その1 なぜ、ベトナムで、在来ブタの遺伝子バンクが必要?

2015年8月1日

1970年代まで、ベトナムにおけるほぼすべてのブタは在来種でした。しかし、在来種は飼養効率が悪いことから、効率の良い西洋品種のブタ(ランドレース、ヨークシャー、デュッロック)が導入され、在来種、特にそのひとつであるモンカイとの交配が進められ、生産性の向上が図られました。無秩序な交配の結果、ベトナム在来の希少品種の数が激減するという事態になっています。ベトナムの在来ブタは26品種と言われていますが、現在までに3種が絶滅、8種が絶滅の危機にあるとされ、残りの品種もその数が減少傾向にあります。

一方で在来ブタは、過酷な環境でも育ち、病気にも強い上、味も良いため、ベトナムで養豚業を営む多くの小規模農家にとって、生産技術、消費者の嗜好、投資能力の観点からも適切かつ貴重な経済資源であると言えます。

このような理由から、減少する在来ブタの品種を保存することは、ベトナムにとって優先課題とされていますが、これまでのところ生体での保存にとどまっており、効率的ではありません。日本が先導する遺伝子バンクシステムを導入することは、消えていくと危惧される在来品種の遺伝子(精子、卵、受精卵・胚など)を永久的に保存するだけでなく、これらを活用して、養豚農家の食肉生産システムの効率をあげ、収入の増加にも貢献することができると考えられます。