2019年度教師海外研修の実践報告会終了

2020年3月4日

JICAが行う「教師海外研修」は、国際理解教育に取り組む教員の方々が、開発途上国における国際協力の現場や人々の生活を視察するプログラムです。
参加者は現地研修に向けて事前研修(国際協力や国際理解教育について学ぶ)に参加し、帰国後は事後研修(指導案検討等)にて授業づくりを進めていきます。

2019年度の訪問先は中央アジアのキルギス共和国。
ありがたいことに、7名の募集に対して今年は約3倍の応募をいただきました。
選考を通過した北海道各地からの参加者7名は、約半年をかけて国際理解教育の学びを深めてきました。

五感で学んだキルギス共和国の9日間

<キルギス共和国 現地研修日程>
2019/12/22(日)【新千歳空港→成田乗継→モスクワ乗継】
●まる一日かけて日本からキルギスへ移動

2019/12/23(月)【キルギス共和国到着(ビシュケク)】
●午前:早朝5時にキルギス共和国到着
●午後:JICAキルギス事務所 ブリーフィング
    大使館表敬訪問
    青年海外協力隊員との懇親会

2019/12/24(火)【ビシュケク→イシククリ州カラコルへ】
●午前:ビシュケク市内学校視察(青年海外協力隊活動先訪問)

●午後:イシククリ州カラコルへ移動(約6時間)
    青年海外協力隊との意見交換会

2019/12/25(水)【カラコル】
●午前:カラコル市内視察
    カラコル市内学校視察(青年海外協力隊活動先訪問)
●午後:ドゥンガン族の村にてホームビジット
    一村一品イシククリ式アプローチの他州展開プロジェクト(技術協力)視察

2019/12/26(木)【カラシャール村→ビシュケク】
●午前:一村一品イシククリ式アプローチの他州展開プロジェクト
    ジョイントワークショップ(技術協力)視察・体験
    生産者宅ホームビジット
●午後:移動
    元青年海外協力隊・現国連ボランティアとの意見交換会

2019/12/27(金)【ビシュケク】
●午前:生徒との交流授業(テンサイ学校)
    特別支援教育(セジムタール学校)視察
●午後:日本人材開発センター(技術協力)視察

2019/12/28(土)【ビシュケク】
●午前:最終報告会(JICAキルギス事務所)
●午後:バザール視察・教材収集
●夜:JICAボランティア、職員との夕食懇談会

2019/12/29(日)【ビシュケク→モスクワ乗継→成田乗継】
●早朝:ビシュケク空港からモスクワへ
●午後:モスクワ空港にて12時間のトランジット
    (参加者はそれぞれ授業案作り、校種別検討会を実施!)
●夜:モスクワから日本へ

2019/12/30(月)【成田→新千歳空港】
●新千歳空港に到着後解散

キルギス共和国での経験を授業づくりへ還元

キルギス共和国での研修から帰国後は、参加者それぞれが授業案作りに勤しみます。
1月25日(土)は帰国後第一回目の研修日。それぞれが作成した指導案を持ち寄り、「目標は具体的であるか」「目標に対する活動は的確か」「参加型授業であるか(共感的理解を伴う活動家)」等を1日かけて検討します。
2月22日(土)は教師海外研修の実践報告会を実施。
模擬授業を小学校編・中学校編でおこない、その後はポスターセッションにて実践授業の共有を行いました。

模擬授業①小学校5年生対象 総合的な学習の時間(長田真希子教諭)
長田先生の授業は「環境とエネルギー」をテーマとし、キルギスの写真から環境問題(ごみ問題)について考えるものです。
キルギスのごみ問題と地元室蘭市のごみ問題と結びつけ、最後はSDGs達成に向けて自分たちのできることを考えるという流れになっており、子供たちが課題をいかに「ジブンゴト化」できるかがポイントとなっています。

模擬授業②中学校1年生対象 英語科・道徳科(山本つぐみ教諭)
山本先生は、英語科にて導入を行い道徳科にて内容を深めていくという、教科横断的な授業を発表しました。
英語科では、キルギスと日本の写真を使ったマッチングゲームでキルギスを知り、キルギスの人々を英語で紹介する活動を通してキルギスをより身近に感じさせることを目的としています。
そして、道徳科ではキルギスの様々な課題に対してどのようなアプローチができるのか、「SDGs Action Card Game X(金沢工業大学)」をヒントとしたキルギス版カードゲームを使いながら考えていきます。
まとめでは、キルギス研修で出会った青年海外協力隊員の言葉から、「国際協力に必要な視点」は何かを紐解いていきます。

模擬授業後の検討会では、校種を越えて、時に厳しく「より良い授業づくり」のための意見が飛びかっており、授業者はSDGsの視点や参加型手法(アクティブラーニング)を意識しながら、いかに生徒たちが共感し、様々な課題を「ジブンゴト化」できるかの検討を重ねていました。

<実践授業一覧>
重道真也教諭 帯広市立大空小学校3年生 総合的な学習の時間
「Pairing with キルギス~同じの中の違い&違いの中の同じ~」
長田真希子教諭 室蘭市立高砂小学校5年生 総合的な学習の時間
「環境とエネルギー」
染谷惇志教諭 札幌市立前田中央小学校6年生 社会科
「世界の未来と日本の役割」
増永真衣教諭 伊達市立光陵中学校3年生 数学科・道徳科
「意味のある国際協力とは」
山本つぐみ教諭 札幌市立中央中学校1年生 英語科・道徳科
英語科「Sunshine English course1 My Project②人を紹介しよう」
道徳科「SDGs Action Card GameXを通じて考えるキルギスの課題解決へのアプローチ法」
渡邉琢益教諭 北海道倶知安農業高等学校 1年生農業
「人間生活と農業と環境」
立田和久教諭 市立札幌清田高等学校 グローバルコース1年生国際的人権
「SDGsとジェンダー問題」

そして国際理解教育の担い手へ

キルギス研修を終えて約2ヵ月。
それぞれが悩みながら、自分たちの学校で子供たちに何を伝えられるかを検討してきました。
今回作った授業は、今年度だけではなく来年度再来年度と実践を重ね、より良い国際理解教育の授業として高めていただけることを祈っています。
また、今回の教師海外研修の実践報告集は2020年9月に発行予定です。
来年度の国際理解教育指導者研修等で配布しますが、欲しい方はJICA北海道までご連絡いただければと思います。

そして、2020年度の教師海外研修参加者の募集は6月頃を予定しています。
国際理解教育・多文化共生を進めていきたい先生方!
是非ご応募お待ちしております。