南太平洋の島国サモアに行って変わった事

【写真】氏原 英敏(香川県在住)平成26年度1次隊/サモア/理科教育
氏原 英敏(香川県在住)

南国のイメージそのままの国“サモア”

【画像】 サモアという国を紹介するときはいつも、「どこにある国?」から始まります。サモアは南太平洋の国であり、まさにヤシの木の生える南の島のイメージ通りの国です。海はラグーン(砂州やサンゴ礁により外海から隔てられた水深の浅い水域)をつくり、淡い青と白い砂浜が見られるビーチがいくつもあります。気候は熱帯性気候で雨季と乾季にわかれ、乾季は雨も少なく過ごしやすい季節が続きます。
 サモアという国はオセアニアの文化圏の中ではポリネシアと呼ばれており、ハワイやトンガ、ニュージーランドのマオリ族、タヒチなどがこのポリネシアに含まれます。サモアの人々はタロイモと呼ばれるサトイモと同じ仲間の芋を主食とし、ココナッツクリームをつけて食べます。豚や魚を好んで食べて、日本と同じようにマグロなどの魚を生で食べる食文化も持ちます。また、人々の多くはキリスト教を信仰しており、安息日である日曜日の午前は家族で礼拝に行き、午後は国全体が静まり返ったようにゆっくりとした時間を過ごしています。家族のつながりが大変強く、近所の人々も家族と捉えて何でも分け与える「シェア」の文化があるため、飢えて苦しむような人々はほとんど見られません。そんな話を聞くと、「わざわざそんな幸せそうな国に協力隊として派遣される必要があるの?」と思ってしまうような南国のサモアですが、どのような国も同じように問題を抱えています。私は日本で教師をしていた経験をもとにサモアで活動することになりました。

協力隊としての活動

 私は協力隊としてサモアの中高等学校(14歳〜18歳の生徒が通う)において理科・数学を教える教師として活動してきました。私が数学と理科の教師として取り組んだ活動は基礎計算力の向上と教員研修の実施です。サモアにおいては日本の小学校で習う基礎計算も十分に身につかないまま中高等学校へと進学しています。例えば、私の学校では16歳の生徒の4分の1は56÷7のような簡単な割り算も暗算ではできませんでした。また同じような簡単な割り算を20問解いた場合、日本の高校1年生では1分もかからないものも、サモアでは半数以上の生徒が10分の時間が必要な状況でした。そこで、他の理数科隊員と協力し、学校で使える補助教材を作成し、教員研修を実施しながら補助教材の普及に努めました。

サモアの課題

 サモアで2年間活動する中で、日本との教育環境の違いやサモアが抱える教育現場の課題が分かってきました。例えば、サモアの小学校には教科書がありません。サモア政府が用意した教えるべき単元は示されていますが、具体的な内容は全て教師に一任されています。全ては教師の経験に沿って教育がおこなわれており、生徒は教科書などをもとに自分で学ぶということもできません。
 また、サモアには教育現場以外での課題も多くあります。その中でもサモアの生活で見られる一番大きな課題の一つは糖尿病です。成人男女の多くは肥満状態で、実施される外科手術の多くは糖尿病に起因します。毎年新しい透析患者が増えており、病院が受け入れられる許容人数を超えつつあります。日本であれば、学校教育においては給食指導や授業を通じて栄養指導や食育などが行われますが、現在サモアではそうした取り組みはほとんどと言っていいほどありません。私が協力隊を終えるときに感じたことは、2年間という短い期間でサモアのこうした課題に取り組むにはあまりに短く、ただ、サモアの現場の状況が分かっただけで帰国するという歯がゆさでした。

新しい出会い

 そんな中、私はサモアの協力隊OVであり日本で歯科医師をしている方と帰国前にサモアで出会います。彼は普段は日本で歯科医師として活動し、年に数回サモアの小学校で個人的にむし歯予防活動をしていました。実は人口20万人のサモアには歯科医師はたった10名程しかいません。むし歯の治療の多くは抜歯であり、日本のような治療がなされないのが現状なのです。そのような話を聞いて、私も同じように日本で生活をしながらも、サモアで見つけた課題になんとか取り組んで行くことはできないか考えるようになりました。

帰国後の活動

 現在、私は愛知県の教職員を退職し、香川大学の学生として学んでいます。将来はサモアで糖尿病に対する取り組みが出来るように医師免許の取得と糖尿病について専門的に学ぶことを目標としています。さらには隊員時代に知り合った歯科医師の方と「ルマナイサモア」という団体を立ち上げ、サモアの医療支援・教育支援、日本とサモアとの文化交流の活動をおこなうことを目指しています。2018年12月には香川大学博物館において、サモアを紹介するための特別展を開催し、多くの人にサモアについて興味を持っていただくこともできました。今後も同じように日本においてもサモアについて伝える機会を作っていければと考えています。
 私は協力隊の活動を通じて、多くの出会いと新しい目標を得ることができました。サモアでホームステイした家族や、協力隊OVとの出会いから、さらに新しい出会いができて、今の活動へと繋がっています。「ルマナイ」とはサモア語で「未来」を意味する言葉です。今後とも日本とサモア両方の国の人々にとってより良い未来になるような活動をおこなっていければと考えています。