遺伝子バンクシステム導入に向けて、在来ブタのデータ収集が開始されます

2015年11月3日

ベトナムの在来ブタは26品種いるとされていますが、このうちすでに5品種が絶滅し、9品種が稀少品種と言われています。ベトナム農業農村開発省(MARD)はこれまでも在来品種の保存に着手してきていますが、ベトナム畜産研究所(NIAS-V)を中心とした少数頭数の生体での保存にとどまっており、未だ遺伝子バンクは設立されていません。

本プロジェクトでは、日本が保有する遺伝子バンクシステムを導入することにより、消えていくと危惧される在来品種の遺伝子(精子、卵、受精卵等)を安定的に保存することを目指しています。

10月14日、日本の遺伝子バンクシステムの専門家で、プロジェクト・リーダーの農業生物資源研究所の菊地和弘専門家を迎えて開催された「データ収集ツール作成」ワークショップでは、ベトナム在来ブタの希少品種の保全管理に必要なデータについて議論を行い、日本の経験も取り込みつつ、データ収集ツール案をとりまとめました。これらのツールは、Yen Bai省での予備試験を経て完成しました。

プロジェクトでは完成したツールを使って、ベトナム全国の22省にて在来ブタのデータ収集を開始します。それに先立ち現在、Hoa Binh省にてデータ収集要員の研修が行われています。

今回ベトナム側カウンターパートと一緒にデータ収集ツール作成に携わった菊地和弘専門家、石原慎矢専門家からのメッセージ

菊地専門家:
今回は本格的にフィールドで活動を行いました。今回訪れたYen Bai省Mu Can Chai(Hanoiから北西に約400 km)には、予想以上に在来豚が飼養されており、たいへん感動しました。今後全22省での活動が期待できると感じております。

石原専門家:
本プロジェクトにおけるデータ収集では、各省でブタの毛色や体の形などの外形的情報に加え、DNAサンプルを採取することで遺伝子情報の収集、さらにはアンケート調査による各農家のブタの管理まで調査します。より多くのデータを蓄積していくことでベトナムにおける在来ブタの希少品種の保全管理に将来的に還元できると期待しています。

(文責 山岸信子 プロジェクト業務調整員)

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データ収集ツールの予備試験を行う国立畜産研究所のスタッフ(左端は石原専門家)

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国立畜産研究所のデータ収集チーム(ホアビン省カオフォンにて)

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在来ブタの体高を計る飼育農家の女性(ホアビン省カオフォンにて)