IPeCKプロジェクトの屋台骨-ザンビア教育省ナショナル・サイエンス・センターの職員紹介(IPeCK:教員養成校と学校現場との連携による教育の質改善プロジェクト)

2018年4月11日

IPeCKプロジェクトでは、現地カウンターパートとして一般教育省(Ministry of General Education)内のナショナル・サイエンス・センター(National Science Centre、以下NSC)に勤めるザンビア人職員と協力して活動しています。NSCはザンビアの理数科教育の促進を担う機関で、理数科教育に関する調査・研究、教師教育、教材・教具の製作等を行っています。ザンビアにおける理数科教育促進の重要性から、今年(2018年)に入り課から局へと昇格し、教育省組織内での位置づけが変わりました。この昇格により、理数科教員の教授能力向上を目指すIPeCKプロジェクトの活動が、一層加速されることが期待されます。

今回は、IPeCKプロジェクトの主役である教員養成校の講師や学校現場の教員を後方から支える、NSCの職員をご紹介します。現地の教育省職員がどのようなキャリアを積み、どのような仕事を担っているのか、そしてIPeCKプロジェクトに対してザンビア側の関係者はどのような考えを持っているのかお伝えしたいと思います。

今回ご紹介するのは、IPeCKプロジェクトの実務を担うNSC副局長のシドニー・ナルべ氏と教師教育担当のベシー・テンボ氏です。お二方とも元々は学校の先生でした。長年にわたる学校現場での経験を活かし、現在はNSCの職員としてザンビアの教育を行政側から支えています。ザンビアの教育関連の行政官はお二方のように教職を経験した方が大半です。これにより、実際の教育現場の意見が教育政策全体に反映されていきます。

現在、ナルべ氏やテンボ氏はIPeCKプロジェクトに加え、様々な業務を担当しています。ナルべ氏は理数科のカリキュラム開発や現職教員の研修プログラム開発・実施全般を、テンボ氏はJICAが支援するアフリカ諸国の教員を対象とした第三国研修や、アフリカ域内理数科教育会合(COMSTEDA)の運営業務を担当しています。このように教師教育に関する仕事に日々励まれているお二方は、IPeCKプロジェクトに対してどのような考えを持っているのでしょうか?

お二方とも、自身の教員としての経験も踏まえ、教員養成校と学校現場の連携により教員の教授能力の向上を目指す本プロジェクトに期待を寄せています。ナルべ氏は、自身が教員の卵であった学生時代を回顧し、当時の教員養成課程では教科内容の授業ばかりで教授手法の授業はなかったことから、IPeCKプロジェクトが進める教科内容と教授手法を合わせた教授学的内容知(Pedagogical Content Knowledge)の普及に意義を感じています。また、テンボ氏は、本プロジェクト成功時の波及効果の長期性(養成校で実践的に学んだ教員が学校現場で学習効果の高い指導を長期にわたって行うようになること)に価値を見出しています。

しかし、IPeCKプロジェクトを成功させるための課題も感じています。教員養成校の講師と現場の学校の教員の連携をいかに深化し、互いに学びあう仕組みをつくっていくかが本プロジェクトの要になりますが、その点に関して関係者の意識をどうすり合わせていくか、これまでの活動からその難しさも実感しているそうです。

お二方とも教師教育の発展が教室での授業の質を改善し、ひいては子どもの学びを深めることにつながるとの考えから、教師教育、そして、IPeCKプロジェクトに熱意を持って取り組まれています。今回ご紹介したお二方の他にも、たくさんのザンビアの方々が本プロジェクトに携わっており、どの方も教育を通じて子どもの成長を実現するために、自ら積極的に活動されています。このようなザンビアの方々が、IPeCKプロジェクトを支え、進めています。こうした現地の方々によるオーナーシップが、IPeCKプロジェクトが進展していく原動力となっています。

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ザンビアの首都ルサカ市内に位置するNSCの本棟。ここからザンビア全土に理数科教育の輪が広がっています。

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JICAの無償資金協力によりNSCにて製作され、全国の学校に普及しているモバイルラボ。実験室のない学校でも多くの生徒が理科実験に親しんでいます。

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NSC副局長のシドニー・ナルべ氏。中等学校の元化学教員で、ザンビアでの理科教育発展の必要性を実感されています。

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NSC教師教育担当のベシー・テンボ氏。中等学校の元英語・フランス語教員。長年教師教育に携わっており、授業研究を通じた教員の職能開発に情熱を注がれています。