経済集中案件に対する評価結果の公表

2020年8月12日

競争消費者庁は、2020年8月12日、Zenith Electronics LLC(Zenith)及びLuxoft USA(Luxoft)が自動車関連の事業を行うジョイントベンチャーを米国内に設立することについて、競争法第30条により禁止される経済集中には該当しない旨公表しました(当事会社に対する評価結果の通知については同月8日に行われたとしています。)。

本件公表文によれば、Zenith及びLuxoftはいずれも米国内に本社を置き、両社によるジョイントベンチャーの設立は米国内で実施されるほか、両社はベトナムにおける事業を有していないとしています。
他方、Zenithの親会社であるLG Electronics Inc(LG)、また、完全子会社を通じてLuxoftの親会社となっているDXC Group(DXC)は、それぞれ、ベトナムにおける事業を有していることから、本件はベトナム競争法の適用を受けるとしています。
このため、本件は競争法第29条第1項第d号及び同条第5項のジョイントベンチャーの設立(2以上の事業者が共に自らの財産、権利、義務、利益を拠出して新しい事業者を設立すること)に該当し経済集中に当たること、また、当該経済集中が競争法第33条第2項に定める届出基準に該当することをもって、当事会社は、本件について事前届出を行ったものとみられます。
この届出基準について細則政令(Decree No.35/2020/ND-CP)第13条第1項は、経済集中に参加する事業者又は当該事業者が所属する連結事業者グループの総資産又は売上額等が直前の会計年度において3兆ドン(約140億円)以上の場合等において、事前届出の義務があるとしています。
本件においては、Zenith及びLuxoftのいずれもベトナムにおける事業を有していないとされていますが、それぞれの親会社がベトナムにおいて事業を有している旨記載されているため、本件は、連結事業者グループ単位でみた総資産又は売上額等において当該届出基準を充たすことになったものとみられます。

【画像】公表文から窺われる本件の概要図

公表文からは、本件ジョイントベンチャーに対するZenith及びLuxoftの出資の割合、事業譲渡の有無などの事実関係が明らかではありませんが、仮にZenith及びLuxoftともに、また、本件ジョイントベンチャーにも日本国内での売上がないものと仮定しますと、日本の企業結合規制では届出を要さない案件であっても、ベトナム競争法に基づく届出を要するといった場合が生じ得ることが想定されます。
なお、現時点において、競争法上の届出先となっている国家競争委員会は設立されていませんが、商工省は、2020年5月14日、同委員会設立までの期間における経済集中の届出や評価のプロセス等に関する文書を公表しています。当該文書については、本ホームページの「関連法令」において仮訳を掲載するなどしていますので、そちらも併せて御参照ください。