プロジェクト概要

プロジェクト名

(日)ベトナム在来ブタ資源の遺伝子バンクの設立と多様性維持が可能な持続的生産システムの構築プロジェクト
(英)The Project for Establishment of Cryo-bank System for Vietnamese Native Pig Resources and Sustainable Production System to Conserve Bio-diversity

対象国名

ベトナム

署名日(実施合意)

2014年12月15日

プロジェクトサイト

ハノイ市
ただし、在来ブタ品種の遺伝資源探索調査対象はベトナム全土

協力期間

2015年5月5日〜2020年5月4日

相手国機関名

農業農村開発省 国立畜産研究所
ベトナム科学技術アカデミー 生物工学研究所
ベトナム国立農業大学
ホアビン省農業農村開発局

日本側協力機関

(独)農業生物資源研究所
徳島大学
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所、動物衛生研究所
伊藤忠飼料株式会社研究所

背景

ベトナム社会主義共和国(以下、ベトナム)では工業国化を指向して経済が急速に拡大する中、農業生産額がGDP全体に占める割合は低下しつつあるものの(1990年代の4割から2011年にはおよそ2割)、農業生産額は2000年以降およそ4倍に拡大している。また、農業従事者は地方居住者を中心に就業人口の50%近くを占めており、依然として農業は同国の最重要産業の一つである。畜産業については、生産額が年々増加し農業生産額の25%に達しており、ブタ肉は食肉生産量の75%を占めている。

ベトナムの養豚業は従来、その大半を占める零細・小規模養豚農家(山岳地域の少数民族を含む)による在来ブタとその交雑種の飼育が中心となってきた。在来ブタは、飼養効率が低いものの、食味が良く、ベトナムの自然環境によく適応し劣悪な飼育環境にも耐えるため、山岳地域に居住する少数民族の貴重な現金収入手段にもなってきた。

しかし在来ブタは、飼養効率の低さが問題視され、生産性向上のために西洋品種の導入と在来品種との交雑が無秩序に進められた。その結果、ベトナムでは一部で大規模な養豚経営が実施されるようになった反面、在来希少品種の個体数が激減するという事態を招いた。現在確認されている26在来品種のうち5品種がすでに絶滅し、9品種が極希少品種に相当するとみられており、生物多様性維持の観点から、その保全が急務となっている。

近年、ベトナムでは経済成長により、貧困層は全体として急速に減少しているが、村落の開発は総じて遅れており、特に山岳地域に住む少数民族の多くは依然として貧困下の暮らしを続けている。山岳地域は、地形やアクセス等の制約から大規模・近代的な農業や養豚業の導入には適さない。そのため、貧困下にある零細・小規模農家が利用可能な地域資源を活用した持続的な生計向上策の開発・導入が求められている。

これらの課題に対し、本事業はベトナム・日本の国際共同研究により、在来ブタの遺伝子バンク構築による遺伝資源の保全、疾病対策を中心とした適切な養豚技術の普及、山岳地域の零細・小規模農家でも実施可能な在来ブタ養豚モデル導入の三つの手段による在来ブタ保全システムを確立することで、生物多様性維持と在来ブタ飼育効率の向上を通じた小規模養豚農家の生計向上に貢献するものである。日本側からは農林水産省傘下の農業生物資源研究所を中心とした研究機関が活動を実施し、ベトナム側からは農業農村開発省傘下でブタの繁殖・飼育全般に係る研究を行っている国立畜産研究所が代表研究機関として遺伝子バンクの構築を中心に担当する。また、モデル活動対象地域として在来ブタ品種の活用に意欲的なホアビン省で、ホアビン省農業農村開発局の協力の下、在来ブタを飼育するモデル農家を選定して適切な養豚技術に基づく在来ブタ養豚モデルの導入を行う。(参照:プロジェクト概念図、コラム)

また、本事業はSATREPS 案件であることから、先進的な研究活動を含む。PERV-free(内在性レトロウィルス未感染)在来ブタの発掘と医療分野への応用(安全な移植用代替臓器)可能性の検証を行う予定であり、研究成果を活かして、地域の在来ブタ飼育が、食肉生産のための養豚業から高付加価値な医用動物生産業への発展に結びつくことも期待される。

プロジェクト概念図

目標

上位目標

ベトナム在来ブタに関わる生体での生物多様性維持システムが構築される。

プロジェクト目標

ベトナム優良在来ブタを探索・評価し、それを活用するための保全システム(注)が構築される。

((注):系統解析にもとづく在来ブタのデータベース・保存システム(成果1)、精液および胚からの再生技術(成果2)、在来ブタ遺伝資源活用法(感染症対策と生産システム)(成果3)の三つの要素から成る在来ブタの保全システム)

成果

1、系統解析にもとづいた在来ブタのデータベースおよび凍結保存システムが確立される。
2、在来ブタの精液および胚からの再生技術が開発される。
3、在来ブタ遺伝資源活用が可能(伝染病予防対策および在来ブタ生産システムの確立)となる。

活動

1-1. 在来ブタの同定・分類を行う。
1-2. 在来ブタのデータベースを構築する。
1-3. データベースと凍結保存システムの管理手法を設定する。
1-4. 凍結保存機器を導入する。
1-5. 凍結保存機器の維持管理体制を整える。

2-1. 在来ブタの体外受精による胚生産システムを開発する。
2-2. 在来ブタの卵子と胚の凍結保存法を開発する。
2-3. 在来ブタのクローン胚生産技術を開発する。
2-4. 在来ブタの胚移植方法を開発する。

3-1.ブタ内在性レトロウイルス低・未感染豚の繁殖/育種技術を強化する。
3-1-1.在来ブタの内在性レトロウイルス検出およびDNA育種法を強化する。
3-1-2.レトロウイルス低・未感染在来ブタの繁殖・育種を行う。
3-2.ブタ内在性レトロウイルス低・未感染豚輸出用の検疫体制整備に必要な条件を整備する。
3-2-1.在来ブタの重要疾病に関する検査手技、防疫の技術を強化・標準化する。
3-2-2.検疫の条件を満たす検疫施設の設置場所を選択する。
3-2-3.検疫施設と隔離飼育の運営管理手法を確立する。
3-3.在来ブタ飼育農家の収入向上を目的として、現地畜産技術者等に対する繁殖管理技術指導を行う。
3-3-1.モデル農家の選定基準を作成する。
3-3-2.新技術の実証を行うモデル農家を選定する。
3-3-3.モデル農家に対する指導を行うために、現地畜産技術者や普及員等を対象とした飼養管理と衛生指導の技術ガイダンスを実施する。
3-3-4.種付け用豚の選別と人工授精の方法を改善する。
3-3-5.在来ブタの生産地(origin)を示すラベリングのモデルを開発する。

投入

日本側投入

長期専門家:業務調整

研究者:関連分野の研究者(研究総括/凍結保存、在来ブタ同定・分類、遺伝子解析、クローン胚作成、感染症対策、生産システムなどシャトル型滞在の研究者)に加えて常駐のポスドク研究員

機材供与:(主要機材のみ)
・液体窒素発生装置/液体窒素容器
・マルチガスインキュベーター
・ELISAシステム
・リアルタイムPCRシステム
・倒立顕微鏡・蛍光顕微鏡
・発電機
・車輛

研修員受入:ベトナム側研究員の受け入れ(短期研修(感染症診断/凍結保存システム/家畜飼養管理/RT-PCR解析分野ほか)および留学生(修士・博士課程)受け入れ、現場視察(畜産施設とブランド化)

相手国側投入

カウンターパート配置
ベトナム側負担事項(主な項目のみ)
プロジェクトの実施に関わる設備(プロジェクト事務所、実験用施設等)
各研究機関所有の実験機器利用、ベトナム側研究者の移動手段の確保
プロジェクトの運営諸経費、研究活動に関わるデータ・情報の提供