サブサハラアフリカにおけるCOVID-19対策:種子や肥料の供与を通して食料・栄養安全保障に貢献

2020年10月27日

「ワクチンが開発・普及するまで、食料は、COVID-19による混沌に対する最善のワクチンである。」

先日ノーベル平和賞を受賞した世界食糧計画(WFP)のデイビッド・ビーズリー事務局長が主張し、ノーベル賞委員会レイス・アンデルセン委員長が受賞発表の際に引用した言葉です。これはまさに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)影響下での食料・栄養安全保障の重要性、そして農業の役割を象徴しています。

COVID-19の影響は農業にも及んでいる

COVID-19の感染拡大に伴い、サブサハラアフリカ諸国においても国境封鎖や国内移動規制等の措置が取られました。これらにより生じた流通網の混乱は、種子や肥料といった農業投入財や農作物にも及び、農家は農業投入財の入手が困難な状況に陥っています。農業投入財が手に入らなければ来たる栽培シーズンに作付けができなくなり、農家の生計に大きな打撃を与えるだけでなく、食料供給の不安定化を招き、人々の食料・栄養安全保障が脅かされてしまいます。このようにCOVID-19の影響は長期化、深刻化するおそれが否めないため、国際協力機構(JICA)は、サブサハラアフリカ諸国の政府と共に、COVID-19の影響を受けた農家を対象に、種子や肥料といった農業投入財を供与することを決定しました。

ルワンダにおける協力:園芸農家に野菜種子を供与

ルワンダ共和国では、10月6日に首都キガリにて、同国政府との間で野菜種子の供与に関する覚書きを締結しました。全30群のうち18郡の園芸農家を対象として、ルワンダ国内で生産・消費量の多いトマトやタマネギ等、計9種類の野菜種子を供与します。後述の農家の自助努力分と合わせて約4,200haに及ぶ耕地での野菜生産を促進し、園芸農家の農業活動の継続と生計向上、野菜の安定供給に貢献します。

緊急支援で終わらせないために

JICAはこれまでルワンダにおいて、収益性の高い農業の実現のために「自ら課題に取り組む農家」の育成に協力してきました。目下緊急的な支援は必要ですが、中長期的には農家自身の努力が鍵となります。このような考えから種子を無償で供与するのではなく、JICA供与分と同じ量を自費で購入(つまり必要量の半分は自己負担)する意志のある農家を対象にすることとしました。農家には負担となりますが、自身の力で危機を乗り越える強くたくましい農家の育成を図ります。

併せて、これまでの協力を通じて訓練された農業普及員や栽培技術マニュアルを活用して、種子とともに栽培技術も農家に伝授します。今般の種子供与が、ルワンダにおけるより一層の農業振興の一助となることが期待されます。

農業は食料という「ワクチン」の生産を担う陰の立役者

COVID-19の影響による農業活動の停滞、食料供給の不安定化はサブサハラアフリカ諸国に留まらず、多くの開発途上国で懸念されており、食料の重要性に対する認識はますます強まっています。COVID-19の終息のためには、治療や予防に加えて、人々が栄養のある食事を十分にとることが必要不可欠です。農業はまさに食料という「ワクチン」の生産を担う陰の立役者です。JICAは今後も開発途上国の人々とともに食料の安定供給と生産者の所得向上に取り組み、保健医療だけではなく農業の面からも人間の安全保障の実現に貢献していきます。

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野菜種子供与に関する覚書きの署名式(ルワンダ)(©ルワンダ共和国農業・動物資源省(MINAGRI))

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農業普及員による農家への栽培技術(病害虫対策)伝授(ルワンダ、COVID-19感染拡大前)