持続的な森林管理の鍵となる、省REDD+行動計画が北西部4省にて策定されました。

2017年12月27日

ベトナムでは日本の都道府県に相当する「省」が、省内の森林を管理しています。現在当国で取り組んでいるREDD+(注1)についても、各省が省REDD+行動計画(Provincial REDD+ Action Plan:PRAP)を策定し、実施することと、国家REDD+行動プログラムで定められています。これに合わせて、プロジェクトでは、北西部4省(ホアビン省、ソンラ省、ディエンビエン省(注2)、ライチャウ省)のPRAP策定を支援してきました。

一言で「北西部4省」と言っても、実際は省ごとに森林の置かれている状況や、その管理・利用に関わる人々は実に多様です。例えば首都ハノイや沿岸部都市部により近いホアビン省は産業開発が進んでおり、製紙チップや製材向けの木材生産が盛んに進められています。農業振興が盛んなソンラ省では農業開発と森林保全の両立が課題となる一方で、僻地部では昔ながらの森林と密接な関係での生活が営まれています。山間部の多いディエンビエン省では焼畑農業との共存が容易ではなく、思うように森林の回復が進んでいません。そしてライチャウ省は4省で最も豊かな森林を有していますが、近年の道路や水力発電開発が暮らしを便利にする一方で、これら開発に伴う森林伐採が懸念されています。このように、それぞれの省の現状と将来に対して、REDD+がいかに貢献できるかが問われます。

PRAPの策定にあたっては省ごとに担当チームを設置し、2016年10月にハノイで4省合同のキックオフ・ワークショップを開催した後、共通の段取りに沿って急ピッチで作業が開始されました。例えば、省の開発計画や森林保全政策のレビュー、衛星画像と現場情報を併用した森林減少要因あるいは森林回復要因の分析、それを実現するための政策パッケージ、予算計画、実施体制の検討などです。REDD+の実施が人々の生活と環境にポジティブな影響をもたらすのはもちろんのこと、予見されるネガティブなインパクトを回避し、抑制する仕組みも必要です。これらの作業は、それぞれの省が森林保全政策を改めて見直す上でも有意義でした。

また、PRAPが実現性をもった計画であるためには、人々の関心、意見、利益ができるだけ織り込まれている必要があります。従って策定の過程では省、郡、コミューン、村落の各レベルに対してコンサルテーションが行われました。関係者が多くなるほど、それぞれの置かれた立場から合意できる点、合意できない点が明確に見えてきます。森林保全には、総論では賛成だが、各論になるとまとまらない、という話はつきものです。このような議論と検討の繰り返しを経て、翌年5月には各省ともに原案が完成し、中央政府と省政府による審査を経て9月には4省ともにPRAPが正式に承認されました。

PRAPの完成を受けて、11月にはソンラ省に4省、中央政府、プロジェクト専門家等が集まり、PRAP策定の経験共有とそれぞれのPRAPを紹介するワークショップが開催されました。続けて、各省ごとにこれからのPRAPの実施を議論するワークショップが開催されています。ベトナムのREDD+実施が国全体に進む中、北西部4省がその流れを捉えて森林保全を進められるよう、今後の取り組みに期待したいと思います。

(注1)途上国における森林減少と森林劣化からの排出削減並びに森林保全、持続可能な森林管理、森林炭素蓄積の増強。
(注2)ディエンビエン省は「ディエンビエン省REDD+パイロットプロジェクト」(2012年3月~2013年9月)の支援により作成されたPRAPが2014年5月に承認されています。今回は新たにベトナム政府が作成したPRAP策定ガイドラインに合わせた改訂を行いました。

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衛星画像を元に作成した森林変化図から、ライチャウ省の森林変化を理解する。(ハノイ 4省合同キックオフ・ワークショップ)

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PRAPの実施に重要な役割を持つ住民との議論。(ソンラ省、ムンゾン・コミューン)

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様々なコンサルテーションを経て、PRAPが承認された。(ライチャウ省 PRAP最終コンサルテーション・ワークショップ)