目に見えない日本の良さを伝えたい!

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カンボジア出身 財団法人日本国際協力センター(JICE) 国際研修部 研修監理員
天川芳恵

JICA四国では、年間約200人の技術研修員を受け入れています。その際に活躍するのが研修監理員です。研修監理員は研修員に同行し、通訳をはじめ身の回りのことなど、研修員が安心して研修を受けられる環境を整える大事な役割を担っています。今回は草の根技術協力事業(地域提案型)香川らしい国際協力プロジェクト「カンボジア環境技術専門家受入れプログラム」「カンボジア医療人材育成プログラム」でお世話になっている研修監理員の天川芳恵さんにインタビューしました。

—仕事を始めたきっかけは?

大和定住促進センターで仕事をしていた当時、カンボジア政府関係者の公式訪問がありました。その通訳を探しているとの連絡がセンターにあり、当時のセンター長が私を推薦して下さいました。その報道を見たJICEから声を掛けて頂き、92年10月にカンボジア語とベトナム語で研修監理員の登録をしました。外務省無償資金協力の協議でのフンセン首相の通訳をした時、当時は日本在住のカンボジア人通訳も少なく、初対面のフンセン首相に「あなたはカンボジア語が上手いですね」と言われ、「カンボジア人ですから」と言ったら驚かれました(笑)。まだカンボジアは内戦中で93年3月にようやく総選挙が行われ、政府もまだ整っていない状況だったので、日本国内の研修よりも現地調査団派遣の仕事の方が多かったです。

—通訳の仕事を辞めようと思ったことはありますか?

技術研修の場合は専門性の高さを要求されますし、事前の勉強も最初は大変でした。プレッシャーの大きさから辞めようと思い、一時工場で別の仕事をしたこともあります。しかし自分の国の役に立つし、自分の勉強にもなる通訳が良いと思い、続けています。

—どんな時にやりがいを感じますか。

やはりカンボジアの研修員が「来日して良かった」、また日本側の受入れ先が「受け入れて良かった」、と言ってくれる時です。研修員からカンボジアの最新の状況を聞けることも自分にはプラスになります。

—研修員に期待することは何ですか。

研修員はそれぞれの職場での立場もあり、日本で学んだことを生かそうとしても上司の手前、できないこともあったり、また帰国しても機材がなかったりします。ですからそれ以前の、「日本人の仕事に対する責任感、精神、姿勢、考え方」をしっかり持って帰ってもらえたら嬉しいです。「時間を守る」「言われたことをきちんとする」なども基本です。
研修員の多くは職場の部署で中心的存在になっていたり、将来そうなる人ですし、その人自身がきちんとできなければ指導などできません。以前畜産関係で研修を受けに日本に来た方が、30代前半なのに農業局長になって再来日し、再会できた機会がありました。きちんとした彼の仕事ぶりがわかって、嬉しく思いました。

—日本人はそんなにきちんとしていますか?

自分が来日した当初は日本人について理解できないこともありました。ゴミの出し方にしても、他のものを1つも混ぜずに分けるところが面倒だと思いました。定住促進センターで11月の寒くなった日に、「灯油が欲しい」との声が上がり、仕事をしていた私がセンターに言ったところ、「規定の期日までは支給できない」と言われました。また、センターでは地域住民から中古の日用品(衣類や食器など)の提供を受け付けていましたが、新品を提供しようとした方にセンター職員が「平等に分けられないから」と断ってしまったんです。
そんな柔軟性のなさに嫌になることもありましたが、日本での生活が長くなるにつれ、集団生活を円滑に進めるには規則も必要だし、きちんとすることの大切さも理解できるようになりました。

—天川さんが日本に来て苦労しながら気付かれた日本人の良さを伝えようとしていらっしゃるんですね。

日本人が話す時にただ通訳するだけでなく、良いと思う点、研修員が気付いていないだろうと思う点についても積極的に研修員に伝えるようにしています。今回の医療研修員にしても、医師や看護師が患者さんに何かをする時に、細かいことでも声掛けをすることや日々の何気ない会話を大切にしていることなど、研修員に伝えました。
例えば「針を抜きますよ」とか「チクッとしますよ」と声を掛けるだけで患者さんは安心して治療を受けることができます。その時起こっていること、貼ってあるポスターなど、大事なことはその場で伝え、見て感じてもらうようにしています。カンボジアでは看護師が看護以外の仕事をすることはありませんが、日本ではICUで動けない患者さんに看護師がシャンプーをしてあげていました。その時それを研修員に伝えると、彼は感動してその姿をカメラにおさめました。後からでは印象が薄い、または無い場合もありますが、その場で見、感じたことは印象に残りますので。カンボジアでは医者が看護師を褒めることもなければ「お疲れ様」と声を掛けることもありませんし、そもそも「お疲れ様」という概念の言葉もありません。時には褒めたりねぎらうことも大切だとカンボジア人医師に説明しました。

—日本のことも理解し、カンボジア人の立場も気持ちもよく分かる天川さんならではの通訳ですね。ところで、通訳に大切なことは何だと思われますか。

新聞を読むことです。広く知識を得られるから。それからNHKをよく見ます。語学番組も。日本語—カンボジア語だけではダメで、今は英語も必ず必要ですし、自分が勉強したフランス語も忘れないように一生懸命聞くようにしています。歴史番組も興味を持って見ます。研修員が来ると技術研修だけでなく、地域の名所旧跡へ観光に行くこともよくありますので、日本史がわかることは説明するのに大変役に立ちます。

—これからもこの仕事を続けていきたいですか。

カンボジア人のためにもなるし、自分のためにもなりますので、無理のない範囲で続けていきたいと思っています。



ありがとうございました。
天川さんは日本人とご結婚され、現在は高松市内にお住まいです。四国を拠点にこれからもますますのご活躍を期待しています。              
(インタビュアー:JICA四国 今城、深田)

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医師の伝えたいことを確実に伝えます(香川県立中央病院)

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病院内での評価会の様子(香川県立中央病院)

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消防署の視察(高松市消防局)

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研修員が救急車の設備の説明を受けています(高松市消防局)

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通訳から研修員も熱心にメモを取ります(香川大学医学部)

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環境技術研修員の知事公室長表敬(香川県庁)