プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)高齢者のための地域包括ケアサービス開発プロジェクト
(英)Project on seamless health and social services provision for elderly persons(S-TOP)

対象国名

タイ王国

署名日(実施合意)

2017年9月28日

プロジェクトサイト

対象はタイ全土。パイロットサイトは、1)メインサイト(7か所)としてチェンマイ、コンケン、ナコンラチャシマー、ノンタブリ、バンコク、チョンブリ及びスラタニ、2)ポテンシャルセッティング(3か所)としてチェンライ、ナコンパトム及びプーケットから各1病院、3)プラクティカルサポーター(2か所)としてサラブリ及びソンクラー、4)アカデミックサポーターとしてシリントン国立リハビリテーションセンター、中間ケアに関する取組を進めている大学(チェンマイ大学、コンケン大学、マヒドン大学等を想定)を選定(注)

(注)1)「メインサイト」は、中間ケアに関してフルスケールで協力するサイト、2)「ポテンシャルセッティング」は、中間ケアの取組について部分的に協力するサイト(中間ケアの取組経験は多くないが、今後メインサイトからも学びながら中間ケアを促進していくもの)、3)「プラクティカルサポーター」は、既に中間ケアの先進的な取組を実施しており、メインサイト等からの視察受入等も担うサイト、4)「アカデミックサポーター」はメインサイトに対して学術的な観点からの協力や講義等について支援を得るサイト。

協力期間

2017年11月8日から2022年10月31日

相手国機関名

保健省(MOPH)Office of Permanent Secretary
社会開発・人間の安全保障省(MSDHS)Department of Older Persons他、高齢者福祉関連部局
国民医療保障事務局(NHSO)

背景

(1)当該国における社会保障セクター(高齢化対策)の開発実績(現状)と課題

タイ王国(以下、「タイ」)においては、総人口6,593万人のうち65歳以上の高齢者が666万人と、全体の10.1%を占める高齢化社会に突入している(注1)。これは、東南アジア諸国のうち、シンガポールを除いて最も高い割合である。さらに、タイは、2002年に65歳以上の割合が7%を超える「高齢化社会」に移行したが、20年後の2022年には同割合が14%を超え、「高齢社会」に突入すると予測されており、この進展スピードは、過去に日本が「高齢化社会」から「高齢社会」に達するのに要した24年よりも早いと言える(注2)。なお、タイでは60才以上が高齢者として定義されており、2014年に国家統計局が実施した高齢者に関する調査に基づいた数字によると、2015年時点で全人口の16%が60才以上で、「高齢化社会となった」とされている(注3)。
一方、タイは、日本を含む高齢化の進む先進国と異なり、先進国レベルの経済発展や社会保障制度の構築がなされていない中で前述のような急速な高齢化を経験することになり、医療・介護ニーズへの対応や年金等の所得補償について、タイの実情をふまえつつ適切な対応を取ることが喫緊の課題となっている。
介護については、高齢化の進展に伴う要援護高齢者の増加、及び、都市化や社会の変化に伴う独居老人あるいは高齢者のみの世帯の増加(高齢者単身世帯の割合は1986年の4.3%から2007年には7.6%、2014年には9%に、高齢者夫婦のみ世帯の割合は同期間6.7%から16.3%、19%に増加(注4))を受け、家族だけでは高齢者の介護を支えられず、社会で支える仕組みが求められていると言える。
こうした状況に対し、JICAは、「コミュニティにおける高齢者向け保健医療・福祉サービスの統合型モデル形成プロジェクト」(2007年~2011年)(以下、CTOP)、及び、「要援護高齢者等のための介護サービス開発プロジェクト」(2013年~2017年)(以下、LTOP)の、2件の技術協力プロジェクトを実施してきた。CTOPは、コミュニティにおけるボランティア等を活用しつつ、従来縦割りで実施されてきた保健医療分野と福祉分野の高齢者向けサービスを統合して効率的に提供していくためのサービスモデルを作成・試行し、成果を収めた。LTOPは、高齢化がさらに進み家族形態の変化もある中で、特に要援護状態にある高齢者への介護については、既存のリソースに頼るだけでなく介護人材の育成や財政的に持続可能な制度作りも見据えた形で実施できるよう、モデル開発及び政策提言を行った(2017年8月まで実施中)。
今般、タイ政府から、高齢者が要援護状態に陥らないように、中間ケア(急性期医療から在宅に円滑に移行するためのケア提供の仕組み)の強化、及び、高齢化が進展するほど家族やコミュニティへの負担ともなり得る認知症への対応について、日本からの知見を求める要請があり、本案件を実施することとなった。

(2)当該国における社会保障セクター(高齢化対策)の開発政策と本事業の位置づけ

タイ政府において、高齢化対策は重要な政策課題と認識されており、複数の関係省庁により構成され、副首相が議長を務める「国家高齢者委員会」が設置されている。同委員会および社会開発・人間の安全保障省が採択した「第2次国家高齢者計画(2002-2021)2009年第一次改訂版」において、「健康増進や社会参加等の促進」、「社会的保護の充実」といった戦略が掲げられ、医療・福祉両面での高齢者へのサービス構築が謳われている。本事業は、高齢者の寝たきりや介護の予防につながるものであり、同戦略に即したものである。

(3)社会保障セクター(高齢化対策)に対する我が国及びJICAの援助方針と実績

本事業は、「対タイ王国国別援助方針」(2012年12月)の重点分野の一つである「持続的な経済の発展と成熟する社会への対応」に合致し、協力プログラム「社会保障(高齢化対策、社会的弱者支援)」に位置づけられる。
また、同方針では基本方針(大目標)として「戦略的パートナーシップに基づく双方の利益増進及び地域発展への貢献の推進」を掲げており、本事業は「アジア健康構想」等の日本政府の政策に合致していることに加え、高齢化が進みつつある他のアジア地域の開発途上国への波及効果も期待されるため、実施の意義が高い。

(4)他の援助機関の対応

国連人口基金(UNFPA)が、チェンマイ県において国際NGOのHelp Age International等とともに在宅ケア支援のパイロット事業を実施していた。また、過去にAusAIDが第二次国家高齢者計画草案作成に予算面での支援をしている(注5)。いずれも本案件との直接の関係はないが、プロジェクト成果の発信等の機会に情報共有を検討する。

(注1)“年齢別全国人口2016年12月”(Department of Provincial Administration, Royal Thai Government)(タイ語)。なお、同人口は「タイ国籍保持者住民票に記名のある者のみ」の年齢別分類の65才以降の集計。「タイ国籍保持者住民票に記名のある者のみ」の全体人数6442万人に対し65才以上人口は10.3%にあたる。
(注2)"World Population Prospects: The 2015 Revision"(Population Division, Department of Economic and Social Affairs, United Nations)
(注3)"Situation of the Thai Elderly 2015"(Foundation of Thai Gerontology Research and Development Institute)
(注4)"Situation of the Thai Elderly 2015"(Foundation of Thai Gerontology Research and Development Institute)
(注5)第二次国家高齢者計画(タイ語版)