2011年7月20日
7月17日から20日
隔年で行われているIAS(International AIDS Society)会議。今年は5000人以上の参加者のもとローマで開催されました。今回の目玉は何と言っても「予防のための治療Treatment as prevention」。HIV治療自体が感染予防の有効な手段であることを証明する研究結果が発表され、今後数年間でHIV対策がARV(治療薬)を用いた予防(感染者への早期治療薬投与、予防内服等)により重点を置く方向にシフトしていくことが強く示唆されました。またこの研究結果は国連が新たに定めた目標である2015年までに1500万人にHIV治療を(15 by 15)にも影響を与えたといわれています。
この会議でプロジェクトのオペレーショナルリサーチの結果をまとめた抄録三部がポスター発表として認められ、保健省カウンターパート二名と専門家三名が出席しました。
学会の風景
発表ポスターを前にしたカウンターパートと専門家
以下、今回の会議の発表の中で特に重要と思われるものを紹介します(一部、第三回国際小児HIVワークショップ〈7月15〜16日、ローマ〉の内容を含む)。
ずばり今回の会議の目玉。9か国で行われた無作為研究。CD4値350−550でHIV治療を開始することによりHIVに感染していないパートナーへの感染リスクが96%減少という結果。HIV治療による感染予防の効果が証明されたこととなる。その一方で当研究の平均観察期間は1.7年と比較的短いことに留意する必要あり。
早期治療開始(CD4値350−550で治療開始)により重症疾患への罹患率(特にextrapulmonaryTB)が40%減少することが上記HPTN052 studyによって証明された。しかしCD4値250で治療を開始した群と比較し死亡率、重症細菌感染症及び肺結核の発症については有意差なし。
予防のための治療に関して今回の会議の中で複数のセッションがもたれた。科学的な根拠が確立していく中、それらをどのように現場のサービスに落としていくかが問題。HIVに未感染のパートナーを持つ感染者に対し治療を開始しないのは倫理的に問題があるという声が上がる一方で、公衆衛生上の便益のみに注目し患者自身に治療を強制することはできないという声も。今後WHOが有識者の意見を元に治療及び予防としてのARVに関するガイダンスを作成。