経済集中案件に対する評価結果の公表

2020年7月7日

競争消費者庁は、2020年7月7日、Honda Motor Co., Ltd(Honda)、Keihin Corporation(Keihin)、Showa Corporation(Showa)、Nissin Kogyo Co. Ltd(Nissin Kogyo)及びHitachi Automotive Systems, Ltd(Hitachi AMS)から同年4月20日に届出がなされた経済集中案件について、競争法第30条により禁止される経済集中には該当しない旨公表しました。

本公表文によれば、本件は、Keihin、Showa及びNissin KogyoがHitachi AMSと合併し、その合併後のHitachi AMSについて、Hondaが33.4%、HITACHIが66.6%の株式をそれぞれ保有するという内容のものとされています(2019年版の各社のAnnual Report又はAnnual Reviewは、HondaがKeihinについて41.35%、Showaについて33.5%及びNissin Kogyoについて34.86%の株式をそれぞれ保有しているとしています。)。
また、本公表文は、当該合併は日本において実施されるものであるものの、これらの事業者は、ベトナム市場において自動車、自動二輪、これらの部品等に関する事業活動を行っていることから、本件経済集中はベトナム競争法の適用範囲内にあるとしています。
その上で、本件は、ベトナムにおいて、市場構造を変えることなく、また、事業者がそのまま存続し、かつ、それぞれ独立して運営されることから、競争法第30条により禁止される経済集中には該当しないと評価しています。
現状における当事会社のホームページを見ますと、各社のベトナムにおける事業活動は現地子会社を通じて行われていることが窺われます。このことを前提に、日本における本件合併がベトナムの市場構造を変えずそれぞれ独立して運営されると記載されていることの背景について考えますと、本件経済集中後におけるこれら現地子会社の現状維持のほか、事業活動に関する独立性を確保するための措置(例えば、日本の「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」(平成16年5月31日公正取引委員会)の第7「競争の実質的制限を解消する措置」等を参照。)に関するコミットメントがあったのではないかと思料されます(当該想定を前提として推測される本件の概要図は(注1)のとおり。)。
なお、本件は、届出の受領(2020年4月20日)から当事会社に対する回答(同年7月1日)まで相当の期間があることから、予備評価(30日以内)を経て、正式評価(原則90日以内)が実施され、後者の期限を待たずに評価結果の通知がなされたのではないかと思われます。
ベトナムの経済集中規制では、届出がなされた案件が予備評価(競争法第36条)の段階で細則政令(Decree No.35/2020/ND-CP)第14条第2項の各号(注2)のいずれにも該当しない場合には、細則政令第14条第4項の規定により正式評価(競争法第37条)が行われることとなります。このため、仮に本件について正式評価が実施されたとの想定の下で考えますと、本件は予備評価の段階で実施可能と判断される範囲(細則政令第14条第2項)を超える性格を有すると判断されたものと推測されます。

(注1)以下の概要図は、本件の公表文、当事会社のホームページにおける子会社の情報等を基にした推測により作成したもの。

【画像】

(注2)細則政令第14条第2項(仮訳)の規定は以下のとおり。
第14条 経済集中の予備評価
2 経済集中は以下のいずれか一つに該当する場合、実施できるとされる。
a) 経済集中に参加する予定の事業者の合同市場占有率は、関連市場において20%未満である。
b) 経済集中に参加する予定の事業者の合同市場占有率が、関連市場において20%以上であり、かつ、関連市場における経済集中後の各事業者の市場占有率の値の二重の合計が1,800未満である。
c) 経済集中に参加する予定の事業者の合同市場占有率が、関連市場において20%以上であり、関連市場における経済集中後の各事業者の市場占有率の値の二重の合計が1,800を超え、かつ、関連市場における各事業者の市場占有率の値の二重の合計の経済集中前後の増加振幅が100未満である。
d) 一種類の物品・サービスの一連の製造、流通、提供の過程において相互関係を有し、または、経営分野、業種が相互に投入し合うもしくは補助しあう経済集中に参加する各事業者の市場占有率は、それぞれの関連市場において20%未満である。
<2020年10月30日に一部修正>