2019年3月4日
2月25日から3月2日までの6日間、ベトナムの中央政府及び地方省(日本の都道府県に当たります)の行政官12名が、日本の持続的な森林管理及び地域資源活用を学ぶために日本を訪れました。本研修は、和歌山県や大阪府の行政機関・民間企業の方々にご協力いただき実施しました。
ベトナム国内は、多数の貧困世帯が住む山間部を中心として、生計維持のための森林伐採や農地転換などによる森林の質の低下が進んでいます。森林を持続的に管理していくためには、地域住民に代替生計手段を確保することが非常に重要です。また、山間部の主な収入源である農産物については、加工システムの整備が不十分、市場へのアクセスが限られているなどの課題があります。本研修は、日本の優良事例を学ぶことを通じて、これらの課題に対応するヒントが得られればとの狙いがあります。
最初に訪れた和歌山県田辺市では、世界農業遺産に登録されている「みなべ・田辺の梅システム」について学び、田辺梅林、梅の加工工場、備長炭を生産する窯などを見学しました。研修生は、梅、薪炭林、養蜂、草や地下水などの要素が調和した生産システムに強く感銘を受けた様子で、「ベトナムでも梅の生産・加工を積極的に進めていきたい」との感想がありました。
続いて、日本の森林・林業政策の概要や、和歌山県の紀の国森づくり税(注)の活用について学ぶとともに、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」や、企業の森づくり活動の現場を訪れました。研修生は、ベトナムの各地で森林政策に携わる現役の行政官であることから、日本の林業、木材生産・加工、土地利用や行政機構に至るまで、多岐に渡る質問をしていました。
大阪府柏原市では130年にわたる地域のぶどう生産の歴史を受け継いだワイナリーを訪れました。研修生からは、「ベトナムでも、マスコミを活用し世界各地からお客さんを呼び込む工夫を参考にしたい」との感想がありました。
最後に、研修生は、今回の研修内容で得た知見をベトナム国内でどのように活かせるかについて議論しました。農産物の加工工場の誘致、地域住民への土地の分与の促進、農業者を支援するための組織や基金の整備など、具体的なアイディアについて熱心に議論していました。
過疎化・高齢化の進む山村で放置される森林が増える日本。人口増加・過剰利用の圧力で森林の質の低下が進むベトナム。抱える課題は異なれど、両国とも、これらに対処するための新しい法律が制定・施行されるなど、森林・林業にとって大きな転換期を迎えています。今後とも両国が課題解決のための良きパートナーとして歩んでいけるよう、今回の研修がその一助となることを期待しています。