在来ブタの体外胚生産に向けて実験が開始しました

2016年2月22日

哺乳動物の凍結バンクは主に雄側資源である精子の保存で行われていますが、雌側資源である未受精卵あるいは初期胚(注1)のガラス化冷却による超低温保存が望まれています。本プロジェクトでは、ベトナム在来ブタにおける未受精卵並びに初期胚の超低温保存法の確立を目指しています。

凍結バンクにおいては、精子と卵を別個に保存して必要胚を必要時にそれぞれ融解・加温することで、目的の形質をもったものから胚を作出することで、次世代の育種・系統造成を可能にします。本プロジェクトでは超低温保存法の確立と同時に、体外胚生産システムの確立も目指しています。

体外胚生産は西洋種のブタ(注2)ではほぼ確立された技術ですが、ベトナム在来ブタでは生理学的な特徴が異なるため、そのまま適用することはできません。本プロジェクトでは、卵の核の成熟状況や発生に影響を及ぼす培養法を詳細に調査し、その特徴を把握し、在来ブタに適した手法を確立します。

1月25日02月1日にかけて、ソムファイ専門家が来越し、ベトナム側カウンターパートと協同で、体外成熟培養(In vitro maturation)ならびに体外受精(In vitro fertilization)システムを調査する実験を開始しました。今回の実験では、超低温保存した在来ブタの精子と西洋種(ランドレース)の採取直後の未成熟卵を使って、その成熟能、受精能、初期胚の発生能を調査しました。

今後プロジェクトでは同様の実験を重ね、在来ブタに最も適した手法を確立していきます。

(文責 山岸信子 プロジェクト業務調整員)

(注1)精子と卵を体外受精させて一定期間培養した体外生産胚
(注2)ランドレース、デュロック、大ヨークシャー

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培養液(注3)の準備をする生物工学研究所のDr. Linh

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スライドの準備を指導するソムファイ専門家

(注3)培養液は、添加物の影響が卵の核の成熟状況や発生に影響を及ぼすため、詳細に調査を行った上で調整する必要があります。培養液は培養ディシュに分注し、この後炭酸ガスインキュベータでガス平衡を行います。そして回収した卵を培養液に導入し成熟培養を行い、一定時間後に別に準備する精子と体外受精を行い、続けて発生培養液で胚発生を行うというプロセスを採用します。