レオナルド・ディカプリオ制作・出演ドキュメンタリー映画「地球が壊れる前に」上映会開催!

2018年4月3日

映画とトークイベント、歌で考える、待ったなしの地球環境問題!

 2018年3月17日土曜日に、環境問題のドキュメンタリー映画「地球が壊れる前に」の上映会を開催しました。映画「タイタニック」などで知られるアカデミー賞俳優のレオナルド・ディカプリオは、実は環境問題に熱心に取り組んでいて、国連平和大使にも任命されています。2016年に公開されたこの映画は、気候変動の影響が現れている世界各地の様子や科学的な証拠をリアルな映像で捉えながら、ディカプリオだからこそ実現できたオバマ元大統領や潘基文国連事務総長、ローマ教皇フランシスコなどとの対談も紹介しています。
 石油業界の介入によって世論が分断されて気候変動対策が進まない現状や、わたしたちの生活と密接な関わりがあるパーム油のプランテーション問題、現在もパリ協定に否定的な大統領就任前のトランプ氏の姿、生命の危機に直面するキリバスやインドの様子が画面一杯に映し出され、ディカプリオの「最悪の方向へ舵は切られた」、「これが映画であるなら、台本を書き換えてハッピーエンドにすることは出来る。しかし現実の世界では、そんなことは不可能だ。ぼくたちにできるのは、次にとる行動を選ぶこと。どのように暮らし、何を消費し、社会とどう関わり、だれに投票するか。そして各国の首脳に、気候変動の事実を訴えていかなくてはいけない」というナレーションがとても印象的でした。

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<会場には105名のお客さまが!>

 続いて、テレビ番組で天気予報を伝える気象予報士の菅井貴子さん、高校教師で元青年海外協力隊の塩谷和樹さんを交えて、気候変動や環境問題対策で私たちに何が出来るのかを考えるトークイベントを行いました。モデレーターは元環境省職員で、JICA転職後も途上国の環境問題の現場を見てきた野吾が務めました。
 今回の映画を見て、さらに危機感を強くしたというお二人。まずは菅井さんから、テレビ放送さながらの「2100年の天気予報」をしていただきました。「まるでテレビで見ているみたい!」と会場から思わず感動の拍手が。今回の映画で見たような気候変動の影響が今後も日本で実際に起こっていく可能性が紹介され、北海道で収穫できる農作物の種類や量に変化が見られるという予測を伺いました。2100年には札幌の最高気温は41度になるそうです。気候変動によって温暖化するだけでなく、寒冷化したり台風がたくさん出現したり、天気にムラが出来てこれまで経験したことのないような天気の変化が見られるというお話しに、会場の皆さんも真剣に耳を傾けておられました。
 また、コスタリカで青年海外協力隊として環境教育に関わってきた塩谷さんからは、手塚治のマンガ「火の鳥」のモデルにもなった野鳥ケツァールやモルフォ蝶など多様な生物が生息することや、自然を活かしたエコツーリズムで知られるコスタリカの様子や、伝えることから行動を変えることの重要性を話して頂きました。現在、高校で教員を務める塩谷さんは、「子どもに伝えることで保護者の意識も変わっていく、教育の力は大きい」と実体験に基づくコメントをして下さいました。
 「わたしたちに出来ること」というテーマで、東京出身のモデレーター野吾から「道民のみなさんは冬に室内で暖房をつけながら半袖でアイスを食べることもあるというが、ちょっと贅沢かも?環境省では冬場は20度、夏場は27度に室内温度を設定している。自分を犠牲にする必要はないけれど無理なく実践できることがあると良いかも」という話しをすると、横浜出身の菅井さんからも「確かに冬場の北海道の室内は温かいかも知れない。測ってみると25度くらいあって『夏日だ』と思うことも。実家の設定温度は16度くらいだったので、負担のかからない程度に下げてみることも良いと思う。他にも、映画で紹介されていたように牛肉から鶏肉に食べるものを変えるという事例もあったが、遠いところから運ばれているものを選ぶか地元産のものを選ぶかで環境への負担も変わってくる。値段も安いので、フードマイレージについては心がけていることです」というコメントが。「コスタリカは小さな国なので市民の声が政治に届きやすい」という塩谷さんからは、「子どもが変わると大人が変わるので、タバコを吸うことや地元のものを消費することなど、変わっていくと良いと思う」というメッセージを頂きました。

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<菅井さんによる「2100年の天気予報」、まるでテレビを見ているような臨場感でした!>

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<塩谷さんが話すコスタリカの様子>

 質疑応答では、テレビの中で見ていた天気予報を実際に見ることが出来て感動したという高校生からの、菅井さんの北海道大学での修士論文の内容と地球温暖化コミュニケーターの活動に関する質問に対し、菅井さんからは「気候が多様な北海道では地域ごとに農作物の特徴があることと、健康にいい北海道の気候特性を活かすにはどうしたらいいかをまとめた。環境省の資格であるコミュニケーターを活かして学校で出前講座を行っている」との回答。「去年、アフリカのボツワナ共和国に行ったり自分なりに活動しているつもりだったのに今回の映画を見て知らないことが多すぎること、危機感を抱いていないことを痛感した。行った自分たちですらこんなに感じていないのに、行っていない高校生たちがどうやったら地球の問題を身近に感じることが出来るか」という質問に対しては塩谷さんから、「知らないということを知っているということが立派だし、人生を通して役に立つ知識だと思う。そういう意識を持って生活していれば色んなことを知ることが出来るし、知ったときにまた知りたいという気持ちになれる。どうやって伝えているかは日々自分も思っていることだが、知って欲しいと思う情熱をまず自分自身が持つことはできると思うし、これからもそうしていきたい」というコメントがありました。
 ベトナムやタイで路上生活をする子どもたちに接した経験を持つ大学生から塩谷さんへどのように言語の壁を克服したのかという質問が寄せられ、「現地の文化がどうなっているのかまず知ることが大事。青年海外協力隊は派遣前に語学訓練があるが、現地のことや現地の言葉を好きになることから始まる。ひとつの言語を知っていると別の言語を学ぶ時の手助けになると思う」というアドバイスがありました。
 未来の天気予報のデータの根拠と沖縄や伊豆諸島は4~5度程度の違いだったというご質問に対しては、「環境省のデータを下に算出されている。沖縄や小笠原が低くなっているのは海に囲まれていることがその理由だと思う。東京や名古屋など都市部はヒートアイランドによる影響で気温が上がるという予測になっている」と菅井さんから補足いただきました。

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<100名以上のお客さまの前で、堂々と立派に質問してくれた高校生に拍手!>

 最後に2030年の達成を目指す世界共通の目標、「持続可能な開発目標(SDGs:エス・ディー・ジーズ)」をテーマにしたオリジナルソング「もっと輝く未来のために~Go for SDGs!」を菅井さん、塩谷さん、会場の皆さんと一緒に歌って終了となりました。

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<おなじみSDGsソングを、みんなで歌いました!>

 深刻な問題が世界各地で起こっていますが、悲観的になるばかりでなく小さな一歩でも行動を起こすことが大切で、ディカプリオも言っていたように「次にとる行動を選ぶこと」から始まるのだと思います。
 JICA北海道ではこれからも、様々なイベントを通じて世界の問題を考える機会を作っていきたいと思います。白石区にあるJICA北海道の施設「ほっかいどう地球ひろば」では世界の様子や課題をわかりやすく説明する展示もありますし、青年海外協力隊やシニア海外ボランティア、草の根技術協力や中小企業海外展開事業など市民のみなさんが参加できる活動もあります。道内でも様々な活動が行われているので、なにか活動を始めてみたいと思った方には、JICA北海道とコンタクトのある団体をご紹介することもできます。
 是非、JICA北海道のネットワークをご活用いただきつつ、JICAが行う国際協力をこれからも応援、参加していただけたら嬉しいです。

(文責:JICA北海道 市民参加協力課 野吾奈穂子)