monthly Jica 2006年9月号

特集 NGOとJICA “草の根”を支え“草の根”を支えるパートナーシップ(4/4ページ)

NGO & JICA
相互理解と意識改革に向けて

JICAは、国際協力のパートナーとしてNGOとの連携による援助効果を一層高めていくために、実務者レベルでの相互理解と意識改革に向けた取り組みを積極的に進めている。そのメニューは、定期会合や研修、NGO活動のサポートなど多岐にわたる。

ここでは、連携のあり方・課題を議論する「NGO-JICA協議会」と、実務者レベルでの相互理解を深め、信頼関係・ネットワークを構築する「NGO-JICA相互研修」の役割と具体的な活動を紹介する。

<Part.1> より良い連携に向けた関係づくりの場「NGO-JICA協議会」

NGOとJICAのより良い連携を目指して、四半期に一度開催している「NGO-JICA協議会」。対等なパートナーシップのもと、率直な意見が飛び交う対話の場は、相互理解を深める有効な機会となっている。

年20回以上の会合

JICAとNGOが連携することで、一層効果的な国際協力を実施するとともに、そうした活動に対する市民の幅広い理解・参加を促進しようと、JICAとNGOは2001年から「NGO-JICA協議会」を3カ月に一度開催し、情報交換・相互理解に努めている。NGO側からは(特活)国際協力NGOセンター(JANIC)、(特活)名古屋NGOセンター、(特活)関西NGO協議会※1の代表者が、JICA側からは市民参加協力を担当する国内事業部をはじめ、企画・調整部や地域部など関係部署の職員が出席する。また、外務省や国際協力銀行(JBIC)、上記以外のNGOの関係者のオブザーバー参加も可能だ。主な開催場所は東京だが、名古屋や大阪など地方開催の際は、地域のNGOやJICAの各国内機関からも参加者が集う。

協議会は基本的に各小委員会からの「報告の部」と、両者が検討したいトピックに関する「協議の部」で構成され、最近では4月に東京・広尾にオープンしたJICA地球ひろばの役割、地域NGOとJICA国内機関の連携、中部地域の多文化共生の現状と課題など幅広い内容が議題として取り上げられている。

協議会には以下の3つの小委員会が設置されている。1)草の根技術協力事業をはじめとしたNGOとJICAの連携事業全般の、主に制度面を議論する「NGO-JICA連携事業検討会」、2)事業評価を通じて情報や知見を共有し、互いの事業または連携事業のより効果的な計画・実施・評価に向けた教訓や提言を打ち出す「評価小委員会」、3)国際協力への市民の理解・参加の促進に向けて相互理解を図りながら、効果的な取り組みを検討する「開発教育小委員会」。小委員会ごとに双方の担当・関係者が定期的に集まって、より具体的な話し合いを進めている。こうしたJICAとNGOが集う場は、年に20回以上に上っている。

※1 これら3つのNGOは大小さまざまな日本各地のNGOを束ねるネットワークNGOであり、JANICには70団体、名古屋NGOセンターには44団体、関西NGO協議会には28団体がそれぞれ会員として加盟している。

【図表】NGO-JICA協議会における各小委員会の位置付け

NGOがJICAに77項目の提言

では実際にどのような議論が展開されているのか。

月に一度のペースで開催され、今年9月で69回目を数える「NGO-JICA連携事業検討会」※2。第30回を過ぎたころ、NGO側が、常に議論の中心となってきた連携事業の実務的な改善を求めて、「開発パートナー事業」※3などにかかわった経験を持つNGOへアンケート調査を実施し、その結果を以前にNGO側が挙げた提案事項に加え、03年、NGOからの統一的な提言として「草の根技術協力事業 77の論点」をJICAに提出した。

77項目に及ぶ提言の中身は、事務処理、会計管理、募集要項・実施の手引き、連絡・報告体制、連携のあり方、管理体制の6つの視点で整理され、「事務処理の簡素化」「経費精算方式の明確化」「評価基準の見直し」「JICA内連絡先の一本化」といった多岐にわたるNGO側の率直な意見がそのままの形で伝えられた。これに対してJICAは、検討会での意見交換を踏まえながら一項目ごとにNGO側に説明。事務処理や精算方式などすぐに対応できない中長期的な課題については、引き続き改善に向けて前向きな検討に努めており、その進捗状況は検討会のほか、JICAのホームページ「草の根技術協力事業 77の論点」でも報告している。

プロジェクトレベルでは、制度上の課題を実質的に解決していくことは難しいこともある。だが協議会ではどんな問題についても互いの理解が得られるまで率直に徹底的に話し合う。JICAもNGOも、それこそが連携効果の拡大に向けて相互理解を深める有効な手段であると考えている。

※2 協議会が始まる前の1999年から実施している。

※3 途上国の住民に対する草の根レベルのきめ細やかな援助を実施する方法として、経験やノウハウを持つ日本のNGO、地方自治体、大学などに委託して行うJICA事業。2002年からは「草の根技術協力事業」として実施。

<国内でのNGOとJICAの連携事例 I>
国際理解教育のための新しい教材と実践方法を伝える

子どもたちの「考える力」をはぐくむ教育の一つとして国際理解教育や開発教育に対する関心が高まっている。そんな中、愛知県で国際理解教育や開発教育がどう理解され取り組まれているかを把握するため、2003年、JICA中部国際センターと愛知県内のNGOや教育委員会、大学などが集まって研究会を立ち上げ、県の全小・中・高等・養護学校にアンケート調査を実施。約45%に当たる755校から解答が得られ、「国際理解教育に関する教材や情報が少ない」との意見が多いことが分かった。

その結果を踏まえ、JICA中部は、国際理解教育の研究実績を持つ(特活)NIED・国際理解教育センターや、地域のNGO関係者、教員、青年海外協力隊OB・OGなどと協力し、06年3月、各学校で利用できる教材として『教室から地球へ—開発教育・国際理解教育虎の巻〜人が育ち、クラスが育ち、社会が育つ〜』を作成した。発行後、「具体的な使い方を知りたい」との声が多く寄せられ、JICA中部は8月2、3日に、「使い方講座」を開催。予想を上回る70人以上が参加した。本書には、人権や異文化理解など9つのテーマに関するモデルプログラムとともに、継続的に実践できるカリキュラムが紹介されている。購入(税込2,000円)に関する問い合わせは東信堂(TEL:03-3818-5521)まで。

【関連リンク】
JICA中部ホームページ
JICAプラザ 2006年9月第10弾「教室から地球へ 開発教育・国際理解教育虎の巻」使い方講座

<Part.2>有効な連携に向けて互いを知る「NGO-JICA相互研修」

有効な連携を図っていくために相互理解を深める「NGO-JICA相互研修」が今年で9回目を迎える。日本と途上国で寝食を共にし、課題の探求に取り組んだJICAとNGOの若いスタッフたちは、研修後、培った知見やネットワークを生かして、組織の改善や連携事業の実施につなげている。

相互理解・課題探求を目指して

【写真】

国内研修の初日、JANICを訪問し、団体の成り立ちや活動、組織体制について山崎唯司理事から説明を受けるJICAの参加者(2005年度)

互いをよく知ることなくして有効な連携はできない—「NGO-JICA相互研修」は、JICAとNGOの連携事業が本格化する以前の1997年、“連携の試み”として、JICAと(特活)国際協力NGOセンター(JANIC)の共催で始まったものだ。毎年一つの研修テーマを設定し、JICAとNGOの若手・中堅スタッフ10〜30人が、2泊3日の国内研修と約10日間の海外研修を通じて相互理解、課題探求に努め、有効な連携の可能性を探る。これまで延べ250人が参加した。

研修のテーマや構成は、コースリーダーを務める磯田厚子・日本国際ボランティアセンター副代表/女子栄養大学教授を中心とした、JICAとNGOの代表約10人からなる検討委員会で協議して決められる。昨年は「人間の安全保障」、03・04年は「自立発展性」がテーマだった。

国内研修は、まずJICAの参加者がNGOを、NGOの参加者がJICAを訪問し、職場環境や活動理念、事業実施の手順など相手の仕事ぶりを知ることから始まる。その後、テーマに関連する講義やパネルディスカッション、プロジェクト紹介などを経て、グループワークで意見交換し、共通点や相違点、改善点を見いだす。深夜まで議論が及ぶこともしばしばあるそうだ。

海外研修では、国内研修の成果を踏まえてプロジェクトを視察し、日本人やその国の関係者、住民などに聞き取り調査を行う。昨年フィリピンを訪れた参加者は、自分の目と足を使って人間の安全保障の実践方法などを確かめ、各自の活動や能力の改善・向上へのヒントや教訓の体得に努めた。

研修の成果を業務に生かす

【写真】

海外研修では、(特活)草の根援助運動の「フィリピン農村再建運動の沿岸資源管理プロジェクト」とJICAの「TESDA女性センター強化プロジェクト」を訪ねた(05年度)

「NGOとJICAの連携がなぜ必要なのか。人間の安全保障の視点はそんな問いを私に投げ掛けるものでした。研修で自分の開発への姿勢を見つめ直し、“連携”というものを具体的な行動につなげていくための課題が明確になりました」。昨年参加した「地球共育の会・ふくおか」の椿原(つばきはら)恵さんは研修の成果をこう話す。椿原さんは、開発教育のNGOとして、教育活動に「人間の安全保障」の視点を取り入れることで、開発教育と開発協力の連携の可能性と意義を探るために参加を決めた。「国内で活動することの多い私たちはJICA関係者と本音で語り合う機会が意外と少なく、同じ思いを持って取り組んでいてもなかなか実感できません。研修ではそれを実感することができ、これこそが連携の第一歩だと思いました」。

04年に参加したJICAの内川知美さんは、当時、草の根技術協力事業の制度改善や募集選考を担当していた。参加の目的は、プロジェクト選考の評価項目の一つである「自立発展性」に対する知見を深めて選考に役立てること。研修後は「『対象者の主体性』『柔軟な対応』など自立発展性に不可欠な項目を実践していくことがいかに難しいかを自分の目で確認できたことで、より現実的な視点を持って選考できるようになりました」と実りを語る。

そして最近は、個人の学びに終わらせず、研修を自分の組織の改善に役立てたり、具体的な連携事業の実施につなげようという意識が参加者の間で高まっている。

現在、自然環境保全分野のプロジェクトを担当している内川さんは、現地で活動する国内外のNGOにも気を配り、広い視野でプロジェクトを見るように努めている。「NGOと直接関係しない部署の職員の中には、同じ地域・分野・目的で活動するNGOの存在に気付かずに、実はお互いにとってメリットのある連携の可能性を見落としている人もいるのではないかと感じています。相互研修に参加できる職員は限られているので、NGOとの連携の大切さについて、私なりに同僚にも広めていければと思っています」。

また「地球共育の会・ふくおか」では、椿原さんが研修で習得した「人間の安全保障における開発教育NGOの役割」を踏まえてカンボジアでワークショップを行った。それをもとにカンボジアと日本の子どもたちが「自分で意志決定できる力」を伸ばせるようにと、開発教育教材「子どもたちが伝えるカンボジア」をJICAと連携して作成。カンボジアの子どもたちが自分を見つめ表現した色や大切なものの写真を題材にした教材の作成プロセスを開発教育活動の新たなモデルとして提示した。「それでも研修の学びを実践に結び付けていくことは容易でない」と椿原さんは、修了者向けのフォローアップ研修を提案している。

「NGO-JICA相互研修」は、JICAとNGO双方の参加者が、自らを振り返り、気付き、学び、他を知るという、連携する上で必要不可欠な要素を体得する研修となっている。

<国内でのNGOとJICAの連携事例 II>
NGO、大学、JICAが連携して講座を開設

JICA四国は今年3月、全国に先駆け、愛媛、香川、徳島、高知、鳴門(なると)教育大学の国立大学法人5大学と国際交流分野の連携協力に関する覚書を締結し、四国地域のNGOの協力のもと、学生の国際理解を図り、国際協力の舞台で活躍できる人材の育成を目指す。

すでに愛媛大学では昨年前期15回にわたって「地域発!国際協力論」と題する講座が開講され約300人が受講。徳島大も今春、同講座を開設し、香川大では今秋、高知大では9月と2月の集中講座開設に向けて準備が進められている。

講座の内容の企画や講師の人選を行うのは、四国のNGO25団体が加盟する四国NGOネットワーク。JICA四国や大学も施設提供や一部経費を負担するなどしてバックアップする。地元の国際協力NGOやJICA四国の職員などが講師としてそれぞれの活動を紹介することで、学生たちに国際協力をより身近に感じ、関心を高めてもらうことが狙いだ。

愛媛大学で、日本のODAに関する講義を担当したJICA四国の染井耕一さんは、「四国では国際協力への関心はまだ低いが、受講後『自分も何かやってみようと思った』という前向きな意見も少なくなかった」と講座の影響力に期待を寄せる。

JICA四国は同講座を通して、今後もNGOや大学と連携して地域の国際協力の拠点づくりに役立つ事業を意欲的に展開していく方針だ。