ベトナムの森林行政官が来日。日本の森林モニタリングと森林情報整備について学びました。

2017年10月20日

森林管理の基礎となる森林モニタリングと森林情報整備について学ぶために、ベトナムの行政官が日本を訪れました。今回来日したのは、農業農村開発省で森林資源のモニタリングを担当する中央政府職員や地方省(日本で言う都道府県に当たります)の森林行政官です。10月10日から19日までの10日間、日本の取組状況や先端技術の活用事例などについて行政機関や民間企業にご協力いただき研修を実施しました。

ベトナムでは人工林が拡大している反面、急速な人口増加の影響により、森の回復力を上回る焼畑の拡大や天然林からの違法伐採もあり、森林の状況が大きく変化しています。また、現在、ベトナムで取り組んでいるREDD+(注)において、今後成果に対する支払いを受ける際には、その成果の正確かつ透明性のある測定が不可欠になります。このような状況の下、森林を管理する行政が、森林の情報及びその変化をより正確に把握することが課題の一つとなっています。本プロジェクトではフィンランドが支援するプロジェクト(FORMIS II)と連携し、国家レベルでの包括的な森林情報の収集・整備に向けた森林モニタリングシステム(FRMS:Forest Resource Monitoring System)の構築を進めており、現場レベルでのタブレットPCを用いた森林モニタリングの普及と整備を行っています。これまでに15地方省でタブレットPCの導入が開始され、うち4省では省全体で取組が始まりました。今後、ベトナムで同システムの普及拡大を進める上で、日本の体系的な森林管理手法とその基礎となっている森林情報システムはとても参考になります。

研修では、国レベルの森林情報の整備に係る取組みとして、林野庁が運営する国家森林資源データベース、県レベルの取組みとして、全国でも先進的にインターネットで森林情報を一般公開している福井県で森林簿や衛星画像、電子化した地理情報(GIS)の利用についての講義を受けました。関東森林管理局赤谷森林ふれあい推進センターでは官民が連携して国有林の保全と天然林の回復を試みているプロジェクトを紹介していただきました。先端技術を利用した事例として、森林の管理にドローンを導入している新潟県の(株)戸田組にも訪れました。研修員からは「特に日本の森林簿の取組みが大変参考になった」といった感想が聞かれました。

ベトナムと日本では当然のことながら自然環境や社会環境は異なりますが、各取組の主体が連携しながら進められている日本の事例が大いに参考になったようです。先に述べたFRMSの構築を進めるベトナムでは、中央と地方の連携が必要不可欠です。ベトナム国内での連携促進という観点からも、今回の研修は短いながらも中央と地方の担当職員が共に行動し、机を並べて講義を受けたことは有意義であったといえます。今後のプロジェクト活動のみならず、プロジェクトが終了した後もベトナムの状況に合わせて森林モニタリングシステムが継続・発展していくことを期待しています。

(注)途上国における森林減少と森林劣化からの排出削減並びに森林保全、持続可能な森林管理、森林炭素蓄積の増強。途上国はREDD+活動の成果に応じて資金等の経済的支援を先進国から受けられることとなっている。

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林野庁での国家森林資源データベースの講義を受ける研修員

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福井県で地理情報の書かれた地図について質問する研修員

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赤谷森林ふれあい推進センターの現場見学で、説明を受ける研修員

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新潟県の(株)戸田組の現場にて記念撮影

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戸田組でドローンを操縦する研修員

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研修ラップアップにて成果を発表する研修員