PROJECT CYCLE JICAが推進するプロジェクトは「プロジェクトサイクル」と呼ばれる4段階を経て実施されます。各段階の業務を担当部署が丁寧に実施し、受け渡していくことで、常にプロジェクトの質の向上を図っています。

PROCESS 03 [ プロジェクト監理 ]プロジェクトに伴走し信頼関係と相互理解を深めながら成功に導く

新槙 理沙 Risa Aramaki

資金協力業務部 実施監理第三課
2016年入構 創造理工学部 社会環境工学科

篠田 孝信 Takanobu Shinoda

企画部 業務監理・調整課
2004年入構 総合政策学部

ABOUT PROJECT CYCLE

事業のスタートから終了まで
実施に関わる全てに関与

プロジェクト監理とはどのような業務でしょうか

篠田:援助戦略に基づいて形成したプロジェクトを実施・監理していくのが「プロジェクト監理」です。その監理次第で事業の進捗や成果が大きく変わりますし、事業を成功させるうえで重要な役割を担っています。プロジェクトが円滑に開始できるかの確認や協議、進捗状況や成果を確認するための現場視察、プロジェクト内容の見直しや追加的支援の協議など、プロジェクト実施に関わる全てのことが含まれています。新槙さんは無償資金協力についての監理が担当ですよね。

新槙:はい、私が所属している資金協力業務部は無償資金協力を取り扱っています。学校や病院、道路・橋梁、給水施設などの、基礎的な社会基盤の整備を主に行うものですが、プロジェクトの実施主体は相手国政府ですので、彼らに主体的に動いてもらうよう留意しながら、日本国民への説明責任という観点から、公平性や適正性が担保されているか監理していきます。特に私は灌漑・水資源関連のプロジェクトを扱っています。

契約内容の精査から現場訪問まで
事業の円滑な進行を支える

実際にはどんな活動を進めていくのでしょうか

篠田:私はカンボジア事務所勤務時代に多くの実施監理を経験しました。プロジェクト開始時には、まず、先方政府の関係者と内容や進め方について具体的な確認を行います。技術協力では、技術移転をする対象者や内容、資金協力では工事のスケジュールや現場の状況の確認などを行い、その後、プロジェクトが当初の計画通りに進んでいるかを監理していきます。技術協力の場合はJICAが派遣する専門家が相手国の関係者に教育や研修を行っていくので、彼らとも連絡を密に取り、また技術移転の現地を訪問して現状を把握することも大切ですね。
資金協力では、施工現場を視察し、進捗を先方政府と一緒に確認して懸念点があれば共有していきます。単に工事そのものの進捗だけでなく、工事に伴って地域やコミュニティ、自然環境などに負担がかかっていないかということにも注目し、地域住民にも喜ばれるものをつくりあげなければなりません。プロジェクト終了後に建設した施設が住民にも受け入れられ、気持ちよく使ってもらえるかどうかは、進捗段階での細かな配慮にかかっていると思います。

新槙:私は、基本的には東京の本部から、無償資金協力の実施にあたり相手国政府とJICAが締結する合意文書の作成や、建設工事の契約内容の確認、進捗の確認などを行っています。JICAの在外事務所を通じて現地の状況を確認したり、ときには本部から出張して、現地を見ながら相手国政府関係者と直接やり取りしたりすることもありますが、基本的には本部内が主体ですから、篠田さんのように直接在外事務所で実施監理に携わったことはありません。プロジェクトの現場である在外事務所では、いろいろなことがあるんじゃないですか。

篠田:そうですね。例えばインフラ案件で工事が遅れた際は、遅れの原因を突き止め、必要ならスケジュールを引き直し、それに伴って発生する様々な課題に対処していくことになります。また、技術協力の案件で相手側のモチベーションが高まらないときは、どうしたら彼らのモチベーションが上がるのかを検討し、改めて事業の必要性や意義を伝えたり、隣国に成功例があればそれを視察する研修を企画するなど、学びたいという気持ちを再度醸成していきます。こうしてプロジェクトを自分なりに育てていくこともこの業務の醍醐味でもあります。

監理を通じて深まる相互理解
想定を超える価値を生むことも

実施中にプロジェクトが育つということもあるのですね

篠田:プロジェクトは淡々と流れていくものではありません。形成段階である程度までは決めているものの、細部まで全て決めているわけではないですし、人が担う以上いろいろと予期せぬことも起こります。相手国の人がプロジェクトを通じて初めてのことに挑戦することも多く、プロジェクトがスタートすると戸惑いや思惑違いなども表面化してきます。そのときに、そもそもプロジェクトが目指していることや、その成果が国の発展につながることが再認識できれば、プロジェクトの意義がより明確になり、理解も深まってきます。すると相手国の担当者からも、もっとこう進めようとか、この点について教えてほしいとか、プロジェクトをより豊かにするようなアイデアも出てきます。何かを押しつけるのではなく、言葉や文化、生活習慣も異なる相手国の関係者と、彼らのオーナーシップを尊重しながら一緒になって進めていくことはJICA事業の魅力だと思いますね。

新槙:なるほど。だから監理次第でプロジェクトの質が高まり、プロジェクト形成時に想定したもの以上の成果につながるんですね。確かに、私の担当したプロジェクトでも、工事中の安全管理なども含め日本の工事技術を学びたいと、相手国の政府高官の方を含めて100名以上が参加して、見学会が開催されたことがありました。確かにこういう広がり方はうれしいですね。

篠田:プロジェクトが開始し、実際に動き出すからこそ、お互いの理解もさらに進み、学びたい、伝えたいと思うことがより具体的になるわけです。もちろん、スケジュールや予算についてはシビアでなければいけないですが、「とにかく当初の計画通りに」というのではなく、実施監理を通じてプロジェクトの意義をより確かなものにして、その価値を高めていく必要があると思います。

事後評価を通して
新たなプロジェクトへとつなげていく

一つのプロジェクトが次につながることが大事ですね

篠田:プロジェクトの終わり方も大切だと思います。スタート当初はお互いの信頼関係をつくることが重要で、それによって「言いやすい」「聞きやすい」という環境が生まれ、進捗上の問題点も把握しやすくなります。中間段階では、いろいろな課題に対処しながら、プロジェクトの意義や目的をもう一度再確認し、当初の目的、あるいはそれ以上のものをつくりあげていくことを目指します。そして最終段階では、次につながる終わり方ができるように心がけています。資金協力においては、完成したインフラなどを運用していくのは相手国の人々ですし、技術協力で得た技術や知見を次に教える立場になるのもまた彼らです。彼らだけで独り立ちしてしっかりやっていけるように、監理の最終段階は特に持続性を意識しています。また、先ほども触れたように、プロジェクトが実施されることで、相手国の人にも「次はこうしたい」という自発的な目標やイメージが出てきます。それを現地の大使館の人に共有したり、JICA本部に伝えたりしながら、次のプロジェクト形成につなげていくこともありますね。

新槙:プロジェクト監理はプロジェクトサイクルにおける実行フェーズですが、プロジェクト実施後の事後評価を通じて、次の援助戦略の策定や具体的なプロジェクト形成にもつながっていきます。プロジェクトで事後評価が行われる際には、事実関係の確認のため、必ずコメントを求められます。事実認識が違えば監理時点の資料を提供したり、具体的な評価内容についても意見を述べたりします。また、プロジェクト形成時に、同種のプロジェクト監理を通じた教訓などを会議の場などで共有して、参考にしてもらうこともあります。私が直接担当しているのは監理のフェーズですが、プロジェクト全体に関わっているという感覚もありますね。

篠田:それは大切なことですね。新槙さんも今後は無償資金協力以外の案件を担当することがあるかもしれないし、在外事務所に出て現場でプロジェクトの実施監理を担うことがあるかもしれません。その時は、今の経験やプロジェクト全体を見る視点が役に立つと思います。

新槙:はい、在外事務所も早く経験してみたいですね。その時のためにも、今の業務を通じてさらに監理を学んでいきたいと思っています。