経済集中案件に関する情報提供要請実施の公表

2020年8月19日

競争消費者庁は、2020年8月19日、Indo Trans Logistics Joint Stock Company(ITL)とSouthern Logistics Joint Stock Company(Sotrans)との間における経済集中に関し、当事会社に情報提供を要請した旨公表しました。

本公表文によれば、2020年6月12日にベトナム国家証券委員会及びホーチミン証券取引所のウェブサイトに掲示された、ITLがSotransに対して有している株式所有比率を41.784%から100%に引き上げることを内容とする経済集中について、競争消費者庁は、同年8月18日、当事会社に対して情報提供を要請したとしています。

本件は、ITLのSotransに対する株式所有比率を100%とすることを内容とするものであり、ITLがSotransを統制・支配すること(細則政令(Decree No.35/2020/ND-CP)第2条第1項)となることから、経済集中(競争法第29条第1項第c号及び同条第4項)に該当するものと考えられます。

また、本公表文にも紹介されていますが、競争法第33条第1項は、同条第2項の基準(詳細は細則政令(Decree No.35/2020/ND-CP)第13条に規定されています。)に該当する経済集中について国家競争委員会に対する事前届出を義務付けています(現在、国家競争委員会は設置されていませんが、同委員会が設置されるまでの経済集中案件に関する暫定的な手続等については2020年5月14日に公表されており、本ホームページでも紹介しています。)。

この点について、本公表文は、今回の経済集中の取引価値が、2020年8月17日の取引終了時点における株価から、1兆7800億ドンを超えるものと想定される旨記載しており、本件が当該取引価値によって細則政令第13条第1項第c号の届出基準(経済集中の取引価値が1兆ドン以上である場合)に該当し、事前届出の対象となり得ることを示唆しています。

なお、競争法第44条は、経済集中規定違反行為として、事前届出の懈怠、国家競争委員会による決定前の経済集中の実施、当該決定に記載された条件の不作為等を規定しており、これらの行為は同法第80条に基づく審査決定の対象となり得ます。

旧法(2004年競争法)下での実績となりますが、競争消費者庁は、グラブ・ウーバー事件(注)など、届出が行われなかった経済集中案件について職権で調査を実施するなどしていますので、本件の公表は、このような職権探知について今後も積極的に実施していくとの姿勢を示すものと考えられます。

また、競争法第80条第2項は、国家競争委員会が違反被疑行為の実施日から3年以内に当該行為を発見した場合、競争調査庁の長は当該行為に対する審査決定を行う旨規定しており、例えば事前届出の懈怠の場合、最終的には、各当事会社に対し、その直前の会計年度の関連市場における総売上額の1%以上5%以下の罰金(競争法第111条第2項及び罰則政令(No.75/2019/ND-CP)第14条を参照。)が課され得るという制度となっています。

(注)本件は、2018年4月に旧法(2004年競争法)の下でベトナム競争当局が職権により審査を開始した事件であり、ベトナムに所在するGrab Taxi Limited Co.がUber Vietnam Ltd. Co.の資産を購入等する契約を締結したことについて、経済集中の禁止規定(旧法第18条)違反及び事前届出(同第20条第1項)の懈怠に該当するとして両社を対象に審査が行われたところです。