ベトナム森林行政は大きな転換期を迎えています−森林法改正に向けて−

2016年12月16日

急速な社会経済構造の変化に直面しているベトナムにおいて、森林セクターも大きな変革が求められています。それに対処するため、森林政策の根幹となる森林保護開発法(以下、「森林法」)の改正作業が進められており、当プロジェクトも支援を行っています。
2016年12月15日、16日には、ハノイの農業農村開発省(MARD)において、MARD副大臣(Mr. Tuan)及び 国会・科学技術環境委員会副委員長(Mr. Hoang)共同議長の下、森林行政機関、関連省庁、学識経験者、ドナー機関、NGOなど約300名が参加し、改正森林法ドラフトに関する協議会(National Consultation Meeting)が開催されました。
現行森林法(2004年)の下では、大規模な植林計画が推進されベトナムの森林率は大きく向上しましたが、一方で、その間、土地所有制度の変更、気候変動問題など森林に対する新たなニーズへの対応、グローバル経済の中での木材産業構造の変化など、ベトナムの森林セクターを取り巻く状況も大きく変化しており、制定から12年が経過した現行法では対応が困難となっています。このため同法改正はMARD森林総局にとって喫緊の最重要政策課題となっています。
協議会では、森林総局から同法改正の背景・経緯及び改正法ドラフトの内容に関する説明があり、その後、質疑応答が行われました。参加者からは、「森林タイプを生産林、保全林、特別利用林と区分しているが、森林は複数の機能を有しており、そのような切り分けが妥当か。」、「森林所有者の区分が不明確。」、「国・地方含めた各関係機関の役割及び責任に関して整理が不十分。」、「科学技術に関する記述が不十分。」など多くの指摘がなされました。
当プロジェクトの宮薗チーフアドバイザーは、ドナー機関を代表してコメントし、「改正法の基本理念(特に持続可能な森林管理)と各内容を照らした時に整合性が不十分。」、「森林計画制度の充実、及び計画づくりの基盤となる森林資源データ等の情報整備の強化を盛り込んだことを評価。」などを指摘しました。
ベトナムにおける法律改正は日本と比べて時間のかかる作業です。森林法については、2015年から改正準備作業に着手し、二年近くかけてようやく改正法ドラフトが出来上がりました。今後、法務省の審査を経て、2017年10月開催の国会(National Assembly)での承認を目指しています。また、改正法が国会承認された後も、いくつかの施行令(Decree)等を整備する必要があります。
同法改正への支援には多くのドナー機関が関心を持っていますが、当プロジェクトでは、これまでJICAが蓄積してきた現場活動の成果・教訓を政策レベルにインプットする良い機会と捉え、初期の段階から改正作業を支援してきているところです。まだまだ山あり谷ありの長丁場が予想されますが、当プロジェクトでは引き続き支援を行っていきます。

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議長のToan副大臣によるオープニングスピーチの様子(写真右)。

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会議には全国から300名を超す関係者が集まりました。

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参加した国際機関を代表して、宮薗チーフアドバイザーが改正法に関してコメントしました。