DSAPの取り組み1:DSAPアプローチってなあに?

2019年3月14日

世界保健機関(WHO)では、ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)の達成に向けて、すべての人が経済的な負担等なく、質の高い基礎的保健サービスを受けられることを目指しています。ザンビアでは医療費を原則無料にしていますが、1996年から2016年の20年間に平均寿命は18年長くなり(注)、急激な人口増加と高齢化や医療人材の不足などが原因で、適切な医療サービスを提供するための体制が追いついていないのが現状です。

ユニバーサルヘルスカバレッジ達成のための基礎的保健サービスマネジメント強化プロジェクト(英:Project for Strengthening Basic Health Care Services Management for Universal Health Coverage in Zambia)では、保健省と州保健局とともに、地域の状況や情報に基づいて保健活動計画の立案から実施、評価、改善について、郡保健局を技術支援していくことで、サービス提供にかかるマネジメント能力強化を目指しています。

具体的にはプロジェクトの活動対象地域であるルサカ州と南部州の4つの郡保健局で3年間の保健活動計画を作成し、実際にその運営管理を現場で支援しています。そこでプロジェクトではこの保健活動計画をDSAP(District Specific Action Plan)と名づけ、その国家指針(ガイドライン)の作成を含め支援を行いました。

DSAPは活動及びプロセス改善を目的としたマネジメントサイクルであるPlan-Do-Check-Adjust/Action(PDCA)サイクルに沿った形で作成されており、DSAPを運用していく中で行政官のマネジメント強化を図っています。郡レベルでのDSAPの運用を州および保健省が技術支援し、連携強化にも寄与しています。

DSAPの活動順序としては、まずは、Heat Map(値を色別に表した可視化グラフ)を用いて状況分析を行い、課題を分析します。次に、課題ごとに点数を付けて優先順位を付け、課題に対する介入策を考え同様に点数化します。最後に、優先順位が高かった介入策をGantt Chart(プロジェクトなどを管理するときの工程管理に使われる表)に落とし込みます。そして、実施・評価・改善を行い、PDCAサイクルを回していきます。

ルサカ州保健局の計画担当者であるムレヤ・ピーターさんは、ルサカ州の保健計画策定の中心人物です。ピーターさんは、「ルサカ州で利用できる資源は限られており、課題に優先順位を付けて取り組む必要があります。DSAPを用いて、限られた資源をどう使うか考え、実用性のある計画を作る事が重要で、それによってより大きな成果が生まれると思います。計画策定は3年毎ですが、1年毎に評価し、改訂しています」と話します。

そして、「我々は州保健局として郡保健局の活動を支援していく必要があります。保健省とも協働しながら、郡の活動を支援・モニタリングしていきたい」と語りました。

カロモ郡保健局の計画担当者であるカラルカ・ヌテンワさんは、DSAPに基づき郡保健計画策定を進めています。カロモ郡での健康課題の一つには、保健基盤の脆弱性として検体搬送システムが挙げられます。

「DSAPの仕組みは我々にとって郡保健計画策定能力の強化に役立っています。カロモ郡ではDSAPにならって優先順位付けを行った所、バイクの保守点検、人材開発(臨床研修など)、結核検体搬送の3つが上位に挙がりました。例えば、バイクの保守点検研修により、点検が施されず使用不可になるバイクが減り、検体搬送に関わる指標を改善する事が出来ました。DSAPの手順を回していく中で、検体搬送に関わる機能が改善し、郡全体の保健基盤の強化につながったと言えます」と話します。

【画像】

ルサカ州保健局のムレヤ・ピーターさん

【画像】

カロモ郡保健局のカラルカ・ヌテンワさん