プロジェクト概要
プロジェクト名
(和)都市コミュニティ小児保健システム強化プロジェクト
(英)The Project for Strengthening Community-based Child Health Promotion System in Urban Areas(“SCHePS”)
対象国名
ザンビア
プロジェクトサイト
ルサカ州ルサカ郡、セントラル州カブウェ郡、コッパーベルト州ンドラ郡、北西部州ソルウェジ郡
署名日(R/D:実施合意)
2009年4月7日
署名日(MM:修正合意)
2010年9月6日
協力期間
2011年3月11日から2014年3月10日
相手国機関名
(和)保健省
(英)Ministry of Health
背景
ザンビアの乳幼児死亡率(U5MR)は、ザンビア人口保健調査(ZDHS)によると、対象人口千人当たり168(2002年)から119(2007年)に、また乳児死亡率(IMR)は、同95(2002年)から70(2007年)に改善したが、数値自体は依然として高い水準にある。その背景には、保健従事者数や保健施設数、そして政府予算の不足に加え、エイズの蔓延や貧富の格差、医療従事者を含めた知識階級の国外流出などがあり、ミレニアム開発目標に掲げられた乳幼児死亡率(U5MR)及び乳児死亡率(IMR)の目標値(63.6/1000及び35.7/1000)に向けた取り組みは決して平たんではない。
コミュニティにおける包括的小児疾患管理方法(C-IMCI=Community - Integrated Management of Childhood Illnesses)が最初にザンビアに導入されたのは1998年のことであるが、近年ドナーの後押しもあり保健省によって全国に展開されてきている。現在、同国全74のすべて郡への導入が確認されている。C-IMCIは、コミュニティのリーダーや保健ボランティアと協力し、コミュニティの住民を中心に小児の健康を維持増進しようとするものであり、そのシステムの中で重要な役割を担う保健ボランティアは、国際機関等の支援を受けた保健省が実施する研修を受けている。しかしながら、財源不足が顕著な保健省にとって、コミュニティを対象としたC-IMCIの優先順位は、マラリア罹患率が高く、保健施設へのアクセスが困難な地方の農村地域に置かれているのが実情である。人口密集、都市型貧困、生活環境の悪化、空気感染による高い疾患リスクなど、農村地域とは異なる課題、より複雑化した問題を抱えた首都ルサカ及び地方都市への、C-IMCIを軸とした小児保健政策の施行は不十分なままであった。
JICAは、1997年から2007年の10年にわたり、首都ルサカ市においてプライマリーヘルスケア(PHC)プロジェクトを実施し、ルサカ郡保健局とともにコンパウンド(都市貧困層住民居住地域又は非計画居住区域)における小児保健状況と環境衛生の改善に取り組み、保健ボランティアの可能性を最大限に引き出す効果的かつ自立発展性の高いシステムの強化に努めた。その過程でJICAは、C-IMCIをガイドラインとしつつも、それがコンパウンドのような地域で、また前述のような逆境の中で効果をもたらすことができるよう、以下の分野に係る各活動を支援するためのマニュアルなどの実践ツールを開発した。
- GMP+:乳幼児の成長測定とそのフォローアップに関する活動
- PHAST:公衆衛生、各個人の衛生に係る行動変容を促す活動
- IGA:ボランティア活動を維持促進するための収入創出活動
PHCプロジェクトは、コミュニティの参加とルサカ郡保健局、各保健センターとの協働作業を通じて高い成果を上げ、小児保健及び環境衛生に係る様々な指標の改善に寄与した。
「都市コミュニティ小児保健システム強化プロジェクト」(以下「本プロジェクト」)は、2007年以降の3年間で新たに策定された小児保健や環境衛生の政策や指針を参照しながら、前述のPHCプロジェクトで蓄積された小児保健改善手法を実効性や自立発展性などの観点から抽出し、環境が異なる他地域に展開することにより、保健省とともにその成果や課題などを分析・評価し、ザンビアにおける小児保健状況の一層の改善に寄与するものである。
目標
上位目標:
事業対象地域において、既存の小児保健及び環境衛生に係る国家指針を活用した効果的かつ持続的な予防保健サービスが提供される。
プロジェクト目標:
事業対象地域において、既存の小児保健及び環境衛生に関する国家指針を活用した効果的かつ持続的な予防保健サービスを提供するためのシステムが強化される。
成果
- プロジェクト対象地域における予防的コミュニティ小児保健促進活動の実践の成果と教訓が関係者間で分析、共有される。
- コミュニティ小児保健促進活動に係る保健省本省、州保健局、郡保健局、保健センター職員の実施能力が向上する。
- プロジェクト対象地域におけるコミュニティ環境衛生促進活動の実践の成果と教訓が関係者間で分析、共有される。
- コミュニティ環境衛生促進活動に係る保健省本省、州保健局、郡保健局、保健センター職員の実施能力が向上する。
- コミュニティを基盤とした小児保健及び環境衛生活動の持続性について保健省本省、州保健局、郡保健管理局、保健センター職員の管理能力が向上する。
活動
- 1-1
- 小児保健に係る関係者会議においてコミュニティ小児保健促進システムに関する提言を行う。
- 1-2
- プロジェクト対象郡における活動の成果を他の州・郡保健局と共有するための全国レベルのセミナー/ワークショップを開催する。
- 2-1
- ルサカ郡で選定されたコンパウンドにおいて、既存の各種指針や実践ツールに沿ってコミュニティ小児保健促進活動を実施する。
- 2-2
- 上記コンパウンドが、他のプロジェクト対象地域のモデルとなるよう、必要に応じて活動内容を見直し改善する。
- 2-3
- 既存の各種指針や実践ツールを用いて、州および郡保健局職員を対象としたコミュニティ小児保健促進活動に係る指導者研修を実施する。
- 2-4
- 指導者研修の受講者が講師となり、保健センター職員を対象とした研修を実施し、またコミュニティ保健ボランティア研修を財政的に支援する。
- 2-5
- 州および郡保健局職員を対象に、保健センターが実践するコミュニティ小児保健促進活動をモニタリング・評価・指導するための研修を実施する。
- 2-6
- 既存の各種指針や実践ツールを活用し、監督・助言活動を行う。
- 3-1
- 環境衛生に係る関係者会議においてコミュニティ環境衛生促進システムに関する提言を行う。
- 3-2
- プロジェクト対象郡における活動の成果を他の州・郡保健局、その他の関係機関と共有するための全国レベルのセミナー/ワークショップを開催する。
- 4-1
- ルサカ郡で選定されたコンパウンドにおいて、既存の各種指針や実践ツールに沿ってPHASTを実施する。
- 4-2
- 上記コンパウンドが、他のプロジェクト対象地域のモデルとなるよう、必要に応じて活動内容を見直し改善する。
- 4-3
- 既存の各種指針や実践ツールを用いて、州および郡保健局職員を対象としたコミュニティ環境衛生促進活動に係る指導者研修を実施する。
- 4-4
- 指導者研修の受講者が講師となり、保健センター職員を対象とした研修を実施し、またコミュニティ保健ボランティア研修を財政的に支援する。
- 4-5
- 州および郡保健局職員を対象に、保健センターが実践するコミュニティ環境衛生促進活動をモニタリング・評価・指導するための研修を実施する。
- 4-6
- 既存の各種指針や実践ツールを活用し、監督・助言活動を行う。
- 5-1
- 州および郡保健局において、保健活動に関連した住民組織による所得創出活動を指導し、住民保健委員会と住民組織間の調整に責任を持つ職員が特定される。
- 5-2
- ルサカ郡で選定されたコンパウンドにおいて、既存の各種指針や実践ツールに沿って、住民保健委員会と住民組織間の調整を図り、所得創出活動を支援する。
- 5-3
- 上記コンパウンドが、他のプロジェクト対象地域のモデルとなるよう、必要に応じて活動内容を見直し改善する。
- 5-4
- 既存の各種指針や実践ツールを用いて、州および郡保健局職員を対象とした所得創出活動等に係る指導者研修を実施する。
- 5-5
- 指導者研修の受講者が講師となり、既存の各種指針や実践ツールを用いて、保健センター職員を対象とした研修を実施し、またコミュニティ保健ボランティア研修を財政的に支援する。
- 5-6
- 州および郡保健局職員を対象に、保健センターが実践する所得創出活動および住民保健委員会と住民組織間の調整に関する活動をモニタリング・評価・指導するための研修を実施する。
- 5-7
- 既存の各種指針や実践ツールを活用し、監督・助言活動を行う。
- 5-8
- 州および郡保健局において、コミュニティ活動に関するレビュー会議を開催する。
- 5-9
- 保健省関係者に対し所得創出活動および住民保健委員会と住民組織間の調整を促進する活動に関する提言を行う。
投入
日本側投入
- 専門家:6名(チーフアドバイザー/保健政策1、小児保健、環境衛生1/収入創出1、保健データ分析/環境衛生2、住民能力強化/収入創出2、業務調整/保健政策2)
- 小児保健、環境衛生、収入創出の各分野に係る研修実施に必要な経費
- 各種セミナー・ワークショップ実施に必要な経費
- 小児保健活動、環境衛生活動の推進に必要な機材等の調達に係る経費
- 収入創出活動の推進に必要な物資等の調達に係る経費
- プロジェクト事務所の運営及び資機材等の調達に係る経費
- 4WD車輌4台(専門家移動用、事業対象地域の各郡における活動用)
- 現地雇用スタッフ
相手国側投入
- カウンターパート人材(保健省プロジェクトディレクター、保健省プロジェクトマネージャー、保健省各分野専門家及びシニアスタッフ、保健省及び事業対象地域各州、各郡保健局のスタッフ、コミュニティ保健ボランティア組織幹部)
- 各種研修スペース