monthly Jica 2008年5月号

特集 元気なアフリカ Part2 新たな成長へのチャレンジ

PARTNERSHIP in Africa(アフリカ)
アフリカで拡大するパートナーシップ

【地図】アフリカ豊富な天然資源を有し、民間投資が拡大しつつあるアフリカ。近年、資源の確保や「企業の社会的責任(CSR)」などを目的にアフリカに進出する日本企業も増え始め、政府と企業が連携して地域開発や人材育成などを支援する動きが生まれている。マダガスカル、南アフリカ共和国、ケニアで先駆け的に行われているパートナーシップの事例を紹介する。

Madagascar(マダガスカル)
地域の発展につながるニッケル開発を

鉱山開発と官民による港湾整備

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ニッケルが大量に眠るアンバトビー鉱山(写真提供:住友商事株式会社アンバトビー・プロジェクト部)

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アンバトビー・プロジェクトでトアマシナに建設する精錬プラント完成予想図(写真提供:住友商事株式会社アンバトビー・プロジェクト部)

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コンテナを積み出すトワマシナ港の埠頭。現時点で、貨物の処理能力は限界に達している(写真提供:JETRO)

1キロ当たり10ドル前後で推移していたニッケルの価格が、ここ2、3年で急騰している。開発途上国の発展などに伴う需要拡大に供給が追い付かず、2007年には一時5倍にも跳ね上がった。レアメタルの代表的な金属であるニッケルは、ステンレスや耐熱・耐食高合金、電池材料、電子材料と用途が多岐にわたり、現代人の生活に欠かすことのできない素材だ。資源の獲得競争が激化する中、その安定的な確保のために、先進各国は今、特に未開発の資源が豊富なアフリカに熱い視線を注ぐ。

日本も“官民連携”でアフリカの資源開発に乗り出している。その舞台は、良質なニッケルやコバルトなどが眠る島、マダガスカルだ。

07年8月、首都アンタナナリボ東部、中核都市ムラマンガ近郊のアンバトビーで「アンバトビー・プロジェクト」が始まった。このプロジェクトは、日本の住友商事株式会社と、カナダ・韓国の3企業共同のニッケル開発事業だ。鉱山の寿命はおよそ27年。ニッケルの鉱石から地金までの一貫生産体制を築き、2010年後半にはニッケルメタル6万トン、コバルトメタル5600トン、副産物の硫安※19万トンを生産。2013年初頭のフル操業を目指す。全生産物からニッケルメタルの半分(最大で年間3万トン)が、日本の大手ステンレス・鉄鋼・特殊鋼メーカー、電池メーカーなどへ販売される予定になっている。

資源の乏しい日本にとって、世界有数のこのニッケル開発事業は、長期安定的な資源確保につながる事業だ。そこで現在、ニッケルメタルなど生産物の積み出し港となるトアマシナ港の整備に注目が集まっている。

採掘した鉱石は泥水に混ぜて港町トアマシナまでパイプ配送した後、精錬プラントで精錬し、タンカーに載せて日本まで運ぶことになる。しかし、トアマシナ港の埠頭は3つしかなく、開発されたニッケルを運び出すのは難しい。そのため、アンバトビー・プロジェクトでは、一部の埠頭の整備を計画中だ。

一方、トアマシナ港はマダガスカル最大の海の玄関であるが、ニッケルなど鉱物だけでなく、一般貨物の処理能力が限界に達している。また、大型船の接岸が困難で、モーリシャスの港で荷を小型船に積み替えなければならない場合があり、経済開発の制約となっている。そこで港の拡張計画がマダガスカル政府から要請され、現在、日本貿易振興機構(JETRO)が基礎調査を実施。その後、JICAが環境影響評価などの開発調査を行う予定だ。JETROやJICAの調査結果を踏まえ、国際協力銀行(JBIC)も円借款の可能性を探る協議に入ることも検討されている。プロジェクトと日本政府の支援によって港の整備が進むことで、マダガスカルの流通の大幅な改善が期待される。

また、同国では日本企業の王子製紙株式会社が製紙原料の確保を目的とした植林事業を展開。さらに、植林によって二酸化炭素の吸収源を増やし、クリーン開発メカニズム(CDM)の利用を通じて、マダガスカルで削減した温室効果ガス排出量を日本の削減量として獲得することも目指している。人手のいる植林事業は地元住民の雇用も創出するほか、トアマシナ港の整備で大量のチップの運び出しも可能になる。

協力隊のエイズ予防活動

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「青年の家」に集まった青年に、イラストを用いながらエイズ予防の啓発活動を行っている國芳さん。左隣の女性は、共に活動する青年の家のスタッフ

一方、ムラマンガ市では、青年海外協力隊の國芳(くによし)愛子さんがエイズ対策に尽力している。島国マダガスカルでは、HIVの陽性率が20%近い大陸のアフリカ諸国と比べて低い水準にあるものの、鉱山開発で発展し始めたムラマンガには国内外からの労働者が増え、HIV/エイズ拡大の危険性が高まっている。

そうした危険性を人々に理解してもらい、これ以上感染が広がらないよう予防・啓発に当たるのが國芳さんの仕事だ。彼女は週に2〜3度、市内の小・中・高校を巡回し、性に関する正しい知識や感染予防の大切さを子どもたちに伝えている。

このような活動は、青年スポーツ省管轄の「青年の家」で以前から行われてきたこと。國芳さんはこの活動をより効果的な形に改善する役割を担う。

「赴任して半年近くは、スタッフたちにアドバイスする機会も少なく、自分はここに何をしに来たんだろうと悩む日々が続きました。でも、彼らには自主性が欠けていて、上司に言われたことをこなすだけだということが徐々に分かってきたんですね。もっと子どもたちが参加できるような段階的な教育を計画的に行っていきたいと考えています」

エイズ予防・啓発活動の中では、講習の後に血液検査を実施する。だが、スタッフにとって大事なのは上司に報告するための血液の採取数。「学校に通う子だけでなく、セックスワーカーや家庭の事情などで学校に通えない子どもたちも検査が受けられるように変えていきたい」と國芳さん。そのほか、遊ぶ場所が少ないために非行に走ってしまう子どもがいる中で、ダンス教室やお絵描き教室、日本語教室などの楽しみを増やすというアイデアも温めている。

マダガスカルでの官民連携はまだ始まったばかり。多様な連携の形が想定される中、官・民・途上国の3者にメリットのあるダイナミックな連携によるアフリカ開発が今後期待される。

※製鉄所などでの石炭乾留に伴って副生する硫酸アンモニウム。

Republic of South Africa(南アフリカ共和国)
経済成長を支える産業人材の育成を

民主化後の経済成長

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ツワネ工科大学で行われた産業人材育成研修の受講者たち。計10日間の研修プログラムは、生産性、職業訓練、民間企業における人材育成をテーマに構成された

アパルトヘイト(人種差別・隔離政策)の下、長年にわたって人権侵害に苦しんできた南アフリカ共和国(以下、南アフリカ)。1994年の民主化以降、サハラ以南アフリカのリーダーとして経済成長を続け、今や国内総生産(GDP)はサハラ以南アフリカ全体の40%以上を占める。

しかし、依然として国内の失業率は高く、その割合には人種間の格差も顕著に表れている。そこで、南アフリカ政府は2006年に「経済成長加速化戦略(ASGISA)」を策定。「2010年以降経済成長率6%を達成し、14年までに失業率を半減すること」を目標に設定した。また、同戦略の達成には有能な人材の獲得が不可欠であるとして「人的資源育成イニシアティブ(JIPSA)」を打ち出し、公的・民間の両部門において産業発展に資する人材の育成を進めている。

日本は、07年1月に訪日した南アフリカ副大統領率いる代表団からの正式な協力要請を受けて、人材育成分野を中心とした支援を推進中だ。その一環として、JICAの主導で「JIPSAワーキング・グループ」が発足、国内の公的機関、民間企業、研究機関、在京南アフリカ大使館が定期的に会合を開き、人材育成支援が効果的に実施されるよう調整を図っている。

民間企業との連携による産業人材育成

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トヨタ南アフリカ本社で行われた研修で、模型を使って同社の生産システムを学ぶ受講者たち。技術と人材を駆使して生産性を追及する現場に触れ、大いに刺激になったようだ

JIPSAは理工系大学出身者の失業率緩和を重点項目の一つに掲げ、現役大学生に対する就職指導を推進している。しかし、アフリカの高等教育は教育と研究に偏っており、就職支援システムが欠如しているのが実情だ。そこで、JICAは南アフリカ科学技術省とともに教育と研究のプラットフォームとなる「南アフリカ人造り拠点(AICAD−SA)」を設立。その一環として、3月13日〜4月15日にツワネ工科大学の3、4年生と求職中の卒業生を対象に、産業人材育成研修をパイロット事業として実施した。3つの現地機関※に加え、日本社会経済生産性本部とトヨタ南アフリカにも協力を依頼し、民間企業との連携による研修プログラムが実現した。

すでに大学側は、今年度から人材育成研修を恒常的に大学制度に組み入れることで合意している。JICAとしては、人材育成のノウハウを持った日系企業との連携を重視した協力を行うとともに、最終的に大学が自立的に就職支援をできるよう、講師陣に対する研修も実施する予定だ。

※南アフリカ生産性本部、南アフリカ大卒開発協会、黒人科学・工学・技術専門職向上協会。

Kenya(ケニア)
子どもたちにおなかいっぱいの幸せを

インスタントラーメンをアフリカへ

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製麺機を使ってラーメンを作るギダヒ選手(右)と日清食品の社員(写真提供:日清食品株式会社)

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試食会で、初めてラーメンを食べる子どもたち(写真提供:日清食品株式会社)

今年で創業50周年を迎える日清食品株式会社は、創業者安藤百福(ももふく)氏の遺志を受け継ぎ、今後50年間で100の社会貢献事業を展開する「百福士」プロジェクトを始動。国内外で年2件のペースで取り組んでいく予定だ。その第一弾として打ち出されたのが、ケニアでインスタントラーメンを生産・配布する「アフリカプロジェクト」。現在、JICAとの連携を視野に入れながら進行中だ。

同プロジェクトは、日清の企業理念「食足世平(しょくたりてよはたいらか)」にのっとり、同社の製品「チキンラーメン」をケニアに普及し、住民の「自立化支援」を目指すというもの。まずは、現地の小学校の給食に導入することから開始する。チキンラーメンは、原材料である小麦粉と油を現地で調達できること、保存食にもなり得ることから、ケニアの産業活性化と食料事情の改善に有効と考えられ、JICAケニア事務所もこの取り組みを全面的に協力していく方針だ。

2月中旬には、日清食品の社員と同社陸上部でケニア出身のジュリアス・ギダヒ選手が、ケニア事務所員の同行のもとに現地視察を行った。一行は、ギダヒ選手の出身校であるニエリ・イフルル小学校を訪問、日本から簡易な製麺機を持ち込み、同校の子どもたちとチキンラーメンを作り、試食会を開いた。初めてチキンラーメンを口にした子どもたちの反応は良く、学校関係者からもプロジェクトに対する期待が高まっている。今後は、現地政府関係者とともに配布先の小学校の選定などを行っていく。

現地大学と提携して技術開発

プロジェクトを遂行するに当たり重視されているのが、現地の気候や食料事情に対応したインスタントラーメンの開発だ。日清はジョモ・ケニヤッタ農工大学に協力を要請、共同で技術開発に取り組んでいく。同大学を約20年にわたって支援してきたJICAは、日清と大学の連携の橋渡しをするほか、プロジェクトの進捗(しんちょく)に合わせて専門家や青年海外協力隊員を派遣することも検討している。