JICA STAFF 小泉泰雅 産業開発・公共政策部

スポーツの持つ力を国際協力に活かしたい

組織や国境を超えてスポーツでつながる

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インターンで参加したカメルーンの環境NGOのメンバーと

私はJICAの中で、部署を超えた「開発とスポーツ推進連絡会」に所属しており、そこではスポーツを通じた教育や震災復興支援などの取り組みを進めています。本来の所属部署の業務とのバランスを取るのは難しいことですが、大好きなスポーツと国際協力を掛け合わせた取り組みにやりがいを感じています。

小さな頃は、大好きなサッカーを仕事にしたいと考え、プロサッカー選手を目指して毎日練習していました。高校生の頃に途上国の貧困や紛争の問題を知り、次第に国際協力の分野にも関心を持つようになりました。大学では、まずは、自分の目で確かめたいと思い、途上国でのボランティアやインターンに参加しました。そうした活動を通して、将来は途上国で世の中のためになる仕事がしたいと思うようになりました。

インドの視覚障害者施設でインターンをした頃はまだ英語が話せなかったのですが、歌やダンス、クリケットなどのコミュニケーションで心を通わせられたことが強く印象に残りました。また、カメルーンの環境NGOでインターンをしたときには、サッカーを通じて多くの友人を作ることができました。いま、業務の合間を縫ってスポーツの事業に携わっているのは、こうした身体を使ったコミュニケーションの原体験があるからだと思います。

2015年にJICAに入構し、パラグアイ事務所でのOJTを経て青年海外協力隊事務局に配属されました。当時の担当案件の一つに、2019年に日本で開催されるアジアで初めてのラグビーワールドカップや2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたアジア地域におけるラグビーの普及・強化に関する協力事業があります。アジアのラグビーの競技人口は世界の競技人口の1割にすぎず全体の底上げが期待されています。

私は2017年2月に、アジアにおけるラグビーの統括団体である「アジアラグビー」の執行理事会にJICAの代表として参加しました。アジア各国から集まった執行理事の方々へ、現地に長期間滞在し、ラグビーを草の根から育成・普及できる青年海外協力隊の派遣事業や、日本の大学のラグビー部をチームとして派遣するプログラムなどについてプレゼンテーションしました。アジアラグビー全体の戦略や方針と足並みをそろえた取り組みの必要性を真摯に説明したことで信頼を得ることができ、プレゼンテーションの後には各国の理事の方々と、それぞれの国におけるラグビーの普及・育成について議論し、青年海外協力隊の派遣についても具体的な話を進めることができました。

「感動」と「共感」-。スポーツだからできること

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日本ラグビーフットボール協会(JRFU)との連携協力事業「JICA-JRFUスクラムプロジェクト」で発表する小泉さん

2017年6月に産業開発・公共政策部へ異動しました。途上国の起業家育成や産業振興の案件を担当する一方で、スポーツ案件の企画・推進を担う連絡会での活動も行っています。

いま取り組んでいる案件の一つに、ブラインドサッカーを活用したダイバーシティ教育プログラム「スポ育」を、アフリカで実施するプロジェクトがあります。スポ育は視覚障害者の日常を実際に体験してもらうことで、多様な個性への理解や他者とのコミュニケーションへの気づきを促す優れたプログラムです。参加者にアイマスクを着けてもらい、ブラインドサッカーの選手とともにさまざまなワークショップを行ってもらいます。

「あらゆる生活の場面で、健常者と視覚障害者が当たり前のように隣り合う社会を築く」-これはスポ育を作成した日本ブラインドサッカー協会事務局長の松崎英吾さんの言葉ですが、私もJICAでの取り組みを通じて、そのビジョンの実現に貢献したいと強く思っています。

そのほかにも、インドとスリランカの子どもたちに国際交流の機会を提供するラグビーの国際試合の開催や、東日本大震災の復興支援とインクルーシブ教育を掛け合わせた、FIFAワールドカップのパブリックビューイングの実施などの準備をしています。スポーツは誰でも参加することができ、言語や文化、宗教を超えたコミュニケーションを図ることができるもの。だからこそ、健康促進や青少年の健全な育成、民族の融和など、さまざまな課題に広く可能性が開かれています。

スポーツの持つ「感動」や「共感」の力を開発協力にどう活かせるのか、どのようにすればスポーツを通じて社会の課題を解決できるかを、今後も探っていきたいと思います。

プロフィール

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小泉 泰雅さん

小泉 泰雅(こいずみ たいが)
産業開発・公共政策部 民間セクターグループ

1991年生まれ、東京都出身。大学在学中に途上国での障害者支援や環境保全を行うNGOでのインターンを経験する。2015年、JICAに入構。組織内でスポーツを通じた国際協力事業を推進する、「サッカー分科会」と「ラグビー分科会」の運営・活動に携わる。