monthly Jica 2007年3月号

特集 開発教育/国際理解教育 世界とのきずなが育てる“生きる力”(4/6ページ)

TRAINING for Teachers(開発教育指導者研修)
地域と連携してつくる開発教育指導者研修

主に学校教員を対象に、開発教育・国際理解教育の担い手の育成を目的とする「開発教育指導者研修」。JICAの国内機関が、地域のNGOや教育委員会、国際交流協会などと連携して、開発教育を効果的に実践するための手法を学ぶ研修の機会を提供している。中でも、JICAと地域のリソースをフルに生かしたJICA中部の研修は、より高い波及効果を目指して、独自の発展を遂げている。

成果をより広く共有するために

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上級編の研修には、小中高・特殊学校の教員のほか、自治体や教育委員会、NGOの関係者、青年海外協力隊経験者、大学生などが参加し、年代や組織を超えた幅広いネットワークが生まれている

2007年2月4日、愛知県名古屋市で開かれた「開発教育・国際理解教育 実践報告フォーラム」の会場では、中部地域の教員など約100人が、発表者の声に熱心に耳を傾けていた。発表者は、06年6月から行われてきた「開発教育指導者研修(上級編)」の参加者たち。研修の成果を生かした学校現場での実践や、その評価・改善のプロセスを報告し、共有することが目的で、フォーラム自体がこの研修の締めくくりでもある。

JICA中部の開発教育指導者研修は、初級編、中級編、上級編に分かれ、初・中級編は、愛知、岐阜、静岡、三重の中部4県と名古屋市の国際協力推進員※が中心となって企画・実施される初心者向けの1日完結型プログラムで、開発教育実践者のすそ野を広げることが目的だ。

一方、上級編は、初・中級編経験者や、開発教育に積極的に取り組んでいる人が対象で、各地域の核となる開発教育のリーダーを育成することを目指している。JICA中部の研修の特徴は、1泊2日で行われる全4回の連続講座と「教師海外研修」との組み合わせであることと、(特活)NIED(ニード)・国際理解教育センター(以下NIED)と共働で企画・実施していることだ。

41人が参加した06年度は「Better Quality of Education(BQOE、よりよい質の教育)」をテーマとし、6月に開かれた第1回では、開発教育の目的とBQOEの視点から開発教育の成果や課題を振り返り、7月の第2回は人権教育と環境教育を事例に参加型学習を体験した。その後、参加者のうち10人の教員が「教師海外研修」でマラウイを訪れ、現地の社会・教育事情やJICAの事業を視察。8月の第3回は、マラウイでの体験や題材を用いたプログラム作りに取り組み、それを2学期に各学校で実践する。その実践を評価し、成果と課題を共有する第4回が2月3日に行われ、翌日の実践報告フォーラムで一般に発表された。

JICA中部の市民参加協力調整員、清水治代さんは「中部では04年から研修をNIEDに委託し、今のような形になりました。それまでは、教師海外研修も指導者研修も各参加者とその周辺での学習・共有にとどまっていましたが、両研修を組み合わせることで、海外研修の知識・経験や成果を、参加できなかった人も共有・実践でき、さらにフォーラムで、より多くの人に還元できます」と説明する。また、開発教育が専門のNGOであるNIEDに委託することで、JICAにないリソースも活用でき、内容に深みのある高質の研修が実施できるという。研修参加者からは「知識や手法を身に付けるだけでなく、同じ志を持つ人と情報交換でき、ネットワークができるのはとても有意義」と高く評価されている。

※ 市民の国際協力への理解と参加を促進するため、自治体が実施する国際協力事業の活動拠点に配置され、JICA事業の支援、広報・啓発活動の推進、自治体との連携促進などの業務を担う。青年海外協力隊・日系社会青年ボランティアの経験者が務める。

地域との連携から生まれる新たな試み

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2006年7月31日〜8月13日、教師海外研修でマラウイを訪れた中部地域と長野県の教員10人は、現地の学校で日本文化を紹介しながら子どもたちと交流したり、市場や村の様子、JICAのプロジェクトなどを見学した(写真提供:平成18年度教師海外研修プログラム参加者)

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教師海外研修の参加者がマラウイで集めた題材をもとに作られた「マラウイBOX」。2学期に各学校でこの教材を使った授業が行われた。このほかにも「貧困とエイズ」「マラウイと日本の同一性と多様性」などのテーマで教材が作成された

なぜJICA中部でこのような研修が発展してきたのか。それは、国際理解教育・開発教育の情報提供・人材育成を目的に01年2月から行われている「国際理解教育セミナーinなごや」の影響が大きい。

02年度に全国の小・中学校で「総合的な学習の時間」が導入されるのを機に、学校、NGO、地域社会が連携して国際理解教育・開発教育に取り組む方法を模索するため、(財)愛知県国際交流協会、(財)名古屋国際センター、(特活)名古屋NGOセンター、NIED、(有)フェアトレーディング、JICA中部の6団体で実行委員会が形成された。当初は年1回のセミナーの企画が目的だったが、毎月集まって議論を重ねるうちに、中部地域の開発教育をより効果・効率的に実施していくためのさまざまなアイデアが生み出された。その中で開発教育指導者研修が発展したほか、開発教育・国際理解教育の教材集『教室から地球へ 開発教育・国際理解教育虎の巻』や地域最大規模の国際交流・協力イベント「ワールド・コラボ・フェスタ」など、中部地域独特の連携事業が実現している。

すでに07年度の研修の企画も進行中で、今年の海外研修は、中部地域にブラジル人とフィリピン人が多く住んでいる実情を踏まえ、ブラジル・フィリピンを訪問する予定だ。

「JICAの役割は、開発教育を実践する先生方のお手伝い。今後は、研修の波及効果を高めるため、教員間のネットワークを広げると同時に、教育委員会との連携を強化していきたい」と抱負を語る清水さん。特に在住外国人が急増し、多文化共生が大きな課題である中部では、地域の実情に即した開発教育の実践者を養成する研修のニーズはますます高まるだろう。