プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)皮膚科医育成のための国際ネットワーク強化プロジェクト
(英)Project for Developing International Network to Enhance Competency of Dermatologists

対象国名

タイ

署名日(実施合意)

2016年3月25日

本事業の受益者(ターゲットグループ)

IODスタッフ及びIODのDCDD履修生及び修了生(2015年時点、34か国:タイ、フィリピン、パキスタン、バングラデシュ、タンザニアなど)

協力期間

2016年4月1日から2021年3月31日

相手国機関名

タイ保健省 医療サービス局 タイ皮膚病学研究所(IOD:The Institute of Dermatology)(タイ、バンコク)

背景

皮膚疾患は一般的に生命に関わらないと思われやすく、多くの途上国においては、感染症や母子保健等の課題と比較すると軽視されがちで、皮膚科医の育成が積極的に進められている国は少ない。しかしながら、皮膚疾患は目に見えるインパクトが大きく、ハンセン氏病や、乾癬、アトピー性皮膚炎、多くの遺伝性皮膚疾患などの多くの患者は差別の対象となったり、著しく患者のQOLを阻害する疾患も多く、皮膚疾患への対応の強化が求められている途上国が多い。適切な処置を得られなかったために病が重篤化し、容姿に悩むことは、人間の尊厳に関わる問題である。
2014年に開かれた第67回世界保健総会において、WHO加盟国は「乾癬は世界的な取り組みが緊急かつ重要な疾患」として認める決議を採択した。乾癬は不快感や強い痒み・苦痛を伴い、関節炎などが重症化すると機能障害をもたらすのみならず、虚血性心疾患などの合併リスクや外見を損なうために強い精神的ストレスを抱えやすい疾患でもある。患者数は世界人口の約2%といわれる慢性の皮膚疾患である。乾癬を完治する特効薬はないものの、医師が適切な早期診断能力をもつことで、症状のコントロールや不必要な検査や薬剤の投入を防ぐことができる。よって、世界保健総会の決議文では、途上国においても必須医薬品の供給や、皮膚科医間のネットワーク構築、患者への支援強化の必要性が挙げられている。
このように、皮膚科の専門性をもつ医師による患者への適切な臨床判断や病理学的所見による早期診断能力、適切な治療技術は重要であるため、専門的知見や技術の向上を図り、皮膚科医の人材育成に取り組む必要性が高まっている。
我が国は、タイ皮膚病学研究所(Institute of Dermatology:IOD)が運営する「皮膚病学・皮膚外科ディプロマコース(Diploma Course in Dermatology and Dermatosurgery:以下、DCDD)」への協力を1976年に開始して以降、本コースを受講する皮膚科医の人材育成や講義の充実化を図る支援を継続的に行ってきている。2015年2月には、これまでの協力の成果及びインパクトを確認するための評価調査を実施した。その結果、長年に渡る協力を通じ、アジアを超えアフリカにも及ぶ34か国の皮膚科医を800人以上育成しており、途上国向け国際ディプロマコースの修了生輩出数としては世界トップレベルの実績を誇るコースとなっていることを確認した。
しかしながら、国によっては、皮膚科専門医としての勤務機会の欠如、学会などの職能団体の欠如、皮膚科医育成の機会が限局的などの課題がみられる。また、本コースの実施機関であるIODは臨床的知見を有する講師人材やコースの運営能力(財政面含め)は十分に有する。しかし、最新の皮膚科学の知見の獲得や基礎研究の側面も重要でありながら、その中核となる皮膚科基礎医学分野に限っては講師候補が現在IODに1名いるのみである。
本事業では、これまでの協力の実績や培ってきた様々な人的資源を活用し、34か国に上るDCDDの修了生達が課題解決のために相談し合い、開発途上国における皮膚科医の専門能力を向上するために国際ネットワークを構築することを目指す。また、日本の講師や教育機関による協力を通じ、IODに皮膚科基礎医学分野のタイ人講師となる人材の育成強化を図る。

事業概要

事業目的(協力プログラムにおける位置づけを含む)

開発途上国における皮膚科医の専門能力向上のために、JICAが長年支援をしているタイ国DCDDコースの修了生の間で皮膚科医の国際ネットワークを構築することを目的とする。

目標

上位目標

DCDD履修生の出身国において皮膚科専門医が持続的に育成される。

プロジェクト目標

日タイの連携により開発途上国全般における皮膚科医の専門能力向上のために、皮膚科医の国際ネットワークを構築する。

成果

成果1:ディプロマコースのために最新の皮膚科基礎医学分野を中心としたタイ人講師人材が育成される。
成果2:皮膚科分野の国際ネットワーク活動が促進される。
成果3:DCDDが国際レベルの皮膚科ディプロマコースとして、医師の間でより広範囲な認知を得る。

活動

1-1. 日タイの講師によってDCDDを運営する。
1-2. 日本で博士課程の取得のための長期研修を実施する。
1-3. 日タイの共同学術活動の推進のためにIODの学術スタッフに対して国別研修(短期研修)を実施する。

2-1. 国際ネットワーク強化のための事務局を整備する。
2-2. DCDD修了生(同窓生)名簿を更新する。
2-3. 国際ネットワークのイベントを実施する。
2-4. ウェブサイトやソーシャルメディアを開発及び運営する。
2-5. DCDD参加者と講師の間でのコンサルテーション活動を行う。

3-1. DCDDの国際的な広報活動を強化する。
3-2. DCDDについて国際的に発表する。

投入

日本側投入

・DCDDコースへの短期専門家派遣(組織病理学・職業性皮膚病、免疫学、分子皮膚科学、生化学など)
・短期研修(3か月程度×年1名×5年)
・長期研修(1年間×年1名×5年)
・在外事業強化費(Alumni運営のためのスタッフ傭上など)