地域発展のため、そこに暮らす住民の方々と視点を共有し、協働する醍醐味−行政からの現職参加者として−

2016年3月25日

地域のために試行錯誤

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みなさまこんにちは。私は日本の地方公共団体から現職参加という形で協力隊に参加しております。セネガルでも所属は任地の市役所であり,任期中は地域発展に繋がる活動ができれば,と様々なこと(具体的には,感染症対策啓発,ゴミ処理問題,稲作普及,果実植栽普及と学校巡回活動(日本紹介,衛生啓発,環境教育)等)に取り組んできました。

活動の中には最終的に形となったもの,ならなかったものがあり,今振り返ってみるとその差は当該活動のカウンターパートに当たるセネガル人が協力隊員の活動の意義や限界(資金援助や物的援助は基本的にできない)を理解してくれるかどうかというところにあると思います。活動に協力(参加)してくれる人々に対して,最初に自身(の所属する組織)のできることできないこと,目標としていること(状態)を丁寧に説明し,ビジョンの共有やそれぞれの役割分担の確認を行い,信頼を得てから活動を開始する。これは日本の行政現場で住民の方々と何かを行う時にも基本となるプロセスです。

活動の協力者は幅広く

任期中に行った活動の中で一番力を入れたのは稲作普及活動であり,特に栽培期直前に行った農家向けの研修とそれに向けた準備に力を入れました。

私自身これまで農業分野の経験が全く無かったため,農家の方々に指導する前に自身の知識を付けなければいけないと感じ,まずはJICAの実施するウガンダでの稲作研修に参加しました。その後,研修で学んだ内容を日本語のマニュアルとしてまとめましたが,その内容は主にウガンダでの知見をベースとしていたことから,稲作において注意すべき病気や害虫,使用農具,その他諸課題がセネガルのものとは乖離している部分が多くありました。そこで,他の協力隊員(稲作栽培経験のある先輩や病害虫専門隊員)にセネガル稲作独自の課題や特徴について尋ねると共に,マニュアルの要旨をフランス語に翻訳し,セネガル農業分野の専門家(農業普及員(以下,普及員)や地元コンサルタント)や実際に稲を栽培予定であった農家に内容の過不足を指摘してもらいました。その後,指摘を基に内容を修正したマニュアルを再作成し,それをベースに研修用紙芝居を作成しました。

日本での経験を活かして−対象となる住民の方々のニーズ等をベースに企画する−

マニュアル等の作成後は,研修当日に向けて普及員と打ち合わせを行いました。農民の稲作に対する興味関心や現状での知識には幅があり,全ての要請に応えることはできない旨を普及員に相談すると「既存の稲作農家であっても,稲作に対する知識がそれほど豊富とは言えないこと」,「初心者向けの基礎講習に既存の稲作農家が参加することで,これまでの実践と研修の内容が一致していれば,彼らは自信を持って作業に臨めるし,違っていれば修正する良い機会になること」から,研修では主に初心者をターゲットに稲作の基礎(特徴,栽培暦,除草等)について知識の定着を図るとこを目標にしました。また,開催時期については栽培期直前の6月下旬が良いのではないかという話になり,6月下旬に普及員と共に対象村を巡回しました。

このようにして迎えた研修当日の進行は,私が主にウォロフ語(現地語)とフランス語で紙芝居を読み上げ(主に基礎的事項),普及員がその補足(主に実務面)をウォロフ語で行いました。セネガルでは日本のような講義形式よりも質疑応答形式で参加者が発言できる場を整える方が参加率や反応が良くなるので,その点を意識しながら,普及員と共にクイズ形式を取り入れたり,既存農家に現状の栽培方法を上手く聞き出したり,という工夫をしました。その後,研修の最後に内容の確認クイズを行い,知識の定着を確認した上で,マニュアルと種子の配布を行いました。

異国で行う外国人同士の交流

私の配属地であるファティク州フンジュン県はアメリカ人ボランティアのピースコーも数多く活動(2015年時点で協力隊員2名に対してピースコーは約20名)しており,彼らと接する機会が多かったことから,時折活動を共同で行っていました。具体的には彼らから稲作希望農家を紹介してもらい,希望者に対する講習会の補助を行ってもらったり,こちらが彼らの行っている果実植栽活動のマニュアル作成や育成指導の補助を行ったりしていました。彼らの多くは国道から離れた村に暮らし,ホームステイに近い生活を送っていることから,我々協力隊より現地の人々との距離が近く,村人の社会文化や生活スタイルを熟知しており,現地語の運用能力も概して高いように感じます。一方で,電気も水道も無い環境で暮らしており,情報収集や資料作成等が困難であるという課題を抱えていたことから,お互いのメリット・デメリットを補う形で活動をできたことは大変喜ばしいことでした。これ自体は現地の方々との活動ではありませんが,他者との交流を通じて共通の目標を持ち,相互に助け合いながら何かを成し遂げていくというプロセスが,すべての活動の基礎であると改めて感じさせてくれる活動でした。

日本とセネガル。行政現場の課題と目標は共通

現在の日本の行政現場が抱える課題と途上国行政が抱える課題は,財源及び人員不足という観点で似通っています。地域において限られた人的物的資源を生かすには,行政現場における努力だけでは不十分であり,地域に暮らす人々の協力及び理解が不可欠です。管轄地域内を自身の足で回り,そこに暮らす住民の方々と対話を重ねる中で現状と課題を徐々に発見すると共に町や地域の未来ビジョンを共有し,自身と住民の方々の間でできる活動を相互の合意のもと探していく。この地道かつ重要なプロセスを忘れることなく,今後も日本の行政現場で勤めていこうと考えています。

(執筆:26年度1次隊 コミュニティ開発 井上隊員)

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稲作についての研修会を実施

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収穫前の稲畑と農作業をする農家の方

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写真やイラストを使った衛生啓発活動

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アメリカのボランティア(ピースコー)による植栽活動