持続的森林管理に向けたREDD+村落活動の計画づくりが進んでいます

2016年11月25日

ベトナム北西部は山岳地域であり、多くの少数民族が居住しています。これらの人々は傾斜地において焼畑農業を営んでおり、森林を火入れ・伐開して農地へ転換する農法が森林減少・劣化の一因となっています。こうした地域では、村人の生計の向上を図りつつ、村人と協力しながら持続的な森林管理を実現することが、REDD+成功の鍵を握ることになります。
当プロジェクトは、ディエンビエン省で実施された「北西部水源地域における持続可能な森林管理プロジェクト(SUSFORM-NOW)」の成果を引き継ぎ、それを拡大することを目標の一つとしています。SUSFORM-NOWでは、村落を対象にREDD+パイロット活動(森林管理活動及び生計向上活動)を支援しました。そこで得られた成果や知見、教訓、提言を踏まえて、ディエンビエン省内の他地域や他省にREDD+村落活動を展開することが、当プロジェクトの役割です。
2016年8月には、当プロジェクトのREDD+活動対象コミューンが選定され、いよいよ村落でのREDD+活動の支援が本格的に始まりました。プロジェクトでは、まず、郡やコミューンの担当部局から、ファシリテーター/普及員を選出しました。これらの普及員は、森林管理活動や生計向上活動の計画立案、技術指導、必要な資機材の支援など、プロジェクトの成否を左右する重要な業務を担うことになります。そのため、村落での活動を開始するにあたり、まずはファシリテーター/普及員を対象としたファシリテーションスキルや計画立案手法の研修を実施しました。
村落におけるREDD+活動計画会合は、3回に分けて実施されます。まず、事業開始に先立ち、村人全員を対象に、当プロジェクトの意義、目的、方針を説明し、プロジェクトへの参加の合意を取り付けます。その後、村の現状分析、問題分析を踏まえて、森林管理活動や生計向上活動の5カ年計画、年間計画を立案し、さらに村落におけるプロジェクトの実施体制を構築します。

例えば、ディエンビエン省で対象コミューンとなっているパコアン・コミューンには21の村落が存在し、主にタイ族やハモン族といった少数民族が居住しています。コミューンの中心部には、パコワン湖という人造湖があり、その周辺には豊かな森林が広がっています。この森林と水は、周辺村落の生活を支えているだけでなく、下流に広がる低地の農業生産にとっても重要な役割を果たしています。当プロジェクトでは、村落と協力しながら、この豊かな森林を保全しつつ、生計向上を図るための活動を支援しています。
同コミューンでは、13名のファシリテーター/普及員が選出され、4つのグループに分かれて、21村の活動計画の立案を開始しました。最初の村落会合では、ファシリテーター/普及員が、プロジェクトの説明をしましたが、質疑応答時には「植林の苗木はどのような種類のものを支援してもらえるのか?」「魚の養殖に支援が必要」などといった支援内容に関する具体的な質問や要望がいくつも出てきました。中には「森林パトロールチームの強化のためにカンフーを習いたい」といった回答に窮する要望までも飛び出しましたが、プロジェクトへの関心と期待の高さを伺うことができました。また会議では女性の参加が目立ち、最前列に陣取った女性陣が、ファシリテーター/普及員の説明に対して、ヒソヒソ、ワイワイ、ガヤガヤと話し合った上で、忌憚のない意見や要望を出していたのが印象的でした。
また、計画立案を担う13名のファシリテーターの中には、SUSFORM-NOWでの活動計画立案を担当していた経験者が数名含まれており、その経験者がリーダー役となって、不慣れなファシリテーターたちの指導を担っていました。これまでのJICAの技術協力を通じて確実に人材が育成され、当プロジェクトの成果の拡大に寄与している様子を確認することができました。
森林管理活動や生計向上活動の計画立案は年内に終了し、その後、活動の実施、モニタリングと続きますが、村落レベルでの持続的森林管理の実現と、活動を担う人材の育成を引き続き支援していきたいと思います。

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ディエンビエン省の焼畑農業の様子。森林の伐開と火入れが、この地域の森林減少の一因となっています。

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ファシリテーター研修。村落での計画立案に先立ち、郡やコミューンから選定されたファシリテーター/普及員が、ファシリテーションスキルの研修を受けました。

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村落計画会合初日に、ファシリテーター/普及員がプロジェクトの概要を村民に説明している様子。参加者にプロジェクトの活動の趣旨をよく理解してもらうことが、今後の円滑な活動実施には重要です。

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村落計画会合の様子。どの村の会合でも女性の参加が多く見られました。

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村落計画会合において、衛星画像を元に、植林や天然更新の予定地を確認している様子。ファシリテーター/普及員が研修の成果を活かし、住民の積極的な参加を促しました。