第3回オンライン研修「高齢者のためのシームレスサービスの向上」開催

2022年2月24日

2022年2月22日から2月24日まで、JICA S-TOP第3回オンライン研修「高齢者のためのシームレスサービスの向上」をバンコク・アマリ・ドンムアン空港ホテルにて実施しました。開会式では、保健省、社会開発人間の安全保障省、国民医療保障事務局、JICAタイ事務所、S-TOPプロジェクトの代表者らにより開会の辞が述べられ、3日間の研修には、S-TOPの実施機関から22名の参加者と延べ30名超のオブザーバーが参加しました。なお、本研修は、主要な参加者はバンコクの会場から参加し、日本や遠方からの講師及びオブザーバーはオンラインで参加するハイブリッド方式で実施されました。

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第1日目(2022年2月22日)

午前は、福岡県小倉リハビリテーション病院の浜村昭徳医師が40年以上の臨床経験から、日本における中間ケアの発展と現状について講義しました。講義では、浜村医師が数十年にわたり様々な関係者と協働し、地域の高齢者へ適切かつ継続的なリハビリテーションを提供するために取り組んだ様々な試みが紹介され、そのような試みが後に、地方行政の中に正式な仕組みとして取り込まれた過程について説明がありました。このような経験を基に、浜村医師は、高齢者のシームレスケアは、地域社会の既存の資源を活用し、その地域特性に合わせたものである必要があることを述べました。

午後は、長野県駒ヶ根市の浜達也氏が、同市における脳卒中再発予防のためのセルフマネージメントの取り組みを紹介しました。この取り組みは地方自治体と地域医療の中心的役割を果たす病院との連携によって実施され、結果として脳卒中の再発予防に大きな効果を上げました。また、浜氏の講演の後は、コンケン病院のラティオン・ポーンクナ氏による、コンケン県での脳卒中ケースマネジメントについての紹介がありました。ラティオン氏は日本で老齢医学の研究を終えた後、コンケン県にて高齢脳卒中患者の継続的かつ包括的なケアを行うための活動を行っています。そして、駒ヶ根市同様にセルフマネージメントの概念を応用し、高齢脳卒中患者の再発予防に関わる活動を精力的に行っています。参加者は、浜氏及びラティオン氏の活動紹介を受けて、各県でのケースマネジメントを改善する方法について活発な意見交換を行いました。

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第2日目(2022年2月23日)

午前は、COVID-19下でのテレリハビリテーションについて、藤田医科大学の向野雅彦准教授とチョンブリ病院のピヤヌック・サムーウォン医師による講義が行われました。

向野准教授の講義では、COVID-19下でのテレリハビリテーションの世界的な傾向や、先行研究において示されている効果などについての説明がありました。またテレリハビリテーションの実施については、効果的に実施するための細やかな工夫や効果の評価方法についても説明がありました。一方で、ピヤヌック医師からは、タイにおけるテレリハビリテーションの試みとして、COVID-19下で様々な制約がある中、限られた資源を活用し、在宅患者の確実なフォローアップを行っているチョンブリ病院の取り組みが紹介されました。参加者は、各県での取り組みと合わせて、家族介護者の協力のもと、地域社会の高齢者へリハビリテーションをどのように継続的に実施するかについて、活発な意見交換を行いました。

午後は、タイでJICAシニアボランティア(作業療法士)として活動した経験を持ち、また国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health:ICF)に深い見識を持つ浅海奈津実先生から、ICFの基本的な考えと臨床でのICFの活用方法、特にICFを活用したチームアプローチについて講演がありました。参加者は、タイでのICFの活用について自身の経験やアイデアを共有し、講師と意見交換をすることができました。

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第3日目(2022年2月24日)

研修3日目は、ICFの概念の理解を深め、実践に応用できる力をつける目的で、すべての参加者が3つのグループに分かれ、ICFの概念を用いた症例検討(脳卒中2症例、脊椎損傷1症例、合計3症例)のグループワークを行いました。

グループワークでは、医師、看護師、理学療法士、作業療法士といった医療専門職と、中央省庁及び地方保健局のオフィサーと言った様々な背景を持つ参加者によって、各症例を多角的な視点で分析・協議しました。また、その結果はグループ毎に発表され、参加者間で活発な意見交換が行われました。グループワークを通じて、参加者は、患者の医療的な課題のみならず、患者や家族の希望に寄り添った目標設定を行うこと、社会福祉や地方行政等、異なるステークホルダーと連携することの重要性を理解することができました。

グループワークを統括したチェンマイ・労災リハビリテーションセンター(Region3)の作業療法士であるソムリット・カムルアンリット氏からは、グループワークの総括として、高齢者の生活の質の改善には、医療的な支援のみならず、就労や生活に必要な細やかな技術を向上させるための支援の重要性が示唆されました。

3日間の研修は、すべての日程について予定通り終了し、保健省保健行政部(Health Administration Division)のコーンクリット課長とS-TOPプロジェクトの坂井元興チーフアドバイザーの閉会の辞により終了しました。研修後の参加者からのフィードバックでは、高い満足度が示されました。

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