輝く未来に向かって生きる子どもたちのために(後編)

【写真】増矢 幸子(徳島県)平成24年度3次隊/グアテマラ共和国/助産師
増矢 幸子(徳島県)

忘れられない母親の笑顔

母親たちの表彰式

 前述のように自宅で出産することが当然であった住民の多くは、妊娠や出産に関する知識が乏しかった。そこで、妊婦とその家族を対象とした妊娠・出産についての教室を開催することにした。私の任期終了前、すべてテーマを受講した女性たちに表彰状を手渡す会を設けた。そこで、5人の母親である女性から「上の子どもたちを出産した時は知らなかった大切なことを知ることができた。これから私の娘や友人にここで学んだことを伝えていくわ」と力強い言葉をもらった。これまで学校に通ったことがなかった彼女にとって、おそらく人生で初めての表彰状だったと思う。わが子のために学んだという経験を誇らしげに語ってくれた彼女の笑顔を一生忘れることはない。妊娠や出産に関する正しい知識が住民たちに広がっていくよう願ってやまない。

今に感謝すること

保健センターの近所に住む家族

 保健センターの近所に住む子どもたちの母親に「将来の夢」について聞いたことがある。すると、彼女は不思議そうな顔をしてこう答えた。「私は裕福ではないけれど、仕事があって、夫がいて、子どもたちがいるから今がとても幸せよ。神様に感謝しているの」と。まったく予想をしていたなかった答えにとても驚いた。日本での生活は日々の忙しさに追われてしまうけれど、少し立ち止まるたびに「今に感謝すること」という言葉が私の心の支えになっている。

帰国後のチャレンジ

体験談の講義

 協力隊として求められていたことの一つとして、「日本への社会還元」がある。帰国後、母校である地元の大学職員として勤めることになった。大学勤務は週1回で、週4日は地域の病院で助産師として勤務し、大学と地域の病院をつないで人材を育成するという役割を担った。初めての仕事に困難も多かったが、協力隊を経験して学んだ柔軟性、周囲を巻き込む力、チャレンジ精神が大いに役立った。大学と連携し、病院では子どもの虐待防止の委員会の立ち上げ、地域では母子の災害対策などに取り組むことができた。また、協力隊経験者として、体験談の講義や国際看護の授業を担当させていただく機会を得た。協力隊の話をすることきはいつも決まって「グアテマラの民族衣装」を着て出かけていった。勇気を持ってチャレンジすれば目の前の景色は変わると教えてくれたグアテマラでの協力隊経験は今も私の人生を鮮やかに彩ってくれている。

これからの夢

保健センターで生まれた子とその母と

 大学での4年間の仕事を終え、次のステップとして再び病院で助産師として働くことを選んだ。日本でもグアテマラでも変わらなかったのは「母子にかかわることができる喜び」だった。スペイン語で「出産する」ことを「dar a luz」という。「dar」は「与える」、「luz」は「光」を意味する。つまり、子どもは「光」なのである。輝く未来に向かって生きる子どもたちのために、グアテマラで奮闘している保健センターの同僚や伝統的産婆たちを思いながら、これからも助産師として成長していきたい。