution for Emergency Medicine:NIEM)を実施機関とした、ASEAN地域の災害医療の連携強化とそれによる災害対応力強化に資する技術協力の要請がなされた。
JICAは、協力を検討するにあたり、ASEAN各国の災害医療及びその基礎となる救命救急医療体制にかかる情報収集を目的として「ASEAN災害医療・救急医療にかかる情報収集・確認調査」(2014年11月〜2015年8月)を実施した。その調査の中で、計3回にわたりASEAN各国の災害医療の関係省庁・機関及びASEAN事務局の関係者による地域会合を開催し、同地域における災害医療の連携強化の重要性及び必要性に対する共通認識を醸成するとともに、それに向けたASEANと日本が協働で取り組むべき具体的課題・内容等について議論した。この中で、タイと日本の技術協力の枠組みの中で、ASEAN地域の災害医療の連携強化にかかる取り組みを行うことを合意し、2015年9月のASEAN 保健大臣会合において、ASEANとして取り組むべき案件としても承認されている。また、本案件は、正式なASEAN案件として、ASEAN加盟国の政府代表の集まりである常駐代表委員会により承認されている。

(2)ASEAN地域における災害医療分野の開発政策と本事業の位置づけ

ASEAN保健セクターにおいては、2015年以降の優先課題の一つとして「災害医療」が挙げられており、2015年9月のASEAN保健大臣会合において、本案件が同優先課題に資するASEAN案件として承認されている。また、ASEANは、防災分野におけるOne ASEAN One Responseビジョンの下、災害時の地域内における協働と統一した対応体制の構築を目指していくことを表明している。

目標

上位目標

ASEAN及び日本の災害医療にかかる連携メカニズムが構築される。

プロジェクト目標

ASEAN地域の災害医療にかかる調整機能が強化される。

成果

成果1 災害医療にかかる ASEAN 地域内の調整プラットフォームが設置される。
成果2 災害医療にかかる地域連携の実践の枠組みが明確化される。
成果3 災害医療にかかる効果的な地域連携のためのツールが開発される。
成果4 災害医療における学術的ネットワークが強化される。
成果5 災害医療の能力強化のための活動が実施される。

活動

活動1-1 地域調整会議を毎年開催する。
活動2-1 プロジェクトワーキンググループ1とともに地域連携ドリルのプログラムの検討を行う。

活動2-2 毎年地域連携ドリルを開催する。
活動2-3 地域連携に関する提言を取りまとめる。
活動2-4 (実災害が発生した場合)実災害における実践を行う。

活動3-1 プロジェクトワーキンググループ1を組織/開催する。
活動3-2 標準手順書(SOP)(案)及びミニマム・リクアイアメント(案)について検討する。
活動3-3 医療チームデータベースを設置する。
活動3-4 医療ニーズアセスメントのフレームワーク(案)を検討する。

活動4-1 プロジェクトの成果について災害医療の学会で発表する。

活動5-1 災害医療及び救急医療に関する研修計画、カリキュラム、教材を準備する。
活動5-2 ASEAN加盟国に対して災害医療及び救急医療に関する研修を実施する。
活動5-3 ASEAN加盟国の災害医療分野における能力強化の状況についてモニタリング調査及び評価を行う。
活動5-4 本邦招聘プログラムを実施する。
活動5-5 タイのカウンターパート(C/P)を対象とした本邦研修を実施する。

投入

日本側投入

(1)専門家派遣
総括・医療システム、救急・災害医療、AMS研修企画・運営、地域連携ツールI、地域連携ツールII、タイ招聘・企画運営、地域連携ドリル企画・運営、研修・招聘運営補助
(2)必要な資機材提供
(3)ASEAN各国向け(タイ含む)本邦研修
(4)タイカウンターパート向け本邦研修(トレーナーズトレーニングの位置づけ)

相手国側投入

(1)カウンターパートの配置
(2)執務室提供
(3)プロジェクト運営のための一部費用負担