monthly Jica 2006年4月号

特集 JICAの国内事業 伝えたい、ニッポンの知恵 〜市民社会が支えるゲンバ最前線

Youth Invitation Program
市民がつくる交流プログラム in 青森

「交流を通じた人づくり」がキーワードの市民参加型国際協力「青年招へい事業」。昨年、青森県内で行われたプログラムは、一般市民が企画から実施まですべてを担った。アフリカの青年たちとの交流は、青森の人々に何を残したのか。

一般市民がプログラムを企画

青森県出身の青年海外協力隊OB・OGによって設立された青森県青年海外協力協会(AOCA[アオカ])では、14年ほど前から東北地方で行われる青年招へい事業の「地方プログラム」(左下参照)を実施している。昨年夏のプログラムでは、初めて一般から公募したメンバーによる実行委員会をつくり、彼らが企画から運営のすべてを取り仕切った。

約1週間、青森県に滞在したのは、アフリカのフランス語圏19カ国から来た女性教員22人。その2カ月ほど前の4月29日、彼女たちを迎えるために自ら名乗りを上げた28人からなる実行委員会は初の会合を開き、それぞれの役割を確認していった。

「委員会全体の打ち合わせは全部で4回行いました。あとはメーリングリストで連絡し合ったのですが、メールの数は全部で480件を超えました」と実行委員を務めた相馬多一郎さんは話す。会議やメールでやりとりを続けるうちに、委員の間には彼女たちに早く会いたい気持ちが高まっていった。

意見交換で広がる世界

【写真】

合宿セミナーの交流パーティーで「ねぶた囃子」を踊る参加者たち

6月27日の夕方、青森駅に降り立った民族衣装の女性たちを迎えたのは、委員会が用意した「Bienvenue a AOMORI(ようこそ青森へ)」の横断幕。ホテルでの歓迎会では、委員がそれぞれフランス語で自己紹介を行った。実は、委員の中にフランス語のできる人がいて、ほかのメンバーに教えていたのだ。

翌日からは、三内丸山遺跡のほか、教育に携わる彼女たちに配慮して青森市立浪岡北小学校や弘前大学教育学部の見学・交流ツアーを行った。セネガルの協力隊OGで、当プログラムのコーディネーター役を務めた葛西真琴さんは、「女性教員たちには、常に数人の委員が同行していました。あちらこちらで見られる笑顔を見て、皆さん(こういう交流が)好きなんだなと思いました。彼女たちも『心を開いて接してくれる』と喜んでくれました」と語る。

一番盛り上がったのは合宿セミナーだ。教育分野で働く人を中心とした38人の県民が、彼女たちと3日間寝食を共にした。バレーボールを楽しみ、互いの教育事情などについて意見を交換した参加者からは、「今まで知らなかったアフリカの教育の実態を聞くことができた」「多くの考え方、価値観を学ぶことができた」などの声が寄せられた。

アフリカ女性教員たちが去った後に残ったのは、このプログラムを作り上げた人たちの間に生まれた友情だ。「今年の夏もアフリカから青年たちを受け入れるので、また新たに実行委員を募集しようと思っています。こうした活動を青森の地域おこしにもつなげていけたらいいですね」と話すAOCA会長の高野忠裕さんは、今年の準備に今から余念がないようだ。

AOCAの青年招へいの記事はこちら:
http://homepage3.nifty.com/aoca/news/seisyo.htm

青年招へい事業とは?

「青年招へい事業」とは、開発途上国の青年たちが日本に招へいされ、約1カ月かけてさまざまな研修や交流行事に参加するJICA事業の一つだ。来日した青年たちは、まず日本の全体像を理解するために文化、経済、歴史、日本語などを学び、その後約1〜2週間、「都内プログラム」と「地方プログラム」に参加する。基本的に、「都内プログラム」では、東京近郊で特定分野の講義や研修、関連施設を視察するほか、日本の青年と2泊3日を共にして意見交換などを行う「合宿セミナー」に参加。また「地方プログラム」では、日本各地で特定分野に関係した日本人との交流や講義、研修を受けるほか、一般市民との交流を深める2泊3日の「ホームステイ」を体験する。そして最後は全プログラムを振り返って評価し合う、という流れだ。

「合宿セミナー」や「ホームステイ」はもちろん、日本の町を散策しながら電車の乗り方や買い物の仕方など実用的な日本語を教える「ワン・デイ・ボランティア」への市民の参加を、JICAは広く募っている。

詳細:http://www.jica.go.jp/activities/seisho

JICA & Citizen Participation
JICAと市民をつなぐ国際協力推進員

市民との連携強化を図るため、JICAは各都道府県に国際協力推進員を配置している。青年海外協力隊などの経験を持つ推進員56人が、その経験を生かして、各地に国際協力の輪を広げようと奮闘中だ。

「静岡を『国際協力』の日本一にしたい」
静岡県 大滝智子さん

【写真】

静岡市立大谷小学校で出前講座を開く大滝さん。6年生の前でODAや途上国の子どもたちの暮らしなどについて話した

私たち日本人の生活は途上国の人々と深く関係した中で成り立っていて、お互い助け合って生きていかなければならない—中国で広告デザインの指導をした大滝さんが国際協力推進員を志したのは、青年海外協力隊を経て抱いたそんな思いを故郷、静岡県の人たちに伝えたいと思ったからだ。

JICAと県民のパイプ役として活動する大滝さんが今最も力を入れているのは開発教育。開発教育の実践者が年々増加傾向にあるほど、静岡県には国際協力に関心の高い人が多く、具体的な実践例を求める声が増えているそうだ。

そこで、一昨年まで1コースだった「開発教育指導者研修」を県民のさまざまなニーズに合うように、昨年から初級編と中級編の2コース制にした。そのほか、途上国の現状を知り、国際協力の必要性を広く知ってもらう「JICA国際協力出前講座」のアレンジなどで県内各地を走り回る毎日だ。

「意外と知られていませんが、バイク、ピアノ、お茶、ミカンなど静岡県には116個の『日本一なもの』があります。今後『国際協力』が117番目の日本一になれるよう、人との出会いとつながりを大切に活動していきたいと思っています」

「高まる関心を大きなうねりへつなげたい」
徳島県 松村幸江さん

【写真】

3月末〜5月放送のラジオ局「FM愛媛」の番組収録で協力隊時代の活動経験について話す松村さん(左)

上勝町の地域おこしが途上国の農村開発の参考事例となったり、JICAの草の根技術協力事業に自治体が参加したりと、国際協力への関心が高まりつつある徳島県。その高まりをさらに盛り上げようと取り組むのが国際協力推進員の松村さんだ。青年海外協力隊としてジンバブエで建築物の設計を指導した後、さまざまな形で国際協力にかかわり昨年推進員になった。

長年国際協力に携わってきた松村さんにとって県民の関心は「まだまだ低いほう」だと言う。だがようやく芽を出し始めた今、これを大きなうねりへつなげたいと、さまざまな活動を企画・実施している。

その一つが今秋開催予定の「JICAひろば徳島『心と心・世界をつなぐJICAボランティア—青年海外協力隊—』(仮称)」。JICA事業に関する講演や隊員活動報告、民族音楽・料理の紹介、写真展などを企画している。「こうしたイベントをきっかけに関心を高め、厳しい生活環境の中でも一生懸命生きている世界の人々の役に立つ活動を、多くの県民に経験してもらいたいですね」。

※ 地域おこしの優良事業として注目される「彩(いろどり)」事業。上勝町で採れる草木や花々を日本料理に添える「つまもの」として商品化した事業で、途上国の参考にと昨年JICAは、これを題材にしたマルチメディア教材を開発した。

国際協力を担う市民たち

連携が希薄といわれがちな「官と民」だが、JICAはさまざまな形で国際協力にかかわる市民との対話機会を設け、連携に向けた関係づくりを積極的に進めている。

国際交流協力実践者全国会議

近年、在住外国人の増加などに伴い日本の地域社会に密着した国際交流・協力のニーズが増える一方、財政難などの理由で各地方自治体の対応は遅れ、ニーズに対する活動自体が地域に広く浸透していない。その打開策を探る手段として2003年に「国際交流協力実践者全国会議」が開催された。各地の国際交流協会やNGOなどさまざまな立場で国際交流・協力に携わる実践者が全国から集まり、活動の質向上や社会への発信強化に向けた議論を展開した。

会議を支援したJICAはこれを通じて地域ごとの問題把握などに努めてきた。3年にわたった会議は昨年終了したが、JICAは全国規模のネットワークを踏まえつつ、国内機関を中心に地域の現場レベルで多方面の実践者とともに活動を進めていく方針だ。

詳細(第3回のみ):http://www.mia.gr.jp/zenkoku/report.html

NGO-JICA協議会

草の根技術協力事業をはじめ、JICAはNGOとの連携事業を積極的に進めている。2001年に始まった「NGO-JICA協議会」はその名の通り、年4回、NGOとJICAが連携強化のために協議する場。意思疎通の機会が少なかった両者が一堂に会して、パートナーとしてより効果的な国際協力の実施を目指して協働し、国際協力への市民の理解と参加を促すのが目的だ。NGO側は関東、関西、中部地方のネットワークNGOの代表者が、またJICA側は国内事業部ほか関係部署の職員が多数参加する。

さらに04年からは協議会を踏まえた地域会合も開催。福島会合をきっかけに、東北のNGOを対象とした「NGOマネジメント講座」が行われるなど、地域での新たな動きへと広がりつつある。

詳細:http://www.jica.go.jp/partner/ngo_meeting/index.html

JICA筑波サポーターズクラブ

研修員が日本の正月を体験する「新春のつどい」で安来節(やすきぶし)を披露するなど、JICA筑波の事業でひときわ目立つ地元市民の姿。そこには市民の国際協力を応援する「JICA筑波サポーターズクラブ」の存在がある。

クラブは、市民との間にネットワークをつくり市民による国際協力を推進していこうと2005年3月に発足。「研修員と交流したい」「主婦でもできる国際協力はないか」。きっかけはJICA筑波に寄せられるそんな市民の声だった。現在のサポーターは4歳の子どもから70代までの老若男女合わせて約180人。この輪をさらに広げ市民とのつながりを深めるため、JICA筑波では随時サポーターを募集している。

※どじょうすくい踊りで全国的にも有名な島根県の民謡。

詳細:http://www.jica.go.jp/branch/tbic/tpl/event.html