心の中に宝石を(後編)

【写真】佐尾山 省二(徳島)昭和55年度4次隊/ケニア共和国/理数科教師
佐尾山 省二(徳島)

社会の一員として

 青年海外協力隊経験の後、フィリピンで3.5年間、ボランティア調整員として従事しました。調整員時代に結婚し、生まれたばかりの長男と3人で帰国しました。
 ケニアとフィリピンの経験が自分を大きく成長させ、大きな人間となり、貴重な人材である以上、簡単に就職できると思っていました。何社も受けましたが、全て不採用でありました。

 今思えば、おごりが不採用の原因であったと思います。企業は、特に中途採用の場合、即戦力を求めます。ケニアとフィリピンでの経験が即戦力となるのかと言えば、「NO」と言わざるを得ません。企業が求めるものを有することにより、初めて採用されます。協力隊での貴重な経験は、当時では異端児として見られることが多く、人材としてはどちらかと言えばマイナスとみられる面の方が多かったように思います。

 その後、就職できたのは、運が良かった以外何ものでもありません。勤めていた会社は、一部上場企業でしたが海外進出に遅れていました。遅れを取り戻すべく、インドネシアの片田舎に海外子会社を新設する計画でした。社長・工場長以外にインドネシアの片田舎に積極的に行く者が居なかったため、採用されました。
 海外子会社では、3部門の内、2部門を担当する製造部長として勤務しました。国内で半年程の工場研修を受けましたが、初めての「モノづくり」であり「キモ(核)」を掴まないまま赴任しました。
失敗の連続でありました。生産性は上がらず、不良の山を作り続けました。現象に対する対策のみを行っていたため、対策が終了すれば別のところに新たな問題が発生し、その対策を行う。この繰り返してでした。「キモ」を掴まず、表面上の対策に終始したのが悔やまれます。
協力隊時代に培った「頑張り」、「打たれ強さ」、「しぶとさ」により徐々に改善したものの合格点ギリギリでした。3年間の海外勤務ののち「モノづくりのキモ」を掴むため国内工場の製造スタッフとして帰国しました。

 国内工場の「モノづくり」は、長年の実績により概して良いものの、しがらみにとらわれず0から立ち上げた海外子会社の良い部分もあります。5年間の国内工場の勤務により、「モノづくりのキモ」を肌で理解し、更には海外子会社の良い部分を導入することにより、担当部門の製造データが良化し注目されるようになりました。
 協力隊経験者であることは、それだけで企業の中で優位に立つことは出来ませんが、変わった経験故に企業の中で認知されやすく、頑張った成果が認められ易いというメリットがあります。これが奏功し海外子会社の社長として抜擢されました。

 2度目となる海外子会社勤務では、日本で得た技術・知識を展開し、結果を出しました。これにより、インドネシア・マレーシアにある海外子会社を次々任されることになり、6社の社長を歴任しました。帰国後は、製造スタッフとして従事した工場を含む2つの国内工場の工場長として勤務し、定年を迎えました。

センチメンタルジャーニー

30年前の教室

今(2014年)の教室

30年前の校庭。牧草地のようで石がゴロゴロしている。

今(2014年)の校庭も同じ状態

30年前に私が住んでいた家

今(2014年)の状態

 2014年8月に長期休暇を取得することができ、30年ぶりに任地を訪問しました。協力隊時代の出来事が思い出され、甘酸っぱい旅であると共に当時のことを強烈に覚えている事項の多さに隊員としての時間密度の濃さを再認識する旅でもありました。
 赴任先の学校が有るのか不安でしたが、名前がTaita Towett Boys High Schoolに代わっていたものの、昔の面影を残す学校がありました。夏休み中のため、学校は閑散としていました。たまたま学校に残っていた教頭と数人のスタッフに学校を案内して頂きました。
 30年前と違い電気と水道があり、驚くことに携帯電話もありました。しかしながら、教室・校庭・住んでいた家及び周りの風景は昔のままで、30年前にタイムスリップした錯覚を覚えました。
 建屋も何棟か増設されていましたが、学校として重要な教室・校庭は、昔のまま老朽化していた状態であり、寂しさを覚えました。

思い

 人生で最も輝いていた貴重な3年間を協力隊員として、任地のために尽くしました。そしてその何倍もの贈り物を任地から受け取りました。若者が苦しみながら、悩みながら世界に飛翔し、大きくなって帰ってきます。そして、参加前には成し得なかった大きなものを社会に還元する。私にとって協力隊は、このような活動であると思っています。
 退職し自由人となりました。これからは、OBとして青年海外協力協会の活動に積極的に参画し、新たな若者の心の中に宝石を生み出す一助になればと思います。